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2022年10月2日日曜日

Crate VC508 single ended guitar amp

 Crate VC 508

動画 MOD 後のサウンド

プリント基板を使い、プリアンプ一部が IC回路のアンプは
常にディストーションつなぎっぱなしのような音でした。

これをハンドワイアードのオールチューブ回路にMOD したら、
どんな音になったのでしょう ? 

動画を作製してみました。ご覧ください。



本文

さあてと、次の仕事にとりかかろうと思った矢先、「私自身がギターを練習するための、アンプが一台も無い !!!」ということに気づきました。

2021年 6月20日に Fender Super Champ をブログ掲載しました。
アンプのプリアンプ感度設定が良く、オーバードライブ機能を使わずともストラトやテレキャス等のシングルコイルギターでも簡単にクランチ・サウンドが出せ、いつまでも弾いていたくなり、練習用アンプとしては最適でした。しばらくは手元にいてくれることを願いながら丹念に1か月半の月日を費やして製作しました。ところが願いもむなしく、早々に売れてしまい、手元にはありません。中古在庫も無し。

Fender vibro champ を mod しPrinceton の回路に改造した Champrinも手元に残っていません。(中古在庫にあと一台 Vibro Champは有ります。将来製作予定)

Browny G3 も SingleJingle も自分の練習にも使える設計をしたはずなのに手元にはもうありません。(新品キャビネットの在庫無し、トランス在庫も無し)

新しいオリジナルアンプ2510の製作に専念するにあたり、作業のかたわら、休憩時間にギター演奏してリフレッシュすることが私の精神衛生上大切です。そのための練習用アンプが必要です。

在庫しているヴィンテージアンプ置き場をしばらく眺めることに。数台の Fender シルバーフェースに混じってひっそりと隠れている小さなアンプを見っけ。これこれ。こいつならキャビネットが小さく、仕事場で場所をとらない。自分が練習に使うという目的に合いそうです。ただし元々のサウンドは貧弱。大幅なレストアとMOD が必要です。

front view of Crate VC508 amplifier

90年代後半に買った Crate VC508 
オールチューブのシングルアンプという宣伝文句と値段の安さが売りのアンプだったと記憶しています。
何故かエフェクターの歪みサウンドが支配的な音でした。ゲインを最小にしても歪んでおり、オールチューブというにはあまりにお粗末なクリーン音です。チープ( Cheap 安っぽい)としか表現しようのない音質に購入後3日ほどで飽き、20年以上埃をかぶって寝ていたアンプです。

Crate VC508 Schematic diagram, marked up
回路図を見ると、
ギター信号入力直後にオペアンプICで構成される回路、いわゆるエフェクターのオーバードライブ回路(回路図の赤い囲い) があり、ここで歪み音を作りゲインのつまみを経てから、 12AX7(回路図の緑の囲い) に信号が送られ、トーンコントロールとボリュームの後にEL84 パワーアンプヘ行き、OT を介してスピーカー出力している。
つまりアンプの中にオーバードライブ・エフェクター( オペアンプ )を内臓しているアンプということがわかります。
注: オペアンプとはトランジスターを使った増幅素子が2個内臓された IC のこと
input jack, gain, tone, volume
コントロールパネルは左から
Input, Gain, Tone, Volume, Line out, Pilot lamp, Power Switch

Back panel removed to expose internal circuit
バックパネル を外すと、当然のごとく PCB プリントサーキット基板が使われています。よく観察してみると
・基板へのシャーシー取り付け
・基板直付けの真空管ソケットのハンダ付け
・配線の太さ
・使われている抵抗とコンデンサーの品質
は、アンプの新品価格の安さにしては意外としっかりとしています。少なくとも もっと価格の高いMesaBoogie よりは信頼性が高そうでFender のリイシューシリーズや Twin Amp よりは少しだけ劣るかもという感じの基板が付いています。少し驚きました。

しかし、プリントサーキット(PCB) の音の特性から逃れることはできず、ハンドワイアード回路の音の繊細さや音の太さとダイナミックさは出せるわけもありません。低価格なアンプゆえ当然といえば当然です。

