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2021年6月20日日曜日

Fender Super Champ 販売

Fender Super Champ 

70年代半ば、メサブギーの歪むアンプを意識し、ポール・リベラ が設計したアンプ。

キャビネットの大きさは Champ と同じ。

スピーカーは Champ の8インチよりも大きい10インチ径。

パワーアンプはChamp の 6V6GT 一本のシングル・エンデドではなく、 6V6GT 二本のプッシュプル。

回路構成は Princeton Reverb によく似ているもののコンデンサーの値が異なり 、Master Volume が追加され、スイッチ切り替えする Leadモードを搭載している 。

サウンドは Princeton Reverb よりも元気でやんちゃな感じ。

クリーンの状態で、Master を下げ Volume を上げるとクランチする。

リード・モードはよく歪むものの、耳に痛くない上品さもある。

Super Champ front view


Super Champ rear view

内部回路と直接繋がっていたスピーカーケーブルをフォンジャックタイプに変更。ノイズ低減のためにライン出力端子を削除
音圧の向上と使い勝手の向上を両立。( 下の写真 )
Super Champ rear left view

ノイズ低減のためフットスイッチ端子2個を削除。
接触不良防止のためにリバーブケーブルを新規交換。(下の写真)
Super Champ rear right view

金属プレートやネジは錆びもなく美しい。
トーレックスにも傷や汚れはない。
Super Champ top right view

Super Champ top left

グリルクロスは汚れやほつれがなく、クリーニングすると美しく光沢。
Super Champ front grill

コントロールパネルは傷やベントは無い。
Super Champ control panel, left side

Super Champ control panel center

Super Champ control panel right side

サイドのトーレックスも美しい。
Super Champ left side view

Super Champ right view

この固体はトーレックスの破れもなく、グリルクロスもきれい。
金具の錆びなくきれい。前オウナーさまの保管状況が良かった。

実施したオーバーホールと MOD の内容

6C10 真空管を 12AX7真空管 2本 に置き換え

Super Champ で使われている真空管の種類は以下の4種類
 12AX7、12AT7、6C10、6V6GT 
Picture of 12AX7 tube and 6C10 tube
6C10真空管は、ガラス管の中に3個の増幅素子が入っている、めずらしい真空管。ピンは12本あり、形状も丸々とした太いガラス管が印象的なプリ管である。
(通常プリ管というと増幅素子が2個入った9ピンが主流である)
6C10 は、ヴィンテージ真空管を扱うお店でさえも売り切れている。
SOVTEK や Electro Harmonics 等のメーカーでも生産はされていない。
GAMPS にも在庫は中古管がたった1本残っているだけである。

真空管は昔の電球と同じくフィラメントが内部にあり、電気を熱に変えて光っている。使えば使うほど劣化する。将来必ず交換する日がやってくる。在庫も無く、生産もされていない 6C10 のままでアンプを使い続けるのには無理がある。

ここで朗報がひとつ。プリ管の12AX7は現行メーカーも生産を続けている。
しかも、 増幅素子の増幅率が6C10と同じ100である。
違いはガラス管の中に増幅素子が2個しか入っていないことである。
comparison chart of 12AX7 and 6C10

ヒーター消費電流は 6C10 が600mA、
12AX7 はその半分の300mAである。
つまり、6C10 一本の代わりに 12AX7 二本を使っても、全く問題無し。
消費電流は 600mA で変わらず。増幅素子の数は一個増えて4個になる。
余った一個の増幅素子はノイズの出ないようにキルしておけばよい。 

6C10 用の12ピンソケットを取り除き、
リバーブ・トランスの向きを変更し、
空いたスペースに12AX7 用の9ピンソケットを2個取り付け、
ソケットと回路の配線をやり直せば良い。
Super Champ digging a hole for 12AX7 to replace with 6C10

内部回路のオーバーホールとレストア

Super Champ  original circuit parts and wiring
作業前のオリジナルの回路 コンデンサーや抵抗は劣化が進み変色している

Super champ removed parts
オーバーホールとレストアのために取り外した部品
新しい部品に交換することにより
 ① 素晴らしいサウンドを取り戻すことができる
 ② 配線方法と部品配置を調整することでノイズを極限まで減らせる
 ③ これから先、軽いメンテだけで故障知らずでの信頼性を得られる

