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2021年6月20日日曜日

Fender Super Champ 販売

Fender Super Champ 

70年代半ば、メサブギーの歪むアンプを意識し、ポール・リベラ が設計したアンプ。

キャビネットの大きさは Champ と同じ。

スピーカーは Champ の8インチよりも大きい10インチ径。

パワーアンプはChamp の 6V6GT 一本のシングル・エンデドではなく、 6V6GT 二本のプッシュプル。

回路構成は Princeton Reverb によく似ているもののコンデンサーの値が異なり 、Master Volume が追加され、スイッチ切り替えする Leadモードを搭載している 。

サウンドは Princeton Reverb よりも元気でやんちゃな感じ。

クリーンの状態で、Master を下げ Volume を上げるとクランチする。

リード・モードはよく歪むものの、耳に痛くない上品さもある。

Super Champ front view


Super Champ rear view

内部回路と直接繋がっていたスピーカーケーブルをフォンジャックタイプに変更。ノイズ低減のためにライン出力端子を削除
音圧の向上と使い勝手の向上を両立。( 下の写真 )
Super Champ rear left view

ノイズ低減のためフットスイッチ端子2個を削除。
接触不良防止のためにリバーブケーブルを新規交換。(下の写真)
Super Champ rear right view

金属プレートやネジは錆びもなく美しい。
トーレックスにも傷や汚れはない。
Super Champ top right view

Super Champ top left

グリルクロスは汚れやほつれがなく、クリーニングすると美しく光沢。
Super Champ front grill

コントロールパネルは傷やベントは無い。
Super Champ control panel, left side

Super Champ control panel center

Super Champ control panel right side

サイドのトーレックスも美しい。
Super Champ left side view

Super Champ right view

この固体はトーレックスの破れもなく、グリルクロスもきれい。
金具の錆びなくきれい。前オウナーさまの保管状況が良かった。

実施したオーバーホールと MOD の内容

6C10 真空管を 12AX7真空管 2本 に置き換え

Super Champ で使われている真空管の種類は以下の4種類
 12AX7、12AT7、6C10、6V6GT 
Picture of 12AX7 tube and 6C10 tube
6C10真空管は、ガラス管の中に3個の増幅素子が入っている、めずらしい真空管。ピンは12本あり、形状も丸々とした太いガラス管が印象的なプリ管である。
(通常プリ管というと増幅素子が2個入った9ピンが主流である)
6C10 は、ヴィンテージ真空管を扱うお店でさえも売り切れている。
SOVTEK や Electro Harmonics 等のメーカーでも生産はされていない。
GAMPS にも在庫は中古管がたった1本残っているだけである。

真空管は昔の電球と同じくフィラメントが内部にあり、電気を熱に変えて光っている。使えば使うほど劣化する。将来必ず交換する日がやってくる。在庫も無く、生産もされていない 6C10 のままでアンプを使い続けるのには無理がある。

ここで朗報がひとつ。プリ管の12AX7は現行メーカーも生産を続けている。
しかも、 増幅素子の増幅率が6C10と同じ100である。
違いはガラス管の中に増幅素子が2個しか入っていないことである。
comparison chart of 12AX7 and 6C10

ヒーター消費電流は 6C10 が600mA、
12AX7 はその半分の300mAである。
つまり、6C10 一本の代わりに 12AX7 二本を使っても、全く問題無し。
消費電流は 600mA で変わらず。増幅素子の数は一個増えて4個になる。
余った一個の増幅素子はノイズの出ないようにキルしておけばよい。 

6C10 用の12ピンソケットを取り除き、
リバーブ・トランスの向きを変更し、
空いたスペースに12AX7 用の9ピンソケットを2個取り付け、
ソケットと回路の配線をやり直せば良い。
Super Champ digging a hole for 12AX7 to replace with 6C10

内部回路のオーバーホールとレストア

Super Champ  original circuit parts and wiring
作業前のオリジナルの回路 コンデンサーや抵抗は劣化が進み変色している