このプリント基板のままオーバーホールして使うことは選択肢としてはあり得ません。
ハンドワイアード化が必要です。
オールチューブの持つ美しいクリーンが出てくれないと楽しく練習できません。
エフェクターの歪みは、早いパッセージが楽に弾け、かっこいい感じはするけど誰が弾いても同じ音がしてしまうところが嫌なのです。

単純にハンドワイアードにするだけではなく、新しく回路設計をやり直し、新たなレイアウト設計も同時に行い配線をする必要があります。
close up of the inner parts

セレッションの 8 インチスピーカーはこのまま流用します。完成後に試奏してあまりにもお粗末な音であれば手持ちのストックと交換します。
8 inch Celestion Speaker is mounted

キャビネットに付いているハンドルは柔らかく、持つとグニュッとスポンジーな感触がします。細かい部分ながら、この違和感がとても嫌いです。普通のハンドルは中に金属の板を入れ、剛性と耐久性を高めているものです。このハンドルは中に金属板が入っておらず、ゴムだけなのでグニャグニャです。もっと剛性感のあるしっかりと持てるハンドル(在庫)と交換しておきます。
Replaced with more stable one


シャーシーの外観、搭載パーツは左から 
PT ( 電源トランス ) , EL84 power Tube, 
12AX7 pre tube, OT ( 出力トランス )

トランスはこのまま流用します。
どうしても音にならないときにだけ交換します。

プリ・アンプのゲインを上げるため12AX7 を一本追加する必要があり、それに伴い、真空管レイアウトも変更します。
From left to right,  PT, EL84, 12AX7, OT

1. シャーシーから基板を外して
removing Printed Circuit Board

2. 新しく回路設計をします
元の回路とは全く異なる新規の回路図を製作します。
(トランスは流用)
designing new all tube circuit for VC508

3. 回路図を元にレイアウト設計
新規に作図した回路図を元に、適正な部品配置の検討を何度も重ねレイアウト設計を実施
designing parts layout based on the new circuit diagram

4. 回路部品を載せるボードを製作
レイアウト設計に基づきボードを製作し、
a) アイレット用の穴あけ
b) アイレットの打ち込み
c) グラウンド母線の製作と取り付け
d) 真空管ソケットの取り付け
を行いました。

VC508 のキャビネットは限界ギリギリまで小さく、余裕がありません。シャーシー上の真空管を取り付ける空間も限られています。シャーシー上の好きなところに真空管を取り付けることはできません。元の真空管取り付け場所を踏襲し、回路ボードに真空管ソケットを取り付けています。
eyelet hole, ground bass and tube socket has been installed

5. 回路ボードにパワーアンプ周りの部品搭載
installing cathode bias and drivers energy cap

6. パワーアンプ・ドライバー回路の部品搭載
installing power amp driver elements

7. プリアンプ回路の部品搭載とハンドワイアード
installing pre amp elements

8. 回路ボードをシャーシーにマウントし、各種ポットとハンドワイアードする
Hand wired circuit board has been mounted on chassis and hand wired to several pots

9. 電源回路ボードのシャーシーマウントとハンドワイアード
写真の上部、大きめのアルミ電解コンデンサーが載ったボードが電源回路ボード
Rectifier Board has been monted

作業前と後の比較

真空管のレイアウト変更
コントロール・ノブの変更
amp chassis before and after the rework

これで完成です。
写真は取り外した基板と完成したアンプの内部回路
new circuit board and removed P.C.B

新しくなったアンプのコントロールパネル
左から
Input , Gain, Tone, Middle, Master
from left to right, input, gain, tone, middle and master

Gain :プリアンプ初段のボリューム
Tone :2連ポットでTrebleとBassを連動させています。
センター(12時の位置)で Treble =5, Bass =5の状態、
そこから右に回すと Treble 増、Bass 減、
左に回すと Treble 減、Bass 増。
Middle だけ独立させ、操作性を向上。
Master は 10 の位置でマスター無しと同じ音圧。

