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2017年11月25日土曜日

Fender Super Champ

Fender Super Champ のオーバーホールをしました。

このアンプの作業の途中で、心筋梗塞を発症しました。

入院・手術となり、ICU で過ごしているとき考えたことは

「もしもこのまま家に帰れなかったとしたら、分解されたままアンプクレードルに載せられているこのアンプ、どないなるのやろ。娘や家内そしてお客さまも組み立てられない。仮にキャビネットに取り付けられたとしても、修理してない部分があるので音は出ないし。どうしよう。」

無事に退院後、作業を継続し、10月末に納品しました。


大津市在住 Tさまのアンプです。

キャビネットの大きさはシングルアンプのチャンプと同じ。
持ち運びしやすい。

増幅回路はプリンストンリバーブと同じく6V6 x2本 のプッシュプル。
チャンプよりも音圧がある。
リバーブもついている。
とても使い勝手の良いアンプ。

故障の内容は

(1)音圧が足らない
(2) リバーブが鳴らない
(3)ブーストが効かない

という状態で当方に来ました。
Fender Super Reverb

小さく軽く、ライブに耐える十分な音圧。
そんな Super Champ にも弱点があります。

使われている真空管のタイプに問題ありです。
プリ管に使われている 6C10 という真空管。
6C10 真空管
6C10 は見慣れない太い形状をしています。
 ピンは 12本もあります。

プリ管と言えばピンは 9本で、中に増幅素子が2個入っています。

この 6C10 はピンが12本で、増幅素子が3 個入っています。

増幅素子の特性は 12AX7 と全く同じです。

つまり
 「 6C10 は12AX7 の 1.5本分の増幅素子が一本のガラス管の中に入った 12ピンの真空管である」と言えます。

この真空管は再生産されていません。

NOS の在庫は真空管屋さんのストックからは既に無くなったようです。どこを探しても見つかりません。

つまり、入手がとても困難な真空管となりました

真空管は消耗品、いつかは壊れます。

ギターアンプに使う真空管のほとんどのタイプは現在も生産されていて入手可能なのに、6C10 だけは入手ができません。

6C10 が壊れた時点で、Super Champ を使い続けることは不可能なのです。
そこで……
Super Champ の真空管

【6C10 を 12AX7 に変更する MOD】Super Champ 専用の MOD

6C10 真空管の代わりに 12AX7真空管 2本でプリアンプの増幅回路を構成するような MOD を行えば、Super Champ をこのままずっと使い続けることが可能です。

増幅素子特性は 6C10 も 12AX7 も全く同じです。
プレート抵抗やカソード抵抗などの真空管動作特性を決定する要素は変更せずにそのまま使えます。6C10の12個のピンに配線されていた回路部品を 12AX7 2本に配線しなおします。

6C10 の ヒーター消費電流 600mA です。
12AX7 は 300mA です。12AX7 を2本使っても600mAです。
この MOD による電源トランスへの負担もありません。

当アンプの 6C10 は3個ある 増幅素子のうち一つが完全に壊れていました。
故障内容の (1) 音圧が足らない の原因の一つです。

まずは当アンプにその MOD を入れました。
6C10 を 12AX7 x2 に MOD

【リバーブが鳴らない問題の原因】

リバーブ・スプリングを揺らすリバーブ・ドライバー回路の真空管 12AT7 が下の写真です。本来は灰色の金属部分が白く変色しています。この真空管は壊れる直前であることを示します。

つまりこの 12AT7 を著しく劣化させて金属を白くするような重大な不具合がリバーブ・ドライバー回路にの中にあるということです。
リバーブドライバー真空管  12AT7
その不具合はリバーブドライバー回路のプレート抵抗でした。
39KΩ抵抗なのに抵抗値が無限大、つまりオープンの状態(内部断線しています)です。

この抵抗が断線していると
(2) リバーブは鳴らないし
(3) ブーストも効きません
リバーブ・ドライバー回路の抵抗
この抵抗の端子部分にハンダの熱を加えたら、ものの見事に抵抗が真っ二つに切れました。


単にこの39KΩ抵抗が切れただけでなく、回路内の抵抗やコンデンサーは多かれ少なかれ劣化しています。39KΩ抵抗の片方には約400V の SG 電圧が繋がっています。この抵抗を新しくしたことで他の劣化している部品に高電圧がかかると、雪崩式に壊れていきます。
劣化している部品を残さずに交換して、この部品故障の雪崩を起こさないようにするのがオーバーホールです。

断線している 39KΩ抵抗
下の写真のようにリバーブ・ドライバー回路の部品をオーバーホールしました。
リバーブ・ドライバー回路のオーバーホール
続いてプリアンプ回路のオーバーホールをしました。
プリアンプのオーバーホール
フェーズインバーター回路のオーバーホールをしました。
オレンジドロップのコンデンサーも全て新しいものに交換しています。
フェーズインバーターのオーバーホール
バイアス回路のオーバーホールをしました。
アルミ電解コンデンサーは既に液漏れしていました。
バイアス電源の整流回路

試奏のときに大きなガリの出ていたリバーブ・ポットはクリーニングではとれないガリでした。新しいポットに交換しました。
リバーブ・ポット交換

最後に電源回路のメインのフィルターキャップ(ボックス型アルミ電解コンデンサー) とデカップリング抵抗をオーバーホールしました。
フィルターキャップのオーバー・ホール

壊れていた 12AT7 を新しくしました。
6C10 の代わりの 12AX7 x2本を追加挿入しました。
いづれも JJ(スロバキヤ) のプリ管を使用。
12AT7 真空管の交換と 12AX7真空管2本の追加

作業前のリアビューです。丸っこい 6C10が目をひきます。
アンプのリアビュー 作業前
作業後のリアビューです。
アンプのリアビュー 作業後

お客さまが我が家にお越しになり試奏をしていただきました。
不具合が治っていること、音が以前よりも良くなっていることを確認していただいたうえでお持ち帰りいただきました。

調子が悪くなる前よりもさらに良い音になったとおっしゃってくださいました。
Super Champ Front view