Super champ removed parts
オーバーホールとレストアのために取り外した部品
新しい部品に交換することにより
 ① 素晴らしいサウンドを取り戻すことができる
 ② 配線方法と部品配置を調整することでノイズを極限まで減らせる
 ③ これから先、軽いメンテだけで故障知らずでの信頼性を得られる

Super Champ after overhauling and restoring
オーバーホールとレストア実施後の回路

スピーカーケーブル

GAMPS ( ギャンプス ) では、もはやこれが定番のスピーカーケーブル。
WEそのもの、もしくは WE復刻版のスピーカーケーブル線材を2本使い、適正な撚りを施し、感電防止のためのプラスチック外被のジャックと3M製ファストン端子でスピーカーケーブルを製作した。
GAMPS original speaker cable

真空管の選定

真空管は全て新品にし、信頼性を高めておく。
GAMPS では、全ての真空管を同じメーカーの同じ型番に統一することはほとんど無く、適材適所に色々なメーカーの色々なタイプを使っている。
但しパワー管だけは必ずマッチドペアでないといけない。
all new tube installed

パワーチューブは Electro Harmonics の 6V6GTのマッチドペア 

プリチューブは写真右から
 V1(トーン・シェイピング) : Tungsol Reissue 製 12AX7
 V2( リバーブ・ドライバ)   : JJ 製 ECC81 ( 12AT7)
 V3( リバーブ・リカバリ)   : JJ 製 ECC83S ( 12AX7 低ノイズ管)
 V4( フェーズ・インバータ): JJ 製 ECC83MG ( 12AX7 Mid Gain管)

スピーカーの選定

搭載する10インチスピーカーを2つの候補から選ぶことにした。
ひとつは JENSEN JCH10/70 Made in Italy で 12年前にストックしておいた。試奏すると中低域が豊かでいながら艶と張りのある音がした。イタリア製Jensen のセラミックマグネットを使ったいわゆるよく出会うFender らしい音がした。
Lead チャンネルの音は低域が前に出る分、少しくもった感じがした。
Jensen JCH10/70 tested

もうひとつは Fender の交換用ブルーアルニコの036457。
これはEminence の Legend 1028K と同等品である。
高域がたくさん出て、元気な音。鈴なりが多く、ストラトで弾くとトーンコントロールを絞り気味にしても使える音が出た。
Lead チャンネルの音も明るく元気な音である。

Lead チャンネルにも相性が良いことから、036457 に決定した。
Fender 036457 speaker tested


今回販売するSuper Champの特徴

オリジナルの電源トランスは日本向け100V 仕様が付いている。
オリジナルの出力トランスもまだまだ現役で使える。
小柄であるにも関わらずとても大きな音圧と迫力が得られるのが特徴。
キャビネット全体の痛みの少なさ、錆びの少なさも含め、この固体を手にできる人はとてもラッキーだと思います。
100V PT is originally installed

3p power code
新しい3P電源ケーブル 真ん中のグラウンド端子は安全上折ってはいけない

セッティング例

① クリーン
Clean setting
クリーン時はMaster大きめ、Volume絞り気味にする

②クランチ
Crunch setting
Volumeを上げていくとクランチしだす。音のが大きすぎる場合 Masterを絞る

③ Lead mode 1
Lead mode
Volume ノブをプルすると Lead Mode 。右から2番目の Level が機能する

④ Lead Mode 2
Lead Mode 2
Leadモードの歪みは Volume, Level, Master のツマミで色々変化する

ギャンプス在庫の ヴィンテージ Fender Super Champ の販売

今回の Super Champ のお値段は \ SOLD  円です。
完成するやいなや、関東平野方面に旅立ってしまいました。

「完成してしばらくの間は手元に置き、自分の楽しみで弾きたかった」
「色々なところに持っていって、ああでもない、こうでもないと話のネタにしたかった」というのが本音。色々な音が出せて遊べるアンプである上にノイズ・レベルは極小に仕上がった。