使いやすいアンプに仕上がりました。

2022年9月3日土曜日

Fender Vibrolux Reverb ('77 silverface) for sale

 Fender Vibrolux Reverb '77

オーバーホール済 + ブラックフェーシング済 

SOLD, Thanks

1. アンプの外観

中古としては比較的きれいな外観です。
☆ 消毒済み、クリーニング済です
☆ 側面角にトーレックスのスクラッチ 1か所有り

front view of Fender Vibrolux Reverb silverface
正面

Face plate close up
フェースプレートのクローズアップ

rear view of Fender Vobrolux Reverb
背面

a tiny scratch on tolex
左上部の角のトーレックスのスクラッチあり

right side view of Fender Vibrolux Reverb
右側面

top view of Fender Vibrolux Reverb
右上部

2. アンプの基本仕様

回路仕様: オールチューブ、ハンドワイアード回路
音響出力: 35W RMS
スピーカー: 10 インチ x 2個 ( 8Ω x 2個の並列接続=4Ω)
出力管: 6L6GC x2 プッシュプル
整流方式: 整流管 真空管 5U4GB もしくは 5AR4
プリ管 : 12AT7 x2 本  12AX7 x4本

List table of each Fender guitar amplifier models
Fender ヴィンテージアンプの一覧表

ポジション( V1~V9) ごとの真空管タイプと役割の概説
Tube numbering and its corresponding function
Fender Vibrolux Reverb の真空管タイプとポジション毎の役割

当アンプの標準の電源電圧

export version PT and 100V indication
複数の一次配線の電源トランスとバックパネルの100Vの表示 

アンプは製造時に輸出仕様の電源トランスが搭載されています。
この電源トランスは一次側配線が複数あり、
各国の色々な電圧に対応できます。
このアンプは出荷時点から 100V 用の配線が施された状態です。

このアンプは元々100V 仕様です。
コンセントの電圧を120V に昇圧する必要はありません。
万一間違って昇圧した電圧を加えると、著しく寿命が縮んだり、
壊れたりします。

現在搭載している真空管のインベントリー

V1:12AX7WA SOVTEK
V2:12AX7 Electro Harmonix
V3:12AT7 Electro Harmonix
V4:12AX7WA SOVTEK 
V5:12AX7WA SOVTEK 
V6:12AT7 Electro Harmonix 
V7:5881WXT SOVTEK
V8:5881WXT SOVTEK
V9:5U4GB JJ

スプリング・リバーブ・タンク(パン)

アメリカ国内で製造されたスプリング・リバーブが搭載されています。状態は良く、問題なく使えます。型番は Fender のコンボ用の定番 4AB3C1B です。
ACCUTRONICS 4AB3C1B Made In USA
Reverb pan is Accutronics made in USA
本機のリバーブ・パン

zoom up of the letter of made in USA
Made In USA の証

注) Accutronics の商標は現在は韓国のBelton が持っています。
  昨今、生産されたAccutronics は韓国製です(Made in Korea)


3. 実施したメンテナンスの内容

A) 徹底したオーバーホールの実施

☆全てのアルミ電解コンデンサー交換
  ・使用部品メーカー: Sprague ATOM, F&T, Nichicon
  ・目的:寿命を迎えた部品を新しくする

☆全てのカーボンコンポジット抵抗の交換
 ・使用部品メーカー: Kamaya、Xicon
 ・目的:熱疲労により壊れる寸前の部品の事前交換

☆劣化したカップリング・コンテセンサーの交換
 ・使用部品メーカー: オレンジドロップ(CDE, SBE) 
 ・目的: 音質低下やノイズを引き起こす劣化部品の除去

☆劣化したセラミックディスク・コンデンサーの交換
 ・使用部品メーカー: CRL, Sprague, Murata 
 ・目的: Vibrato の揺れ復活。Treble・Bright の音質向上

