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2016年8月6日土曜日

接点復活剤をギターアンプに使うときの正しい使い方。

接点復活剤

「ギターアンプに接点復活剤は使わないで」とウェブサイトやブログ、Facebook 等で繰り返し書いてきました。ところが、私のところに修理にやってくる古いヴィンテージアンプは依然として接点復活剤の被害を受けているものが多数を占めています。本来はアンプの調子を良くしたいと考えて噴射したはずの接点復活剤がアンプに他の故障を誘発しているのです。
接点復活剤を噴射されたがために、どうしようもない故障の症状が出て廃棄処分となったギターアンプは数知れないことでしょう。

そこで、「もしもどうしても接点復活剤を使いたいのであれば、このように使えば良いですよ」という記述を掲載して、少しでも不要な故障を減らせればと考えました。

まず下の写真。これは私のところに修理にきた Fender のヴィンテージアンプのシャーシーの内部です。赤い矢印の先をよくご覧ください。
ギラギラと油ぎっているのがわかるでしょう。これが接点復活剤の噴射された痕跡です。回路ボード(写真の黒い板)の金属ハトメ(リベット)にはコンデンサーが付けられます。ハトメから配線材で Treble と Bass のポットがつながれます。
このハトメとハトメの間は電気的に絶縁していないといけません。ところが、接点復活剤の油が黒いボードに染みこみ 3つのハトメは電気的につながっている状態です。結果として、Treble と Bass のつまみを廻しても音に何の変化も出なくなる、つまりつまみが効かないという症状が出ていました。
接点復活剤の油成分は回路ボードの表面で絶縁性能を低下させている上に、ボードの内部まで浸透しており、表面をふき取っても回復できません。このアンプは新しい回路ボードを作り直し、尚且つ配線材も全て新品に交換してやらないと元には戻りませんでした。
インプット・ジャックから接点復活剤を噴射されてアンプの内部の状態
下の写真はプリ管のソケットです。絶縁体の表面でギラギラしているのは水ではありません。
接点復活剤の油成分です。実はこの真空管につながる回路に問題があるのです。しかし、回路を直さず、真空管交換し、それでもだめなので接点復活剤を噴射したものと推測します。もちろん接点復活剤でなおるはずもありません。それで売り飛ばされ、私のお客さまの手元にたどりついたのです。
接点復活剤で汚された真空管ソケット


なぜこんなことになるのでしょうか。
推測するに、接点復活剤を噴射するときこんな風に思っていませんか? 「私の噴射する接点復活剤は接触の悪い金属の接点にだけ付着するのだ。電気的に絶縁状態であるべきところでは接点復活剤は蒸発して害はおよぼさないのだ」と……Wrong, 間違いです!!!。
接点復活剤はかしこくありません。自分で絶縁物と金属とを見分けることはできません。噴射されたら付着した全ての物質の電気抵抗を下げてしまいます。さらに一端噴射されたら蒸発はしません。噴射する人の自己責任です。

【接点復活剤とブロワー・クリーナーの違い】
接点復活剤とは別に、ブロワー・クリーナーというものが売られています。こちらは速乾性で、吹いた後にオイル等の残留物は残しません。圧力をかけた気体を吹きつけ、埃を吹き飛ばす物です。下の写真に日本製と米国製の 2種類のブロワーを載せました。缶の裏側に速乾性で残留物は残さない旨の記述があります。そのため、仮にインプットジャックから噴射したとしても、上の写真のように回路を故障させる心配は少ない。吹き飛ばした埃や異物がたまたま回路の敏感な部分に飛んでいき故障を誘発させる危険性は少しはあります。(全く安心ではありません。) どうもこのブロワーと勘違いして接点復活剤をアンプの内部に噴射し壊してしまう人がいらっしゃるのかもしれません。
ブロワー・クリーナーの例
【 接点復活剤とブロワー・クリーナーの見分け方 】
下の写真の左側がブロワー・クリーナー、右側が接点復活剤です。ダンボール紙を2枚用意し、そのダンボールめがけて約2秒間噴射したときの写真です。
ブロワー・クリーナーを噴射したダンボールには何も付着物がなく、乾いています。
接点復活剤を噴射したダンボールは油でベトベト、ギトギトです。またこの油は乾くことはありません。いつまでもこのまま残ります。