しかし、長い間アンプ置き場で手つかずで眠らせていたのも事実。
可愛がってもらえるお客さまがいらっしゃるのであれば、リーズナブルな値段設定で、早くもらわれることで、このうっとおしいコロナ禍に何らかのお役に立てればと思う次第です。


追伸: 
以前から宣言しておりました通り、Super Champ のオーバーホール・レストアと MOD の仕事はこれにて打ち止め終了です。手間と時間かかりすぎて、やってらんないのです。

では、早速次の仕事に取り掛かります。
GAMPS ( ギャンプス ) オリジナルアンプ 2510 かな ? 3512かな?
Fender Vibro Champ を PP アンプにMOD した ChamPrin かな?
それとも……

2019年8月28日水曜日

Fender Super Champ

Fender Super Champ のオーバーホールを行いました。

届いたアンプの状態を一言で表すと「ノイズの山」
×  電源を入れしばらくすると必ず「ジーッ」と大きなノイズ
×  少しでも外部からの振動が加わると衝撃ノイズが「バリバリッ」

当ブログの以前の記事をお読みになったお客さまのご要望で、
オーバーホールに加え、
「6C10 の真空管を 12AX7 に置き換える」MOD も同時適用しました。
Front view of the amplifier
Fender Super Champ フロントビュー

6C10 tube's socket is removed and two 9pin socket is installed
6C10 真空管を止めて 12AX7に変更 

Circuit view inside the chassis
パーツをグレードアップし、サウンド向上

 Super Champ の 6C10を 12AX7 に置き換える MODを
お客さまのアンプに実施するのは、今回でおしまい。
在庫の中古 Super Champ の販売が終了したら、
実施しません。実質、このフログのアンプが最後です。

MOD するには、既存の 6C10 真空管のソケット穴を埋め、
12AX7 用 ソケット穴を 2個設ける必要があります。
穴あけはシャーシーパンチというツールで鉄を押し切りします。
かなりの握力が必要で、高齢の身にはきつく、手の骨の痛みが
一週間は続くようになりました。
今より少し若かった頃には楽々行えていた作業。
自問自答してみると、
「やってられない」から「やりたくないと」いう結論になりました。
( 鉄では無く、アルミのシャーシーなら、穴あけはもっと楽ですよ )

 今後ギャンプスではお受けしない作業。
ならば、自分で作業なさりたいという人がおられるかも
しれませんね。そういうお方のため、なるべく詳しい資料を
掲載することにしました。
質問しなくても理解できるし、作業の自信があるというお方は、
ご参考になさってください。

但し、
異なるサイト、他のブログ、ツイッター、インスタグラム等への
無断掲載、転写、転載は固くお断りします。

以上、よろしくお願いします。

では解説スタート

受け入れ検査の結果

 ×  過去に一度もアルミ電解コンデンサー交換がされていません。
      ⇒ ノイズ問題が起こって当然です、オーバーホール必要

×  パワーチューブは過去に交換されています。しかし、
     ⇒ 不揃いな見た目の2本が使われている
      マッチドペアの新品に交換必要かも、これは後で判断

△  スピーカー端子のプラスとマイナスが逆に繋がれています。
  ⇒ おそらく過去に、よく理解してない誰かが、入れ替えた ?
      正しく繋ぎなおす。 スピーカーケーブルも作り直すかな ?
Sound test found Noise problem, Visual inspection found a lot.
T1. T2. Receiving Inspection

