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2021年12月20日月曜日

Fender '64 Princeton Guitar Amplifier Repair プリンストン・アンプの修理

 '64 Princeton amp repair

2017年の終わりにギャンプスでオーバーホールしたアンプです。
オーバーホールから丸4年経過し、2021年12月に調子が悪くなった
ということで修理のご依頼がありました。
photo of front view of '64 Princeton guitar amplifier


注) 過去にギャンプスでオーバールしたアンプの修理のみ受付ています。
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「劣化して潜在的に壊れやすくなった部品を確実に交換する、高品質の
 オーバーホール」の効果により、以後の故障では、文字通り故障部位
 に特化した「修理」だけで済み、手間と時間が最小になります。

1.修理の内容

修理の内容は以下のPDFをご覧ください

PDFの修理内容をJPEGにしたものを以下に貼り付けます。

<受け入れ検査の結果>
電圧計測すると整流したあとの直流電圧に交流が残っているのを観測
フィルターキャップ(別名インプットコンデンサー)の容量抜けと推測
また追加の不具合として整流管の接触不良で時々パワーオンしないことを発見

PDF's Page1 Receiving inspection result in Japanese language

時々パワーオンしない原因は古くなった真空管ソケットのピン不良による整流管の接触不良であると判明。
-->ソケットを交換
Octal tube socket was causing intermittent contact failure

配線を外し、フィルターキャップ(ボックス型アルミ電解コンデンサー)の
容量を計測すると本来 40μF のところ 0.3μF しかない。=容量抜け=
wire soldering has been removed to measure the capacitance

フィルターキャップに使用されているアルミ電解コンデンサーを交換
a box cap. and an axial cap. were installed

残りの全ての抵抗とコンデンサーを計測し、
劣化の進行している 抵抗 2本を発見。予防のためこれらを交換
one PL resister and one cathode resister were replaced for preventive maintenance

再度電圧チェックし、整流回路が健全に働き、正しく直流電を出力していることを確認した後にサウンドテストを行い、故障を除去できたことを確認。
No ripple voltage was observed due to healthy filtering

2.修理前後のサウンドテスト動画

受け入れ検査時と修理後の確認テストでのサウンドテスト動画が以下です。

#ギターアンプ修理 #プリンストン・アンプ #アルミ電解コンデンサー不良 #整流 #脈流

2021年6月20日日曜日

Fender Super Champ 販売

Fender Super Champ 

70年代半ば、メサブギーの歪むアンプを意識し、ポール・リベラ が設計したアンプ。

キャビネットの大きさは Champ と同じ。

スピーカーは Champ の8インチよりも大きい10インチ径。

パワーアンプはChamp の 6V6GT 一本のシングル・エンデドではなく、 6V6GT 二本のプッシュプル。

回路構成は Princeton Reverb によく似ているもののコンデンサーの値が異なり 、Master Volume が追加され、スイッチ切り替えする Leadモードを搭載している 。

サウンドは Princeton Reverb よりも元気でやんちゃな感じ。

クリーンの状態で、Master を下げ Volume を上げるとクランチする。

リード・モードはよく歪むものの、耳に痛くない上品さもある。

Super Champ front view


Super Champ rear view

内部回路と直接繋がっていたスピーカーケーブルをフォンジャックタイプに変更。ノイズ低減のためにライン出力端子を削除
音圧の向上と使い勝手の向上を両立。( 下の写真 )
Super Champ rear left view

ノイズ低減のためフットスイッチ端子2個を削除。
接触不良防止のためにリバーブケーブルを新規交換。(下の写真)
Super Champ rear right view

金属プレートやネジは錆びもなく美しい。
トーレックスにも傷や汚れはない。
Super Champ top right view

Super Champ top left

グリルクロスは汚れやほつれがなく、クリーニングすると美しく光沢。
Super Champ front grill

コントロールパネルは傷やベントは無い。
Super Champ control panel, left side

Super Champ control panel center

Super Champ control panel right side

サイドのトーレックスも美しい。
Super Champ left side view

Super Champ right view

この固体はトーレックスの破れもなく、グリルクロスもきれい。
金具の錆びなくきれい。前オウナーさまの保管状況が良かった。

実施したオーバーホールと MOD の内容

6C10 真空管を 12AX7真空管 2本 に置き換え

Super Champ で使われている真空管の種類は以下の4種類
 12AX7、12AT7、6C10、6V6GT 
Picture of 12AX7 tube and 6C10 tube
6C10真空管は、ガラス管の中に3個の増幅素子が入っている、めずらしい真空管。ピンは12本あり、形状も丸々とした太いガラス管が印象的なプリ管である。
(通常プリ管というと増幅素子が2個入った9ピンが主流である)
6C10 は、ヴィンテージ真空管を扱うお店でさえも売り切れている。
SOVTEK や Electro Harmonics 等のメーカーでも生産はされていない。
GAMPS にも在庫は中古管がたった1本残っているだけである。

真空管は昔の電球と同じくフィラメントが内部にあり、電気を熱に変えて光っている。使えば使うほど劣化する。将来必ず交換する日がやってくる。在庫も無く、生産もされていない 6C10 のままでアンプを使い続けるのには無理がある。

ここで朗報がひとつ。プリ管の12AX7は現行メーカーも生産を続けている。
しかも、 増幅素子の増幅率が6C10と同じ100である。
違いはガラス管の中に増幅素子が2個しか入っていないことである。
comparison chart of 12AX7 and 6C10