☆劣化した電源コード(power cord) の交換
 ・使用部品: 芯線の太さAWG 16 x 3芯
 ・目的: 安全性の向上ならびに安定電源の確保

☆劣化したスピーカー・ケーブルの交換
 ・使用部品メーカー: Belden と WE(Western Electric) ヴィンテージ
 ・目的: 音質向上

☆劣化した真空管ソケットの交換
・使用部品: セラミック製 US Octal 8ピン x 3個
・目的: 耐熱性の向上による長寿命化

Mallory made silver electrolytic capacitor
付いていたアルミ電解コンデンサー、マロリー

New caps are sprague ATOM and F&T
新しいコンデンサー Sprague ATOM と F&T/新しい抵抗x2/ 配線材(1000V 耐圧 Belden)

old silverface circuits
作業前のアンプの回路

new parts are installed.
オーバーホールとブラックフェーシング後の回路

worn out original speaker cables
作業前のスピーカーケーブル

Belden and WE are used to build cables.
新しいスピーカーケーブル、配線はブラックフェースと同じ方式、Belden と WE 使用

Heat stress damaged pins of sockets
熱ストレスでダメージを受けた真空管ソケット(パワーチューブ用) x2

amp chassis two sckets are removed
パワーチューブ用ソケットを取り外したところ

several pins were dameged
熱ストレスでピンの折れた整流管用のソケット

used ceramic sockets to replace
熱に強いセラミック製の真空管ソケットに3つとも交換

B) 音質を追求したブラックフェーシングの実施

☆ ブラックフェースに適した配線材へ変更
 ・使用部品: Cloth replica wire ( 布被膜の単芯線 )
 ・目的: ブラックフェースと同じ配線レイアウトにし音質向上
 ・解説→
   シルバーフェースに元々付いている配線材は被膜が厚いのが特徴
 配線材をまとめたり拠ったりする配線レイアウトができません。
 Cloth replica wire を使うと配線のまとめや撚りが簡単になります。
 しかも絶縁性能は太い被膜のシルバーフェースのものと同じです。
 ブラックフェースと同じ配線のとりまとめや撚りを施し、
 美しい配線レイアウトにすることでブラックフェーシングが可能と
 なります。回路をブラックフェースにして音質を良くしつつ、
 発振しない、ノイズが出ない、安定したアンプに仕上げられます。

☆ ブースト回路の取り外し
 ・目的: 不要な発振・ノイズを減らし、回路を安定化する 
 ・解説→ブースト回路はリバーブ・トランスの出力を流用します。
     本来はリバーブのためだけに使われるリバーブトランスの
     信号をアンプの後方からアンプのフロントまで長い配線材で
     這わせる構造です。この余分な配線によるノイズと発振を
     なくすことにより、ブラックフェーシングした回路を安定
     させます。


many hook up wires and power cord replaced
ブラックフェーシングのために多数の配線材を交換(左) 安全のために電源コード交換(右)


enclosed foot switch jack hole of rear panel
リアパネルのブースト用フットスイッチのジャック穴は塞いであります
 

4. 当アンプの YOUTUBE 動画 GAMPS_GuitarAmp  

以下の3つの動画をまとめています。
  検索ワード:  GAMPS_GuitarAmp
  動画のURL: https://youtu.be/ryv1AkhkKBo
☆作業前の試奏テスト、音質と機能チェック
☆オーバーホールとブラックフェーシング作業の様子
☆作業後の試奏テスト、音質と機能の改善チェック
   

    

5. 取り扱い説明書 と予備の真空管

当アンプには取り扱い説明書と予備の真空管が付属しています。

SOLD, Thanks.  