1. 6C10 真空管の代わりに二本の 12AX7を代用する  

6C10 用のソケットを取り去り、12AX7 用のソケット穴を2ヶ所作り
ソケットを付け、ソケットと回路の配線を実施します。

作業を言葉にするといとも簡単、上記の 2行で済みます。


その MOD が必要な理由は、、、
a)   6C10 真空管はどこのメーカーも再生産していない、
b)   6C10 の NOS も今では在庫切れで購入不可能

万一 6C10 が故障したら、他が故障していなくとも、
Super Champの使用継続が困難となる。

6C10 の代わりに12AX7 にしておけば、
いつまでもSuperChamp を使い続けることができるのです。

before and after
1. Modifocation of installing two 12AX7 instead of 6C10 tube

6C10 と 12AX7 の違い

6C10 は 中に 3個 の増幅素子を持っています。
またピンの数は 12ピン です。

12AX7 はガラス管の中に 2個 の増幅素子を持っています。
ピンの数は 9ピン です。

増幅素子の特性、増幅する度合やミューは
12AX7 と 6C10 では全く同じです。つまり、
6C10 を 12AX7 に置き換えても 6C10 の音質と同じ。

一般的なプリ管の増幅素子は 3極管です。
増幅素子ひとつにつき3端子 ( プレート、グリッド、カソード)です。
それに加えてヒーター用の端子が 2つもしくは 3つで構成されます。

6C10の 12ピンのうち
9本は増幅素子 x 3 個分の端子
2本はヒーター
1本は空き端子

12AX7 の9ピンのうち
6本は増幅素子 x 2 個分の端子
3本はヒーター

6C10 と 12AX7 とで端子配列は異なっています。
(下図参照)
この端子の整合性を頭の中で合わせて、回路部品と配線します。

12AX7 を2本使用すると、本来は3つで十分な増幅素子が4つあり、
ひとつ余ります。余った素子の端子は
a) 何もつながない
b) もしくは発振防止のため3本ともにグラウンドに落とす
のどちらにしても結構です。
ギャンプスはグラウンドに落とし発振予防。

最後にヒーターで消費する電流量についての解説です。

6C10 のヒーターで消費される電流は 0.6A ( 600mA )
12AX7 のヒーター消費電流は 0.3A ( 300mA)

都合の良いことに6C10一本の代わりに 12AX7を2本使っても
ヒーター消費電流は 0.6A( 600mA) で変化はなく、
トランスの負担は増えず全く問題はありません。
つまり電源トランスの交換は不要ということです。

この事実に反した記述がネットに転がっています。
注意してください。


参照:  6C10 と 12AX7 のスペックの一部切り取り。下図

6C10 pin layout and basic spec.
6C10 Specification 

12AX7 pin layout and a partial spec.
12AX7 specification


オーバーホールの方針

6C10 用ソケットを取り外し、12AX7 用のソケット2個を取り付けたら
オーバーホールを行います。

以下の3つの方針に基づいてオーバーホールをし、
回路を健全に戻し、故障の連鎖を断ち切ります。

a) 既に劣化した部品と高電圧により劣化しやすい部品の交換
b) 全てのハンダ付部は再ハンダを実施し、ハンダクラックを根絶
c) 配線材の絶縁強化を行い、劣化による漏電を防止

2. フェーズインバーターのオーバーホール

カーボン・コンポジット抵抗x 9
フィルムコンデンサー x4
アルミ電解コンデンサー x3
配線材 x3
交換しない部品の接点も含め全ての接点の再ハンダ
( 下図 JPEG 参照 )

3. バイアス回路のオーバーホール

 カーボン・コンポジット抵抗x 5
アルミ電解コンデンサー x1
 交換しない部品のも含め全ての接点の再ハンダ
( 下図 JPEG 参照 )
Before and after the overhauling
2. Phase Inverter circuit    3.Bias Circuit

4. Filter cap の交換

電源を担うフィルターキャップ( Filter capacitor) はボックス型の
アルミ電解コンデンサー Mallory 製が使われています。

幸いなことに、CE Manufacturing という会社が当時の Mallory と
同じ製造工程で同じコンデンサーを作ってくれています。

つまり寿命の長持ちする新品のコンデンサーに交換しつつ
音質を損ねることなく、ノイズ低減し、音圧を大きくし、
信頼性も向上できるということです。

このコンデンサーは少し高価(約7,000円)です。
加えて、
コテ先の大きい、温度調節可能な特別なハンダゴテを使い、
時間と手間が必要となる作業が必要です。

交換できない楽器店や、交換をためらう修理店があるようです。

私が過去に修理担当した固体はいづれも、
オリジナルコンデンサーが交換されておらず、
寿命が過ぎ、音圧が弱く、ノイズの多い、固体ばかりでした。


あとコンデンサーにハンダ付けされているデカップリング抵抗も
必ず交換します。オリジナルはカーボンコンポジットの1W 耐圧。
このカーボンコンポジット抵抗を
電源回路に使うことには、あまり意味はありません。
高電圧回路に使われていることによる発熱で劣化が進行します。
そのため、金属皮膜抵抗やセラミックコンポジション抵抗に
交換すると寿命が稼げると同時にノイズ発生を抑えられます。