ヒーター消費電流は 6C10 が600mA、
12AX7 はその半分の300mAである。
つまり、6C10 一本の代わりに 12AX7 二本を使っても、全く問題無し。
消費電流は 600mA で変わらず。増幅素子の数は一個増えて4個になる。
余った一個の増幅素子はノイズの出ないようにキルしておけばよい。 

6C10 用の12ピンソケットを取り除き、
リバーブ・トランスの向きを変更し、
空いたスペースに12AX7 用の9ピンソケットを2個取り付け、
ソケットと回路の配線をやり直せば良い。
Super Champ digging a hole for 12AX7 to replace with 6C10

内部回路のオーバーホールとレストア

Super Champ  original circuit parts and wiring
作業前のオリジナルの回路 コンデンサーや抵抗は劣化が進み変色している

Super champ removed parts
オーバーホールとレストアのために取り外した部品
新しい部品に交換することにより
 ① 素晴らしいサウンドを取り戻すことができる
 ② 配線方法と部品配置を調整することでノイズを極限まで減らせる
 ③ これから先、軽いメンテだけで故障知らずでの信頼性を得られる

Super Champ after overhauling and restoring
オーバーホールとレストア実施後の回路

スピーカーケーブル

GAMPS ( ギャンプス ) では、もはやこれが定番のスピーカーケーブル。
WEそのもの、もしくは WE復刻版のスピーカーケーブル線材を2本使い、適正な撚りを施し、感電防止のためのプラスチック外被のジャックと3M製ファストン端子でスピーカーケーブルを製作した。
GAMPS original speaker cable

真空管の選定

真空管は全て新品にし、信頼性を高めておく。
GAMPS では、全ての真空管を同じメーカーの同じ型番に統一することはほとんど無く、適材適所に色々なメーカーの色々なタイプを使っている。
但しパワー管だけは必ずマッチドペアでないといけない。
all new tube installed

パワーチューブは Electro Harmonics の 6V6GTのマッチドペア 

プリチューブは写真右から
 V1(トーン・シェイピング) : Tungsol Reissue 製 12AX7
 V2( リバーブ・ドライバ)   : JJ 製 ECC81 ( 12AT7)
 V3( リバーブ・リカバリ)   : JJ 製 ECC83S ( 12AX7 低ノイズ管)
 V4( フェーズ・インバータ): JJ 製 ECC83MG ( 12AX7 Mid Gain管)

スピーカーの選定

搭載する10インチスピーカーを2つの候補から選ぶことにした。
ひとつは JENSEN JCH10/70 Made in Italy で 12年前にストックしておいた。試奏すると中低域が豊かでいながら艶と張りのある音がした。イタリア製Jensen のセラミックマグネットを使ったいわゆるよく出会うFender らしい音がした。
Lead チャンネルの音は低域が前に出る分、少しくもった感じがした。
Jensen JCH10/70 tested

もうひとつは Fender の交換用ブルーアルニコの036457。
これはEminence の Legend 1028K と同等品である。
高域がたくさん出て、元気な音。鈴なりが多く、ストラトで弾くとトーンコントロールを絞り気味にしても使える音が出た。
Lead チャンネルの音も明るく元気な音である。

Lead チャンネルにも相性が良いことから、036457 に決定した。
Fender 036457 speaker tested


今回販売するSuper Champの特徴

オリジナルの電源トランスは日本向け100V 仕様が付いている。
オリジナルの出力トランスもまだまだ現役で使える。
小柄であるにも関わらずとても大きな音圧と迫力が得られるのが特徴。
キャビネット全体の痛みの少なさ、錆びの少なさも含め、この固体を手にできる人はとてもラッキーだと思います。
100V PT is originally installed

3p power code
新しい3P電源ケーブル 真ん中のグラウンド端子は安全上折ってはいけない

セッティング例

① クリーン
Clean setting
クリーン時はMaster大きめ、Volume絞り気味にする

②クランチ
Crunch setting
Volumeを上げていくとクランチしだす。音のが大きすぎる場合 Masterを絞る

③ Lead mode 1
Lead mode
Volume ノブをプルすると Lead Mode 。右から2番目の Level が機能する

④ Lead Mode 2
Lead Mode 2
Leadモードの歪みは Volume, Level, Master のツマミで色々変化する

ギャンプス在庫の ヴィンテージ Fender Super Champ の販売

今回の Super Champ のお値段は \ SOLD  円です。
完成するやいなや、関東平野方面に旅立ってしまいました。

「完成してしばらくの間は手元に置き、自分の楽しみで弾きたかった」
「色々なところに持っていって、ああでもない、こうでもないと話のネタにしたかった」というのが本音。色々な音が出せて遊べるアンプである上にノイズ・レベルは極小に仕上がった。

しかし、長い間アンプ置き場で手つかずで眠らせていたのも事実。
可愛がってもらえるお客さまがいらっしゃるのであれば、リーズナブルな値段設定で、早くもらわれることで、このうっとおしいコロナ禍に何らかのお役に立てればと思う次第です。


追伸: 
以前から宣言しておりました通り、Super Champ のオーバーホール・レストアと MOD の仕事はこれにて打ち止め終了です。手間と時間かかりすぎて、やってらんないのです。

では、早速次の仕事に取り掛かります。
GAMPS ( ギャンプス ) オリジナルアンプ 2510 かな ? 3512かな?
Fender Vibro Champ を PP アンプにMOD した ChamPrin かな?
それとも……