一方フィルムコンデンサーには極性はありません。電圧が高いほうにどちらの端子をつないでも問題なく作動します。
でも厳密にはフィルムコンデンサーを取り付けるときの向きというのはあるのです。
部品のレイアウト( 部品どうしの配置、向き、距離、配線の長さ、配線の道筋) が微妙に影響して発生する ノイズや発振という問題と向き合う必要のある場合、ノイズや発振をわずかながら少なくするための指向性(2個の端子をつなぐときの法則) があり、それを利用して問題の低減をすることができます。
「回路のインピーダンスが高いほうとインピーダンスが低いほう」を区別して、2つあるフィルムコンデンサーの端子をつなぐと一般的には言われます。
ローインピーダンスはノイズに強く、ハイインピーダンスはノイズに弱いということも言われます。
【注意】
指向性(向き)に基づいたつなぎ方をしたからといってすぐに効果が出るとは限りません。
・ノイズレベルを最小にするグラウンド配線、
・発振の出にくい部品レイアウト、
・発振しにくい配線の経路、
等のアンプとしての基礎工事がしっかりとしていてはじめて相乗効果が得られます。
フィルムコンデンサーの構造を見ていきましょう。下図参照
端子(青) 棒の付いた2枚の薄い導体(茶) の間に絶縁体(緑)を挟みます。左側の図。つぎに、上の端子をくるくると回して、円筒形になるようにフィルムを巻いていくと右側の図のようになります。
さて下図をもう一度よく見てください。左図の上の端子を巻いていくと渦巻のように導体を巻いていくことになり、最終的に円筒の外側にくるのは上の端子に繋がっている導体です。下の端子に繋がっている導体は円筒の内側に来ます。
外側に来る導体のことを Outer Foil (アウターフォイル=外側のフォイル) と呼びます。
このようにフィルムコンデンサーに付いている2個の端子は、Outer Foil につながっている端子と Inner Foil(インナーフォイル=内側のフォイル) に繋がっている端子とに区別できます。
そしてこの Outer Foil かどうかで向き(指向性)が決まるのです。
フィルムコンデンサーの概略図 |
フィルムコンデンサーのメーカーによっては、どちらの端子が Outer Foil に繋がっているか、目印を付てくれています。
下の写真は SOZO の Mustered です。メーカー名、容量値のほかに黒い線が印刷されています。この線の側、写真の左側の端子が Outer Foil に繋がっている端子です。
SOZO の Mustard Cap |
オレンジドロップは2個の端子が同じ下向き (Radial ) に出ているものの、構造はSOZO などと同じくフィルムを巻いて作ってあります。 Outer Foil を示す表示はついていません。
こういう場合、どちらの端子が Outer Foil かは自分で調べます。
切断して中を観察できても、切断したコンデンサーは元にもどせず使えません。破壊せずに調べる方法があります。
粘着テープ付きの薄いアルミ板を用意します。下の写真。
Orange drop とアルミの薄板 |
アルミの薄板をコンデンサーの外皮に貼り付けます。
このとき、
・アルミ薄板は浮きが無いように密着するように貼り付けます。
・コンデンサーの端子はアルミ薄板に触れないようにします。
コデンサーの外側をアルミの薄板で覆う |
計測レベルは最も小さい容量(pF )に設定します。
容量計の計測用端子の片側(黒)をアルミ薄板につなぎ、もう一方の端子(赤)をコンデンサーの端子の片方につなぎ、容量を計測します。
コンデンサーの外皮とコンデンサーのひとつの端子の間の容量を計測しています。
下の写真ではコンデンサーの左端子と外皮の間は 11.6pF の容量があることを示しています。
アルミの薄板と2つあるコンデンサー端子のひとつとの間の容量計測 |
両極の間の距離が近いほど容量は大きいという特性があります。
外皮と端子間の容量を計測し、値が大きい端子は、外皮に近いフォイルの端子であるということがわかります。
つまり、写真の右側の端子は Outer Foil に繋がっているということです。
アルミの薄板とコンデンサーの右端子間の容量計測、この端子が Outer Foil |
既にOuter Foil の目印が付けられているコンデンサーで同じ計測をしてみましょう。
SOZO Mustered とアルミ薄板 |
アルミ薄板の貼り付け |
右端子と外皮間の容量計測 |
左端子と外皮間の容量計測 |
5個中、2個 の表示が間違っていました。
Yellow Mustardは3勝2敗 |
SOZO には Blue Molded という青色のコンデンサーもあります。黄色い Mustered よりもはるかに値段は高い。 Blue Moldedの表示は今までのところ間違いはありませんでした。
Orange Drop は Outer Foil の表示はないものの、製造ロットが近いものは向きが一定している傾向にあります。
例: あるロットは全て横書きの文字の右側が Outer Foil
ロットが異なる場合、つまり製造年とWeek の数字が異なると向きが反転することもあります。
ここまでで、 Outer Foil の見極め方がわかりました。
次は、どちらの端子をどこにつなぐかです。
下の図はツイードアンプのプリアンプ回路です。Volume が2個とトーンコントロール1個ついています。
0.1μF(400v耐圧) は12AY7 のプレートとVolume の間を繋げています。
この場合、0.1μF コンデンサーの左側は高いDC電圧がかかっていて、コンデンサーはDC 電圧を遮断してギター信号だけを取り出して右側に出力します。
コンデンサーの左側がローインピーダンスで右側がハイインピーダンスです。
コンデンサーの左側はノイズに強く、右側はノイズに弱い。
よって Outer Foil は左側につなぎます。(図中の赤色線側)
1 M Ωの トーンコントロールの下に.005μF があり、グラウンドにつながっています。
このコンデンサーは信号をある程度削ってグラウンドに捨てています。
どのみち音を捨てる側はノイズなどが干渉しても関係ありません。
グラウンドはローインピーダンスです。
したがってグラウンドに繋がる端子を Outer Foil にします。(図中の青色線側)
トーンコントロールの上に 0.0005μF のコンデンサーが付いています。
このコンデンサーはハイパス(高域をバイパスする)として働きます。
既にハイインピーダンスとなってしまっているのでこのコンデンサーはどちら向きでもあまり関係はありません。しかし、ボリュームは全開ではなくだいたい5目盛りぐらいで使うことを想定すると上よりも下のほうが比較的にハイインピーダンスとなり、Outer Foil は上側につなぎます。
Outer Foil 側つまりコンデンサーの外皮により近い側をノイズの影響を受けにくいローインピーダンスサイドにつないでノイズに弱いハイインピーダンス側を内に包む形に取り付けることでコンデンサー本体が受ける電磁波ノイズの影響を少しでも少なくしようという考えです。
ツイードアンプでのつなぎ方の例、赤および青が Outer Foil |
下図はギター本体のトーンコントロールの回路図です。
ギターに付いているコンデンサーは音を削るためのコンデンサーです。
ツイードアンプの .005 と同じです。
グラウンドに余分な音を捨てています。グラウンドはローインピーダンスのため図の下側をOuter Foil につなぎます。(図中の赤色線)
ギターのトーンコントロールのコンデンサーの向き、赤側が Outer Foil |
以上がフィルム・コンデンサーを取り付けるときの向きについての解説でした。
良きギターライフを
0 件のコメント:
コメントを投稿