before and and after replacing
フィルターキャップの交換

5. 電源コードの交換

電気安全の観点から交換します。

6.1 リバーブ回路のオーバーホール

カーボン・コンポジット抵抗x 1
フィルムコンデンサー x2
交換しない部品のも含め全ての接点の再ハンダ
リバーブトランス配線、真空管ソケット配線は
経年による熱ストレスでハンダ内部クラックが
起きやすく、入念にハンダ付けします。
before and after the replacement
5.電源コード交換    6.1リバーブ回路

6.2 Lead ドライブ回路

Super Champ の Lead Drive 信号は、
リバーブ・スプリングを揺らすための
リバーブ・トランスへの入力信号を、
プリアンプに戻して使います。

このアイデアは Boost 付きのシルバーフェースのプリンストンや
デラックスリバーブと同じ発想です。

電気ストレスにより劣化しやすい抵抗とコンデンサーを交換します。
抵抗 x1
フィルムコンデンサー x1

7.1 プリアンプの増幅回路のオーバーホール


カーボン・コンポジット抵抗 x5
アルミ電解コンデンサー x3

すこし大きめのアルミ電解コンデンサーはプリアンプの電源用の
フィルターキャップで、 4.7μF 450V 耐圧です。
この耐圧を450V より大きいものに交換することは問題ありません。
高い耐圧のアルミ電解コンデンサーを使うと壊れにくくなります。

しかし、値の4.7μF は必ずその値を守ってください。
フィルターキャップの値を大きくするとギター信号のダイナミクス、
迫力や色気が損なわれていきます。
実験して音の違いを比べてみることをお勧めします。

一方で
4.7μF で耐圧 450V のアルミ電解コンデンサーは市販で入手困難です。
そこでギャンプスは SOLEN のフィルムコンデンサー4.7μF 耐圧600V
を使っています。 音質は損なわず、信頼性向上します。

フィルムコンデンサーは容量が大きくなると容積が大きくなります。

アルミ電解コンデンサーが重宝されて使われるのは、小型の容積で
大容量のコンデンサーを作れるからです。

下の写真で 4.7μFの SOLEN フィルムコンデンサーの容積がとても
大きいことがわかると思います。
4.7μF という容量だからこそ、フィルムコンデンサーで代用できる
ギリギリのサイズということもできます。

フィルターキャップの全てをアルミ電解でなくフィルムに置き換え
ることができたら、音質は損なわずにアンプの信頼性を上げること
ができます。しかし、コンデンサーの大きさがバカでかくなり、
シャーシーに納まらなくなります。
そのため、いまだにアルミ電解が使われ続けているのです。
Before andf after the replacement
6.2 Lead Drive  7.1 Preamplifier

7.2 プリアンプのトーンスタック


トーンスタックとは、Treble, Bass, Middle, Volume の各つまみで
調節可能な信号を作る回路のことです。
Treble, Bass, Middle 用に各々フィルムコンデンサーが対応します。
カーボン・コンポジット抵抗x 2
フィルムコンデンサー x4
交換しない部品のも含め全ての接点の再ハンダ

8. 確認テスト

ここまでの作業で
◎ バリバリという不快なノイズは無くなりました
◎ ハムノイズも大幅に低減し、演奏しないときは静かになりました。

しかし、まだ問題が2つ見つかりました。作業を続けます。
before and after the replacement
Tone Stack のオーバーホールと確認テスト


