私の作るアンプが全ての人に合うなどとは思っていません。
「人それぞれ」と申します。
ギターをお弾きになる方も様々だと思います。
誰かが「真空管ギターアンプ最高」と言ったのをお聞きになり、
「自分も真空管アンプでないといけない」等とあせりを覚え、
真空管アンプを購入なさると、実は後で後悔なさるかもしれません。
今回は、ご自分用のギターアンプを購入なさりたいとお考えの方に、
こんな考えもありますよという意味を込めてブログを記述します。
【ケース 1】
ギターの音作りはエフェクターボードで完成しており、
会場で準備される異なったアンプに十分対応できる。
しかもその音に満足なさっているお方には、
過去に店主が使用していたエフェクターボード |
ハンドワイアードの真空管ギターアンプは不要です。
真空管の交換など細かいことを気にせずに済む、
値段も手ごろなトランジスターアンプを購入なさるのが
経済的です。
もしもあなたのサウンドに真空管のニュアンスを
取り入れたいとお思われた場合は、
× 真空管の特性をシミュレートしたり、真空管を1個だけ内包した
エフェクターではご不満が残るでしょう。
△ かといってハンドワイアードの真空管アンプは目的のためには高すぎます。
〇 ここは基板(PCB) 配線の真空管アンプなど安い真空管アンプを
お買い求めになると目的は達成されます。
真空管のニュアンスがほしいだけなのですから。
私も過去に写真のようなエフェクターボードを持っていました。
そのときの経験から上記のように感じます。
【ケース 2】
ギターのボリュームは常に10(フルテン) が心地よく感じ、
ボリュームを絞ったときの音で演奏したこともないし、
するつもりも無い。というお方、
ハンドワイアードの真空管ギターアンプは不要です。
ハンドワイアードの真空管アンプを演奏する場合、
ギターのボリュームとトーンの目盛りの位置によって微妙に
ニュアンスの異なるサウンドを使い分けて演奏することが
できます。
ギター側のボリュームをしぼっても「使える音」が出せます。
つまりそれがハンドワイアード真空管アンプの醍醐味でもあり、
あなたの表現力を使いこなすチャンスとも言えます。
その使い方をしないのであれば、ハンドワイアードは高すぎです。
演奏中にギターのボリュームポットやトーンポットにしょっちゅう触れてニュアンスを調整するという作業が増えます。ギターのボリュームはフルテンに限るという人には不向きです。
ケース1と同じく、トランジスターアンプもしくは
基板回路をつかうことにより大幅なコストダウンをした
安価な真空管アンプで十分です。
基板を使い大幅なコストダウンで安価なオールチューブギターアンプ |
【ケース3】
何十年も前、ステージに備え付けの真空管アンプで
演奏したときの音と弾き心地が頭から離れない。
現行のアンプを買ったり試奏したりしてみるが、
なんか違う。変に高域が耳についたり、
ギターのピッキングがしっくりしない。
厚みの少ない薄っぺらな音に感じてしまう。
というお方、ハンドワイアードの真空管アンプがお勧めです。
昔、膳所公園や浜大津で開催されたライブのステージに
立たせてもらった経験があります。
当時は自分のアンプは持っておらず、会場のアンプにシールド
直でギターをつなぎました。
そのとき使わせてもらった、アンプの音を体が覚えています。
当時のアンプはみなハンドワイアードの真空管アンプでした。
エフェクター無しでアンプにシールド直でつないだ
私の Greco のテレキャスター(1975年当時、新品で12,800円) で
十分使える音が出せました。
Handwired Tube Amplifier, Fender Bassman 50 |
後に、就職し、自分でアンプを購入できるようになりました。
しかし、その音に大いに違和感を覚えました。
れっきとした Fender であり Marshall であり、MesaBoogie なのに
「あの時の音」とは、ほど遠いのです。
中を開けてシャーシーの中の回路を覗いてみると、なんと基板が
使われています。私の仕事であるコンピューターハードウェアの
回路と同じテクノロジーが使われています。
音楽を通す回路に、
デジタル信号を安定して運べる代わりにアナログ信号を削り、捨ててしまうテクノロジーを使うことに違和感を覚えました。実はこれが私がアンプの仕事をしようと思ったきっかけなんです。
Amplifiers of printed circuit board. Exception is only a bassman |
とても高価な下の写真のプリアンプとパワーアンプもブリントサーキット(基板回路)です。
ハンドワイアードと明らかに異なるサウンドしか出せません。
MesaBoogie Quad Pre, Fyfty-Fifty power amp and Relay Switcher |
現行アンプはたとえ「オールチューブ」と宣伝していても、
配線は基板 ( PCB、プリントサーキット) のものが主流です。
例: Fender の デラックスリバーブ・リイシュー等
この基板の音の欠点が「変な高域」であったり、中域が弱く「ピッキング
・ニュアンスが出しにくい」であったり、「厚みの無い薄っぺらい音」と感じる差の部分
です。
写真: 基板配線されたデラックスリバーブ・リイシュー
Fender Deluxe Reverb 65 reissue, PCB circuit |
写真: 基板を取り除きハンドワイアード化したデラックスリバーブ
音は分厚くなり、中域が心地よく、変な高域はなくなり、ピッキングのニュアンスも出しやすくなります。
Hand wired modified Deluxe Reverb RI |
【ケース4】
たとえどんなアンプでも必ずリバーブはオンにする。
リバーブの付いていないアンプであればエフェクターの
コーラス、ディレイ、リバーブのとれかをつないでいないと
なんか上手く演奏できない。
エフェクト無しで演奏するとなんとなく裸になったような恥ずかしさを覚える。
そんな人は一度ハンドワイアードのアンプをリバーブ無しで弾いてみると
世界が広がるかもしれません。
しかし、あくまで慎重に買う前に試してから買うか買わないかを決めてください。
「世界が広がるかもしれない」のであって必ずそうとは限りません。
言い方を変えますと、
プリント基板配線のアンプを弾いたときに、「明らかにハンドワイアードのアンプとは異なる」と感じ、さらに「弾きにくさ」を感じることが無い場合、ハンドワイアードのアンプは不要だからです。
早まって買ってしまって、しまったという後悔をしてほしくないです。
Precisely hand wired circuit |
人が言ったことや書いたことを信用して真に受けるのではなく、それらはあくまで参考とし、最後は自分の耳と感性を信じ、自分が理解し、納得した上で音楽の道具を選んでください。
時として、
「バンドの先輩(もしくは尊敬なさってる人)がこう言ったから、こういうアンプが欲しい」とおっしゃるお方に出会うことがあります。
私のほうから少しばかりご要望とは異なる提案をしてみます。
そのお方は、かたくなに初めのご要望をお望みです。
理由は「先輩(もしくは尊敬している人)が言われたことが正しいから」です。
当然ながらご要望に寸分たがわないアンプをお買い求めになります。
しばらくして、「ここが良くない、ここをこうしたいがなんとかならないか」とご相談にこられます。実は一番初めに私がご提案した内容そのものにしてほしいということなんです。私自身も過去にギター本体についてそういうことを何度もやってきたものですから快く相談にのるように心がけています。
人の思い込みとは実にそんなもので、自分が実際に体験しないと、いくら人の意見を参考にしても実感がわかないものなのです。
以上ギターアンプ選びについて私の思うことでした。
良きギターライフを
GAMPS Browny G3 |
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