売れました。ありがとうございます。


#FenderAmp, #VibroluxRever4b, #フェンダーアンプ, #ヴァィブロラックスリバーブ,

2022年6月26日日曜日

LED Tester

 LED 簡易テスターの工作

最近アンプにLED を搭載することが多くなってきました。
LED はどこでも入手可能なサトーパーツ製を使っています。

アンプを作っていてふと気づきました。
「製作中のアンプの電源回路とリレー式フットスイッチ回路が出来上がるまでの間は取り付けたLED がちゃんと点灯するLEDなのかどうかをテストする場面が無いな」ということに。
もちろんテスターでダイオード特性は調べてはいるものの、やはり、ちゃんと光っているところを確認したうえでアンプに取り付けたいなと思います。

そこでLED が光るのを自分の目で確認できるテスターを作っちまえと
かといって大げさな物は作る気は無く、簡易的なものにしました。

swab container used to contain parts
簡易 LED テスター

本体は綿棒の空き容器プラスチックです。
その他の部品は
抵抗 x2, 電池ボックス x1, スイッチ x1, クリップ x2 , 配線材

サトーパーツの中で私がよく使う緑色と黄色のLED は流す電流が若干異なります。黄色に比べて緑のほうが少し少なめの電流を流します。緑LEDと黄LED の両方がテストでへきるようにスイッチを使い、電池のプラスとLED のプラス端子の間に挟む抵抗値を変えられるようにして、電流値を各色に合わせています。
電源の電圧は1.5V 乾電池の2個直列で 3Vを使用。この3V に対して何ミリアンペア流すのかを抵抗値を変える事で制御します。この抵抗値はきっちり正確でなくとも、だいたいの値で十分機能します。

LED の端子は細長い金属です。クリップでその端子を挟んで通電し点灯確認します。

下に回路図を掲載しておきます。
switching total resistance upon testing LED's color green and yellow.
LED テスター回路図

Youtube で点灯しているところが見られます。


2022年6月4日土曜日

2510 DP (Dual Pre)

 ギャンプスのオリジナルアンプ 2510 にはプロトタイプが存在します。

2510 に関するブログ記事

2510 OD を完成させるために製作した試作機がプロトタイプです。
プロタイプは不要な機能があったり、必要な機能がなかったりと
そのままでは使いずらいアンプでした。
今回は、このプロトタイプを「使えるアンプ」にリニューアル
することにしました。

① Reverb 外します 
 AB763 回路をベースとし、きめ細かなハンドワイアード配線を施すと、豊富で潤沢な倍音に恵まれるアンプになります。このことがある種「リバーブ感」という言葉のとおり豊かな響きを生み出し、敢えてスプリング・リバーブを通さなくても音創りが可能となります。
スプリング・リバーブが付いていると、多少雑に弾いてもそこそこの音質が出せてしまいます。言い方を変えると音の個性が均質化される方向に行きます。弾き手の個性やギターの個性が生かされずらいという欠点があるため、リバーブは外すことにしました。
特に練習用アンプとして使用する場合、このことはとても重要です。音が均質化され、下手に弾いてもその欠点が隠されてしまうと上達の妨げとなります。

② 2つのプリアンプを作り、各々独立したボリュームとトーンコントロールを持たせます。
③ 2つのプリアンプ間をフットスイッチで切り替えられるようにし、ライブでの操作性を向上し、使い勝手を高めます。
Volume, Treble, Bass, Middle, Master Volume の6つのコントロールつまみを2重化し、瞬時にA から B へ、B から A に切り替えられるようにします。
随分前に、あるギタールシアーさんから「2つのマスターボリュームをスイッチングで使い分けられないか」という相談を受けたことがあります。小さめの音で弾いているリズムギターの音質をできるだけ変えず、マスターだけ上げた音圧でリードをとりたいということでした。(そのときは既成のアンプの改造というテーマでオリジナルアンプのように設計自由度が低くお断りしました。)
今回はギャンプス・オリジナルアンプであり、チャンネル毎にマスターもスイッチできるようにしています。そのため、あらかじめチャンネルAとBとで同じ音質になるようにトーンスタックを微調整しておけば、マスターの差だけを味わうことも可能となりました。


front view of 2510 prototype
2510 プロトタイプのキャビネットはそのまま流用


下の写真のように上側(白ノブ) がチャンネル A 下側( 茶色ノブ) がチャンネル Bで上下2列にポットを配列しました。
変更後のコンパネは 5つのツマミが2列に並ぶ
コントロールパネルの MOD