9. パワー管のソケット交換

試奏テスト時に少し強めに弦をはじくと、音が揺れる。
トレモロほど揺れないものの、音がふらつくような感じです。
アンプ内部を総点検すると、パワー管のソケットピンのひとつ、
3番ピンが折れかかり、わずかな振動でフワフワ動いていました。

ソケットを交換し、音の揺れは無くなりました。
before and the after
9.チューブソケット交換


10.  パワーチューブの新品への交換


さらに試奏テストを続けると、高域の歪みの多さが気になります。
倍音が多いとも言えるものの、明らかに高域が歪みすぎです。
ディストーションやオーバードライブを常に使っていると、こうした
音の濁りに気づけないのかもしれません。
これで良しとしていたのかもしれません。

Fender アンプの持つ倍音豊かな本来のクリーン音は迫力があり、
クリーンなのに色気のある音のことを言います。

アンプに悪いところはないはずです。
唯一あるのはパワーチューブ 6V6GT が左右不揃いのものが刺さって
いるということだけ。

そこで現状の真空管のままバイアス計測してみました。
理想値 30mA のところ、片方が 35mA、もう片方が20mA です。
なんと左右で 15mA も電流値が異なる不揃いな特性でした。

新品の Electroharmonics の6V6GT を入れて計測すると
左右共に 30mA ぴったりとななります。

試奏してみるとチープな高域歪みは消え、暖かく迫力があり、
中域の色気を感じるサウンドが蘇りました。

before and after
10. パワーチューブの交換

ようやく完成しました。

音のよくなったアンプと共に交換したパーツを
オウナー様にお返ししました。
replaced parts are ruturned to the owner
11.アンプ以外の返送品

ギャンプスは過去に多くの Fender アンプのオーバーホールをしました。
最終試奏のときに素晴らしい出音が得られたときの喜びが原動力です。


#SuperChamp #6C10 #6C10Tube #アンプ修理

2017年11月25日土曜日

Fender Super Champ

Fender Super Champ のオーバーホールをしました。

このアンプの作業の途中で、心筋梗塞を発症しました。

入院・手術となり、ICU で過ごしているとき考えたことは

「もしもこのまま家に帰れなかったとしたら、分解されたままアンプクレードルに載せられているこのアンプ、どないなるのやろ。娘や家内そしてお客さまも組み立てられない。仮にキャビネットに取り付けられたとしても、修理してない部分があるので音は出ないし。どうしよう。」

無事に退院後、作業を継続し、10月末に納品しました。


大津市在住 Tさまのアンプです。

キャビネットの大きさはシングルアンプのチャンプと同じ。
持ち運びしやすい。

増幅回路はプリンストンリバーブと同じく6V6 x2本 のプッシュプル。
チャンプよりも音圧がある。
リバーブもついている。
とても使い勝手の良いアンプ。

故障の内容は

(1)音圧が足らない
(2) リバーブが鳴らない
(3)ブーストが効かない

という状態で当方に来ました。
Fender Super Reverb

小さく軽く、ライブに耐える十分な音圧。
そんな Super Champ にも弱点があります。

使われている真空管のタイプに問題ありです。
プリ管に使われている 6C10 という真空管。
6C10 真空管
6C10 は見慣れない太い形状をしています。
 ピンは 12本もあります。

プリ管と言えばピンは 9本で、中に増幅素子が2個入っています。

この 6C10 はピンが12本で、増幅素子が3 個入っています。

増幅素子の特性は 12AX7 と全く同じです。

つまり
 「 6C10 は12AX7 の 1.5本分の増幅素子が一本のガラス管の中に入った 12ピンの真空管である」と言えます。

この真空管は再生産されていません。

NOS の在庫は真空管屋さんのストックからは既に無くなったようです。どこを探しても見つかりません。

つまり、入手がとても困難な真空管となりました。

真空管は消耗品、いつかは壊れます。

ギターアンプに使う真空管のほとんどのタイプは現在も生産されていて入手可能なのに、6C10 だけは入手ができません。

6C10 が壊れた時点で、Super Champ を使い続けることは不可能なのです。
そこで……
Super Champ の真空管

【6C10 を 12AX7 に変更する MOD】Super Champ 専用の MOD

6C10 真空管の代わりに 12AX7真空管 2本でプリアンプの増幅回路を構成するような MOD を行えば、Super Champ をこのままずっと使い続けることが可能です。