ブロワー(左)と接点復活剤(右)をダンボール紙に噴射した後
【どうしてもギターアンプに接点復活剤を使いたいときの正しい使い方】
下の写真の左が米国製の Deoxit で、右が日本製の接点復活剤です。
噴射したときに左は赤色の液体、右側は透明の液体が出ます。
もしもどうしても使いたいなら、左側をお勧めします。あたりに飛び散っても色で確認できるからです。
接点復活剤の使命は錆びた接点の酸化金属を取り除いて電気的な導通を回復させることにあります。そして金属と金属のすべりをよくするためにオイル状の液体が付着して残ります。
このときに必ず念頭に置くべきは、絶縁体(電気を通さない物)には決して接点復活剤が付着しないようにすることです。本来電気が流れてほしくないものが接点復活剤により電気を通してしまうからです。
米国製のDeoxit(左)、日本製の接点復活剤
(1) ギターアンプに接点復活剤を使う場合の基本は間接噴射で、決してアンプに直接噴射しない

下の写真は綿棒の先端に接点復活剤を噴射しています。このとき決してアンプに直接かからないように気を配ります。

綿棒の先端に接点復活剤を噴射
(2) 綿棒などに接点復活剤を染みこませて使う

下の2枚の写真は RCAジャックへの塗布の様子です。
接点復活剤を含ませた綿棒の先でRCA ジャックのグラウンド端子の金属部分を軽くこすります。
RCA ジャックのグラウンド側の接点復活
次にRCA ジャックのホット端子金属を綿棒の先でこすります。RCA 端子のホット側とグラウンド側の間はプラスチックで絶縁されています。この絶縁部分に綿棒は決して触れさせないように注意します。
RCA ジャックのホット側の接点復活
【プリ管用のソケット端子には歯間ブラシを使う】
もしもプリ管のソケットの端子が錆びてきて、導通を回復したい場合、綿棒を使うと先端が大きすぎて絶縁部分にも接点復活剤を付けてしまいます。それを避けるには小さなソケット端子に合う小さなサイズのものに接点復活剤を付けて塗布します。私は歯間ブラシを使います。

歯間ブラシの先端に接点復活剤をつける
真空管ソケットの金属端子にだけ接点復活剤を塗布します。決して茶色い絶縁部分に接点復活剤をつけないこと。

プリ管のソケット端子への塗布
【インプットジャックに接点復活剤を使いたい場合はジャックを取り外して塗布】
下の写真はインプット・ジャックです。この穴から接点復活剤を噴射してはいけません。

インプット・ジャック
下の写真のように、まずインプット・ジャックを留めているナットを緩めてからジャックを外します。

シャーシーからインプット・ジャックを外したところ
外したインプット・ジャックが下の写真です。Fender の場合、写真のように歯つきワッシャーでシャーシーの裏に押し付けられています。

外したインプット・ジャック
歯つきワッシャーはインプットジャックの回路的なグラウンド(ゼロ・ボルト電位)を正しく保つために必須の部品です。この部分が正しく接触せずに抵抗値が少しでも発生するとたちまち大きなノイズに悩まされます。歯つきワッシャーを必ずジャックから外し歯つきワッシャー単体で接点復活剤のシャワーを浴びせます。

歯つきワッシャー単体に接点復活剤をかける
接点復活剤のオイルがベトベトのままジャックに付けるとその油が絶縁部分に染みこんでいってしまいます。ここはかならず歯つきワッシャーに付着した余分な油成分をティシュペーパーや布等でふき取りれます。

歯つきワッシャーに付いた余分な油をふきとる
ジャックのコールドとホットの金属部分は綿棒に染みこませた接点復活剤を塗布します。
このとき決して茶色い絶縁体に付着しないように気をつけます。

ジャックのホットとコールドーの塗布
インプットジャックにはスイッチが付いていています。フォンプラグを差し込むとオープンになり、差し込まないときにクローズします。この接点部分の隙間は狭いです。そのためトレーシングペーパーに接点復活材を染ませ、そのトレーシングペーパーをスイッチの隙間に通してスイッチの接点部分に塗布します。フォンプラグをジャックから挿して作業すると接点の部分が開き、作業しやすいです。
このスイッチはインプット・ジャックのⅠとⅡの両方にあります。必ずⅠもⅡも作業します。
ジャックのスイッチ部分への塗布
ポットにガリが出たので使いたいという人がおられるかもしれません。答えはノーです。
ギターアンプのポットには使わないでください。ギターとギターアンプではポットに流れる電圧と電流が大きく異なります。ギターで直ったからギターアンプも同じではないのです。

ギターアンプのポットのガリはポットに繋がっているカップリングコンデンサーの DC リーク故障の場合が多いです。回路のコンデンサー交換をしないと直りません。
コンデンサーのリークはしていないのにガリが出る場合、ポット洗浄しないと確実にガリをとることはできません。ポット洗浄してもまだガリが出る場合はポット内部のカーボン膜が削れてしまっておりポット交換の必要があります。
つまりギターアンプのポットのガリ対策に接点復活剤の出る幕は無いと考えてください。

以上が「どうしても接点復活剤をギターアンプに使用したい場合の正しい使い方です」
では良きギターライフを



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