Super Champ after overhauling and restoring
オーバーホールとレストア実施後の回路

スピーカーケーブル

GAMPS ( ギャンプス ) では、もはやこれが定番のスピーカーケーブル。
WEそのもの、もしくは WE復刻版のスピーカーケーブル線材を2本使い、適正な撚りを施し、感電防止のためのプラスチック外被のジャックと3M製ファストン端子でスピーカーケーブルを製作した。
GAMPS original speaker cable

真空管の選定

真空管は全て新品にし、信頼性を高めておく。
GAMPS では、全ての真空管を同じメーカーの同じ型番に統一することはほとんど無く、適材適所に色々なメーカーの色々なタイプを使っている。
但しパワー管だけは必ずマッチドペアでないといけない。
all new tube installed

パワーチューブは Electro Harmonics の 6V6GTのマッチドペア 

プリチューブは写真右から
 V1(トーン・シェイピング) : Tungsol Reissue 製 12AX7
 V2( リバーブ・ドライバ)   : JJ 製 ECC81 ( 12AT7)
 V3( リバーブ・リカバリ)   : JJ 製 ECC83S ( 12AX7 低ノイズ管)
 V4( フェーズ・インバータ): JJ 製 ECC83MG ( 12AX7 Mid Gain管)

スピーカーの選定

搭載する10インチスピーカーを2つの候補から選ぶことにした。
ひとつは JENSEN JCH10/70 Made in Italy で 12年前にストックしておいた。試奏すると中低域が豊かでいながら艶と張りのある音がした。イタリア製Jensen のセラミックマグネットを使ったいわゆるよく出会うFender らしい音がした。
Lead チャンネルの音は低域が前に出る分、少しくもった感じがした。
Jensen JCH10/70 tested

もうひとつは Fender の交換用ブルーアルニコの036457。
これはEminence の Legend 1028K と同等品である。
高域がたくさん出て、元気な音。鈴なりが多く、ストラトで弾くとトーンコントロールを絞り気味にしても使える音が出た。
Lead チャンネルの音も明るく元気な音である。

Lead チャンネルにも相性が良いことから、036457 に決定した。
Fender 036457 speaker tested


今回販売するSuper Champの特徴

オリジナルの電源トランスは日本向け100V 仕様が付いている。
オリジナルの出力トランスもまだまだ現役で使える。
小柄であるにも関わらずとても大きな音圧と迫力が得られるのが特徴。
キャビネット全体の痛みの少なさ、錆びの少なさも含め、この固体を手にできる人はとてもラッキーだと思います。
100V PT is originally installed

3p power code
新しい3P電源ケーブル 真ん中のグラウンド端子は安全上折ってはいけない

セッティング例

① クリーン
Clean setting
クリーン時はMaster大きめ、Volume絞り気味にする

②クランチ
Crunch setting
Volumeを上げていくとクランチしだす。音のが大きすぎる場合 Masterを絞る

③ Lead mode 1
Lead mode
Volume ノブをプルすると Lead Mode 。右から2番目の Level が機能する

④ Lead Mode 2
Lead Mode 2
Leadモードの歪みは Volume, Level, Master のツマミで色々変化する

ギャンプス在庫の ヴィンテージ Fender Super Champ の販売

今回の Super Champ のお値段は \ SOLD  円です。
完成するやいなや、関東平野方面に旅立ってしまいました。

「完成してしばらくの間は手元に置き、自分の楽しみで弾きたかった」
「色々なところに持っていって、ああでもない、こうでもないと話のネタにしたかった」というのが本音。色々な音が出せて遊べるアンプである上にノイズ・レベルは極小に仕上がった。

しかし、長い間アンプ置き場で手つかずで眠らせていたのも事実。
可愛がってもらえるお客さまがいらっしゃるのであれば、リーズナブルな値段設定で、早くもらわれることで、このうっとおしいコロナ禍に何らかのお役に立てればと思う次第です。


追伸: 
以前から宣言しておりました通り、Super Champ のオーバーホール・レストアと MOD の仕事はこれにて打ち止め終了です。手間と時間かかりすぎて、やってらんないのです。

