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2016年3月4日金曜日

真空管の灯り(光) について

お電話でギターアンプの故障についてのご質問が来ております。その都度、真摯に回答させていただいております。そんな中、ここ最近、少し気になることがありました。それは真空管の故障について、「内部の灯が消えているときだけが真空管の故障である」とお思いの人が少なからずおいでになるということです。

「真空管が光っていないとき、真空管が壊れている」これはそのとおりです。しかし、「真空管の内部の灯りが点いていれば、その真空管は壊れていないのだ」と勘違いしている人が多いのです。はじめは少しびっくりしました。真空管を販売なさっている人でさえも「真空管の内部が光っていればその真空管は壊れていません。」と断言なさったというのです。そこまで勘違いが進行しているとは知りませんでした。
真空管の灯り--赤く光っています


まず以下の文はいずれも正しいです。○

① アンプがパワーオン状態で真空管の内部の灯りが消えている場合、真空管は壊れています。--- True
② アンプがパワーオン状態で、真空管の内部の灯りがたとえ点いていても、真空管が壊れていることがあります。--- True

以下の文は正確ではありません。×
③ アンプがパワーオン状態で、真空管の内部の灯りが点いておりさえすれば、真空管は壊れていない。 --- False 灯りが点いている場合でも真空管が故障していることがあります。

ご質問なさったとあるお方に③は間違いですよ、②が正しいですよとお伝えしたとき、「へー知らなかった、灯りが点いておれば真空管は壊れてないと思ってました」と驚いていらっしゃいました。

【真空管の内部の灯りの正体】
真空管の内部を構成する要素として次の 4 つの要素があります。
 a) プレート Plate
  b) グリッド  Grid
  c) カソード  Cathode
  d) ヒーター Heater
これらの構成要素が実際にガラス管の中にどのような形で取り付けられているのかは以下のURLにある、絵を見てください。

Antique Electronics Supply というアリゾナ州のタンパにある部品屋さんのサイトの情報です。
リンク許可をとってあります。 12AX7 Tube Diagram,    6L6 Tube Diagram
12AX7 は ヒーター以外の主要構成要素は Plate, Grid, Cathode の3つです。3極管と呼ばれます。
6L6GC は ヒーター以外の主要構成要素は Plate, Grid, Cathode に Screen Gridが加わり、4極管と呼ばれます。( EL34 はさらに Suppressor Grid が加わり5極管です)
リンク先での図には、主要構成要素以外の細かい構造物も書かれています。
図の Filament が私がヒーターと呼んでいる、灯りがともる構造物です。

12AX7 を例にとって簡単に真空管の動作を説明しますと、

・ ヒーターに6.3V を流して、熱を発生させ、ガラス管の内部の温度を上げます。
・ プレートには高い直流電圧がかけられています。150V から 300V
・ 真空管の内部が十分に温まると、カソードからプレートに向かって電子が飛びます。
・ 次にグリッドに交流の信号を入力します。ギターからの信号です。
・ グリッドに加わるのは交流信号で、プラスからマイナス、マイナスからプラスに変化します。
・ グリッドがプラスになったりマイナスになったりすることで、カソードからプレートに飛ぶ電子の数が変化します。
・ その結果としてプレートの電圧が変化します。
・ このプレートの電圧の変化を信号として取り出します。
・ グリッドのわずかな振幅(ゆれ) がプレートの高い電圧上での大きな振幅(ゆれ)となり増幅ができます。
という感じです。
回路図上のプレート、ヒーター、カソード


真空管の内部の灯りというのはヒーターの先っちょに付いているフィラメントの灯りです。

「真空管の灯りが点いている」ということからわかることは、内部を暖めるヒーターは切れていないということだけです。

当然のことながらフィラメントが点かないということはヒーターが切れたということであり、真空管の内部の温度は上がらず真空管は作動しません。他の要素も同時に壊れていることもあります。

ヒーターは大丈夫で、灯りがついていても、プレートやグリッドやカソード、その他の構造物が壊れている場合も、真空管は正常に作動しません。

つまり灯りがついていても、真空管が壊れている場合があるのです。
「音は出るのだが、ノイズが高かったり、変な雑音が出たり、音が小さかったり、Vibrato や reverb の機能が働かなかったりする」場合、
真空管の灯りは点いているが真空管のどれかが壊れている、劣化している、ことがあります。
全ての真空管を変えてみても直らなかった場合は回路の問題です。

もうひとつご質問なさる方に多いケースで気になることがあります。

アンプに何らかの不具合が出ている場合、真空管が原因なのか回路が原因なのかをご自分で判断なさるときに、パワー管だけを交換して治らないので回路が悪いと決め付けていらっしゃることが多々あります。
言い方を変えますと 12AX7 ( ECC83 ) や 12AT7 ( ECC81) などのプリ管は壊れないと信じていらっしゃる。

プリ管も壊れます。灯りは点いているが壊れている場合があります。

整流管( 5AR4 や 5Y3GT)も壊れます。灯りは点いているが壊れている場合があります。
ちなみに整流管は2極管と呼ばれ、プレートとカソードとヒーターの3つの要素で構成され、グリッドはありません。

プリ管も整流管もパワー管も全て交換してみたが直らないとき。
そのときは回路が悪いのです。
ツイードデラックス・クローン( GAMPS 作製) の真空管の灯り
真空管は、
・ガラス管内の空間で電子を飛ばすものである。
・電子を飛ばすためにはヒーターで、( 電熱線で) 内部を熱する必要がある。

このことがトランジスターと決定的に違うのです。トランジスターは
・半導体の特性により内部で電子移動する。
・ヒーターは不要
このヒーターが不要であることがトランジスターの寿命が真空管よりも長い理由のひとつです。
でもトランジスターもいつかは壊れます。

真空管は動作するためには常に自分で熱を出して暖めていないといけにない。
しかし、熱というものは金属にとってストレスでもある。
真空管の要素であるプレートやグリッドやカソードは金属でできている。
金属は熱で疲労し、やがて壊れる宿命なのです。

人間は神ではないのです。
人間の作ったものはかならず何がしかの不完全性をもっており、必ずついつかは壊れるのです。
「絶対に壊れない」、「絶対に安全な」、などという形容詞を使う人がいたら用心してかかるぐらいで調度でしょう。

良きギターライフを






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