増幅素子特性は 6C10 も 12AX7 も全く同じです。
プレート抵抗やカソード抵抗などの真空管動作特性を決定する要素は変更せずにそのまま使えます。6C10の12個のピンに配線されていた回路部品を 12AX7 2本に配線しなおします。

6C10 の ヒーター消費電流 600mA です。
12AX7 は 300mA です。12AX7 を2本使っても600mAです。
この MOD による電源トランスへの負担もありません。

当アンプの 6C10 は3個ある 増幅素子のうち一つが完全に壊れていました。
故障内容の (1) 音圧が足らない の原因の一つです。

まずは当アンプにその MOD を入れました。
6C10 を 12AX7 x2 に MOD

【リバーブが鳴らない問題の原因】

リバーブ・スプリングを揺らすリバーブ・ドライバー回路の真空管 12AT7 が下の写真です。本来は灰色の金属部分が白く変色しています。この真空管は壊れる直前であることを示します。

つまりこの 12AT7 を著しく劣化させて金属を白くするような重大な不具合がリバーブ・ドライバー回路にの中にあるということです。
リバーブドライバー真空管  12AT7
その不具合はリバーブドライバー回路のプレート抵抗でした。
39KΩ抵抗なのに抵抗値が無限大、つまりオープンの状態(内部断線しています)です。

この抵抗が断線していると
(2) リバーブは鳴らないし
(3) ブーストも効きません
リバーブ・ドライバー回路の抵抗
この抵抗の端子部分にハンダの熱を加えたら、ものの見事に抵抗が真っ二つに切れました。


単にこの39KΩ抵抗が切れただけでなく、回路内の抵抗やコンデンサーは多かれ少なかれ劣化しています。39KΩ抵抗の片方には約400V の SG 電圧が繋がっています。この抵抗を新しくしたことで他の劣化している部品に高電圧がかかると、雪崩式に壊れていきます。
劣化している部品を残さずに交換して、この部品故障の雪崩を起こさないようにするのがオーバーホールです。

断線している 39KΩ抵抗
下の写真のようにリバーブ・ドライバー回路の部品をオーバーホールしました。
リバーブ・ドライバー回路のオーバーホール
続いてプリアンプ回路のオーバーホールをしました。
プリアンプのオーバーホール
フェーズインバーター回路のオーバーホールをしました。
オレンジドロップのコンデンサーも全て新しいものに交換しています。
フェーズインバーターのオーバーホール
バイアス回路のオーバーホールをしました。
アルミ電解コンデンサーは既に液漏れしていました。
バイアス電源の整流回路

試奏のときに大きなガリの出ていたリバーブ・ポットはクリーニングではとれないガリでした。新しいポットに交換しました。
リバーブ・ポット交換

最後に電源回路のメインのフィルターキャップ(ボックス型アルミ電解コンデンサー) とデカップリング抵抗をオーバーホールしました。
フィルターキャップのオーバー・ホール

壊れていた 12AT7 を新しくしました。
6C10 の代わりの 12AX7 x2本を追加挿入しました。
いづれも JJ(スロバキヤ) のプリ管を使用。
12AT7 真空管の交換と 12AX7真空管2本の追加

作業前のリアビューです。丸っこい 6C10が目をひきます。
アンプのリアビュー 作業前
作業後のリアビューです。
アンプのリアビュー 作業後

お客さまが我が家にお越しになり試奏をしていただきました。
不具合が治っていること、音が以前よりも良くなっていることを確認していただいたうえでお持ち帰りいただきました。

調子が悪くなる前よりもさらに良い音になったとおっしゃってくださいました。
Super Champ Front view