約2ヶ月かけてじっくりと回路の Modify を行いました。
元の回路とMOD 後の回路
回路のMOD

回路の変更部分を写真上にマークアップ
MOD後の回路
5月31日に完成しました。

当アンプはもうプロトタイプではなくなりました。
モデル名は 2510 DP ( Dual Pre ) です。
音は後日 Youtube にアップします。

狭いスペースに少し回路を詰め込みすぎました。
2つのプリアンプのコントロールノブ 全部で10個を搭載するにはシャーシーのスペースに余裕がなくレイアウト設計的にみると少し問題があります。
結果として 2510 OD にくらべ若干ノイズが多めとなってしまいました。

そのこともあり、当アンプは現在は非売品です。

私のギター練習のお供とします。

2022年5月31日火曜日

Fender Bassman 50 Silverface

SOLD thank you


70年代製の Fender Bassman 50 のオーバーホールをしました。

1998年5月にノースカロライナのシャーロットに出張していた時、
休日に出かけた楽器屋さん、確か Music Go Roundという名前、
で買ったものです。

中古で購入した後、30年以上経過し、回路部品の寿命も尽き、
オーバーホールして新品当時の音を蘇らせることにしました。

Picture of silverface Fender Bassman after reconditioning
Fender Bassman silverface

完成後のサウンドクリップ追加 ( 2022 APR )



1. Grill cloth の交換

グリルクロスはわずかな切り傷があると次第に傷口が広がります。
張り替えることにしました。

removing the cloth from front board
グリクロスをリムーブ

ブラックフェースに使われているクロスの色合いに近いものにして
みました。クロスを変えるだけで、落ち着いた雰囲気になります。
cloth color is changed
クロス張替え前後

2. フィルターキャップのオーバーホール

30年前、購入した時点で、
フィルターキャップのアルミ電解コンデンサーは既に交換されて
いました。それから30年経ち、もうとっくに寿命を迎えています。
新しいコンデンサーに総交換しました。

同一メーカーで揃えずに、 3つのメーカーのコンデンサーを
ミックスして使います。音質と信頼性の両立にはこれが良い。

デカップリング抵抗はセラミックコンポジション抵抗に交換し、
音質は変えず、耐久性を向上します。

高電圧のかかる( 300V 超 ) 配線材は耐圧1000V のベルデンに交換し
漏電の危険性を低減しました。

アンプの増幅回路に電源供給するフィルターキャップ部分を
徹底的に強化することで、低ノイズで、迫力のある良い音を
長く保てることを目的としています。

before and after the replacement
フィルターキャップのオーバーホール

3. 整流回路のオーバーホール

ベースマンは整流管ではなくダイオード整流です。
6本あるダイオードのうちの 1本に高圧放電の変色がみられます。
この付近に絶縁不良があり、放電したかもしれません。
残りの5本は痕跡がなく音も出ていました。
音に迫力が掛けていた要因の一つです。

there was a burnt mark on the outer casing
Charned diode

整流回路部品を一旦全て取り払い、回路ボードを洗浄した後、
整流回路用 Diode x 6,Bias 回路用 Diode x1,抵抗 x1,アルミ電解x1
を交換しました。
絶縁不良を取り除き、部品を新しくし、安定稼働させます。

同時にバイアス回路は バイアスの深さ調節が行えるように
回路変更しました。

before and after the replacement
整流回路のオーバーホール


4. 増幅回路全体のオーバーホール

ギター信号の入力から プリアンプ、トーンスタックを通り
再増幅してフェーズインバーターに入りパワーアンプに到達する
一連の増幅回路のオーバーホールを行いました。(写真参照)
フィルム・コンデンサーは主にオレンジドロップに交換
カーボンコンポジット抵抗は新品に交換しています。

増幅回路のカーボン・コンポジット抵抗を異なるタイプ
( 金属皮膜、酸化金属皮膜、カーボンフィルム等)に変更すると
音質は激変してしまいます。
金属皮膜にすると変に固く、高域寄りの音になる。
カーボン・フィルム抵抗にすると、迫力の欠けた感じがします。
同じカーボンだからいいじゃないかと思われるかもしれませんが
やってみると如実に音が変わります。