では、早速次の仕事に取り掛かります。
GAMPS ( ギャンプス ) オリジナルアンプ 2510 かな ? 3512かな?
Fender Vibro Champ を PP アンプにMOD した ChamPrin かな?
それとも……

2017年12月11日月曜日

Fender Princeton amp 1966 のオーバーホール

1964年製の Fender Princeton (プリンストン) アンプのオーバーホール

「音圧が小さい、チャンプと変わらない」という症状で当方に来ました。
東京の F さま所有のアンプ。

先の Super Champ を仕上げた後、こちらの作業をしました。

来年作業予定だったオーバーホールのご予約は、当方の体調管理のため全てキャンセルさせていただきました。

当アンプは今年度の最後のアンプです。

Princeton '64 Front View

Princeton '64 Rear view

回路は下の写真のとおり。
過去にアルミ電解コンデンサーだけが交換され、抵抗やフィルムコンデンサーは手つかずのまま。
回路の状態
バイアス回路の抵抗は交換されています。
しかし、オリジナルとは程遠い抵抗値に変更されていて、バイアス電圧をスペックよりも深くしてあります。
適正値 -34V ~ -37V のところ、実際は-43V と深すぎる値にしてありました。
バイアス電圧の整流回路

フィルターキャップも交換され、抵抗も過去に交換されていました。
交換時にハンダの熱を加えすぎたらしく、端子がグラグラしており、機能に不安があります。
フィルターキャップ
交換されていない抵抗は、すべて劣化しています。
抵抗値が大きくなり、オフスペック状態です。
( スペックでは抵抗値の誤差は+10% までが許容範囲)

このことが音圧の足らないことの原因のひとつです。

220KΩ抵抗は 250KΩと 13% も大きい
220KΩ抵抗
100KΩは 121.9KΩで+ 21.9%と大幅に大きい値なっています。100KΩは高電圧に繋がっているため、劣化のスピードは速く、抵抗値の誤差はとても大きくなっています。
100KΩ抵抗

1500Ω抵抗は+11.6%です。 3V ほどの低電圧に繋がっているにも関わらず+11.6%とオフスペックになっています。使用されている全ての抵抗の寿命が来ていることの証です。

オーバーホール作業ではコンデンサーの交換だけでは不十分で、抵抗も交換する必要があるのです。
1500Ω抵抗

【1】ハンドル交換

アンプのハンドルが真ん中で切れかかっています。
ひび割れたハンドル
Fender アンプ用のスペアを使用して交換しました。
交換後
【2】電源コード交換と取り付けの安全性向上

金属シャーシーの穴とコードの被膜との間になんの緩衝剤もなく取り付けられています。
これは安全上問題があります。

コンセントの端子は過去に交換されています。ところがグラウンド付きの 3芯であるべきところ 2芯に改造されています。安全上問題があるのと、ノイズが多くなります。
問題のある電源コード
安全性の高い電源コードに交換。
電源コード用のリテイナーを使い、コードの被膜が直接シャーシー金属の穴に触れないように取り付けました。
電源コード交換後

【3】フィルターキャップの交換

 CE Manufacturing 製のアルミ電解コンデンサーに交換されていました。交換時にハンダの熱を加えすぎたらしく、端子がグラグラしているため交換します。
過去に交換されたフィルターキャップ
 過去に交換されたものは耐圧 475V。それよりも耐圧が高い 525V 耐圧のコンデンサーを使い耐久性を向上しておきます。
交換した新しいフィルターキャップ

フィルターキャップの配線
配線材の耐圧も 1000V に高め、デカップリング抵抗も高性能のものに交換し、耐久性を向上
ベルデン 1000V 耐圧の配線材と高信頼型の抵抗に交換

【4】バイアス回路のオーバーホール

バイアスは固定抵抗の値でバイアスの深さが決まります。
深すぎる改造があったので、オーバーホールと同時に是正します。

バイアス回路

オーバーホールと同時に正規の値に戻してあります。
オーバーホールと同時に正規のバイアス値に戻しました

【5】フェーズインバーターとトレモロ
フェーズインバーターとトレモロ回路
抵抗とコンデンサーをオーバーホールしました。
トレモロのスピードを遅くするときの速度を従来よりも遅くして、使い勝手の向上をしておきます。
コンデンサーと抵抗をオーバーホール

【6】プリアンプのオーバーホール
プリアンプ回路
Bass のコントロールにつながるコンデンサー .1 μF は劣化の状態が最も少なく、唯一残しました。
それ以外のコンデンサーと抵抗はオーバーホールしました。
プリアンプのオーバーホール後

【5】グラウンド母線の敷設とシールド・ケーブルによるノイズ低減対策

当アンプは試奏の段階でハムノイズが大きく出ていました。

グラウンドの強化とハムノイズに弱い配線のシールドを行いました。
対策前
下の写真の上部に見える銅の平棒がグラウンド母線
V1 真空管のソケットに繋がる赤色のシールドケーブルがノイズに弱い配線です。
対策後

【6】パイロット・ランプ機構の交換
パイロットランプが点いたり点かなかったりします。
パイロットランプ部品
パイロットランプを点灯するための部品が錆びて接触不良を起こしています。
ハ゜イロットランプ構成部品を分解、錆びてボロボロ

右側が新しいパイロットランプ機構部品
新しく交換しました。
交換済


【7】真空管リテイナーの取り付け

当アンプの GT 管のソケットにはリテイナーが付いておらず、通電中に真空管がソケットから抜けおちる危険性があります。

整流管とパワー管のソケット

ソケットの端子のクリーニングを行い、真空管端子とソケットとの接触を良好にした上で、
板バネ式のリテイナーを取り付けました。
板バネ式のリテイナーを装着

真空管のベース部分の黒いプラスチック部分を挟み込み、真空管が容易に抜け落ちないようにします。
真空管のベースをしっかりと保持

【8】バイアス電流の確認

当アンプのバイアス方式は Fixed Bias です。
バイアス値はデラリバのようにポットで決定するのではなく、固定抵抗により決定されます。
作業【4】バイアス回路のオーバーホールでこの固定抵抗の値を正規の値に戻してあります。
実際にバイアス電流を計測し、目で見て、バイアス電圧が設計通り正しく出ているかを確認しました。

バイアス電流値の確認

【9】サウンド・テスト

シャーシーをキャビネットに仮留めしてテストを行いました。

音圧が小さいという問題は解決しました。
Sound Test

いつもの Fender の音よりわずかに 中・低域の伸びが少ない感じがします。
Mesa Boogie のスピーカーと音質を比較してみました。
外部スピーカーの音と内臓スピーカーの音を比較

このアンプに付いている Warehouse というスピーカーの耐圧はなんと 75W もあります。
プリンストンの出力は 15W ほどなのでスピーカー耐圧はおおきくても 35W ぐらいまでにとどめる必要があります。

75W と耐圧が大きくなるとコーン紙の厚みも耐久性のあるものに変わり、コーンの動きも必然的に鈍くなり、音圧や感度の観点ではマイナスとなります。このスピーカーはツインリバーブ に付けると丁度良い耐圧のものです。(参考: ツインリバーブはスピーカー2個使いで 100W 出力。スピーカー1個当たりの耐圧は 50W 以上となります)

そうはいってもスピーカー交換はお客様がご自分でなされたことで、当方が勝手に変えるわけにはいきません。
現在のスピーカーとスピーカーケーブル Belden 9497

ふと気づくと、このアンプのスピーカーケーブルは Belden 9497 が付いています。
過去に行った実験によると 9497 は「中低域が締まる」傾向が出ます。これは低域が出すぎるスピーカーに使うと「締まって良くなる」のです。しかし、いまいち音圧が上がらないスピーカーに使うと、中低域が薄くなってしまうという短所でもあります。

そこで WE 復刻版ケーブルと 9497 を交互につないで音質の差を聞き分けてみました。
やはりWE 復刻版の中低域の暖かさに軍配が上がりました。
ベルデンと WE 復刻版で音を比較

WE 復刻版のケーブルに変更しました。
WE 復刻版に交換

完成し、東京へ返送しました。
完成

【お知らせ】
当オーバーホールをもちまして、「お客さまのアンプをお預かりする」形態の修理や MOD は一旦終了させていただきます。

以後しばらくの間、
・ギャンプスのオリジナルアンプの設計・製作・販売と、
・ヴィンテージ・ギター・アンプ中古販売に、
絞らせていただきます。