増幅回路に使う
カーボン・コンポジット抵抗の音の感じは他の抵抗では出せません。
一方で、電源回路の抵抗は
カーボンコンポジットで無い方が信頼性が高まり、音質は変わりません。

この違いを実験したり、経験積んで体感すると面白いです。

実験をするということは、
結果には自分で責任を持つ。自分でする行動なのだから。
人のモノマネをしたり、パクリをせず、自分の考えで行動する。
人の考えはあくまで参考とする。
失敗したら、良い結果になるまで、あきらめず作業し直す。
常に論理的思考と自由な発想とを組合わせる。
やってることが論理的に合致しているかを自分で考える。
豊かな発想を心がけ、頭が固くならないようにしておく。

と常々思っています。
before and after the parts replacing
増幅回路のオーバーホール

グラウンド母線

板厚 2mm 幅10mm の銅の板を使い、グラウンド母線を敷設しました。
Fender アンプはシャーシー全体をグラウンドとみなす多点接地です。
アンプが古くなり接合部やハンダ付け部が古くなると、
シャーシーグラウンドの導通が悪くなり、
ノイズが出やすくなります。

グラウンドは ゼロ電位です。このゼロ電位をきちっと 0 V に保つため
導電体の質量が多めの銅板を使います。

アンプは、低ノイズとなり、美しいクリーンサウンドがさらに際立ち、
楽しむことができます。
using copper bar of 2mmx100mm material
グラウンド母線を敷設しノイズ低減

Fender アンプのパワーチューブの真空管ソケットには以下の2種類の
抵抗が接続されています。
5番ピンに、 1500Ω 1/2W のグリッドストッピング抵抗。
4番ピンには 470Ω 1W のSG ストッピング抵抗。

この 2種類の抵抗は寄生発振の抑止が目的で取り付けられています。

この抵抗とソケットピンとの接続方法は
真空管ソケットの空きピンである 1番ピンと 6番ピンを使い、
真空管の底面に対して抵抗の筐体が水平になるようにハンダ付け
されているのがオリジナルの方法です。

このハンダ付方法を止めにし、
新たにラグ端子を使い、
真空管底面に対して抵抗が垂直に立つ形に配線しておきます。
この垂直接続は寄生発振をさらに起こりにくくします。
itis for oscilation reduction
垂直にストッパー抵抗を取り付け

完成しました。
新しいパワーチューブに交換し、バイアス調整をし、
テスト試奏しました。
under testing
完成



音質は、

ギターを使用した場合、

・迫力があり、張りと艶のあるクリーンが美しい。
・ピッキングの動作で敏感に出音が反応する。
・ギターのボリュームコントロールを駆使してソロ・ギターが可能
・Noramal Channelでも Bass Channel でも使用可能
・Bass Channel はプリアンプ増幅段が一個多い分、深みが加わります。



ベースを使用した場合、

・暖かいベースの音が出しやすい。
・真空管ならではの音の輪郭があり暖かい。
・分厚く分離感がある音です。
・アコースティックベースやホローボディーとの相性抜群です。
・Deep スイッチは中域がバタつく時や出すぎるときにオンすると
 すっきりした音にできる便利スイッチです。

今回MOD した回路について

当アンプを初めにオーバーホールした当初は AA864という回路図に基づいてオーバーホールとブラックフェーシングをしました。(1964年のプロトタイプ時点での回路) しかし、試奏を続け弾きこんでいくと、低域の暴れが出たり、中域の癖が耳につきました。
1964年のすぐ一年後に回路図変更されているのは、やはりプロトタイプの音がよろしくなかったということです。

何度か試行錯誤を重ね、最終的に、AB165 回路にMOD しなおました。

ご参考までに回路図を添付しておきます。
gif schematic of Fender AB165 circuit
Fender AB165 schematic



#FenderBassman #Bassman #真空管ベースアンプ