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2019年10月3日木曜日

修理受付停止のお知らせ

10月5日以降、修理受付を全て停止します。


 2年前に心筋梗塞を発症いたしました。
カテーテル手術を行い、その時点で大事を回避いたしました。
以来、毎日の投薬と定期的な通院は欠かせなくなり、
一抹の不安を抱えた状態で推移しております。
そのため、
お客さまの大切なギターアンプをお預かりし、作業半ばで万一のこと
が起きますと、正常な状態でお返しできなくなるというリスクがござ
います。

「アンプをお預かりする必要のある」「修理」の受付を停止し、
お客さまへのリスクを回避すべきという決断にいたりました。
誠に恐縮ながら、全てのアンプ修理を対象とします。

アンプをお預かりする必要の無い、
(1.)  オリジナルアンプの製作と、
(2.)  当方在庫の中古アンプの販売

に限って作業してまいります。

以上よろしくご了承くださいますと幸いです。


It's been tested by plugging 112 Mesa Boogie cabinet and Greco RS90 guitar
Great wit  small amplifier under testing with Greco RS90


2019年9月18日水曜日

Parts Layout Design ( アンプのレイアウト設計)


 Introduction


ギターアンプを製作するときに
「最も大切な作業」
それはレイアウト設計です。

レイアウトと言うと
「物を並べるだけ、配置するだけ」
と思われるかもしれません。

しかし、
レイアウト設計をいい加減にした結果、
アンプに問題が起きた場合、後で取り返しがつきません。
どのような後付けの対策をやっても、
いい音で鳴らない危険性があります。

つまり、レイアウトが悪いと、音に影響します。
×  安物コンデンサーのチープな音、
× ハンダ付不良が原因のノイズ等
と同じぐらいもしくはそれ以上に「音に悪い影響」を及ぼします。

部品の問題であれば、
後から部品交換すれば解決できます。
イモハンダならばハンダをやり直せば済みます。
しかし、

レイアウトの失敗は
トランスや真空管ソケットを一旦全部取り外し、
シャーシーの穴あけからやり直す必要があります。
場合によっては、シャーシーの問題ではなくなり、
スピーカーとシャーシーの位置関係の問題となり、
キャビネットの作り直しが必要となることもあります。


電気部品は電磁波を発生させる側
であると同時に、
他が発生させた電磁波の影響を受ける側
でもあります。

電磁波は様々な悪さをします。

不快なノイズを発生させたり、
ギター信号を削って音質低下させたり、
不調とまでは言えないものの、
好ましくない音、色気のない音にしてしまいます。
その原因はレイアウトが悪いことによる
アンプ内での電磁波の干渉のことがあります。

実際に何をレイアウト設計するのかを見ていきましょう。

今回は
1. トランス同士の向きと距離
2. 真空管同士の向きと距離
3.回路部品の並べ方
について述べ
続いてレイアウト設計した実例を載せます。


トランスの向きと隣のトランスとの距離


トランスは強力な電磁波を発生させます。
同時に他のトランスの電磁波の影響を受けやすい部品です。
シャーシーの上にしっかりと固定することに加え、

・どういう向きに載せるか、
・他のトランスとの距離をどのぐらいあけるか、

を考えてレイアウトする必要があります。


Fig1. トランスの向きと放射電磁波の強さの違い
Transformer's megnetic field strength of each direction

Fig 1. の矢印の色の説明
赤色 矢印 = 放出される磁力線が最も大きい方向を表します
黄色 矢印 = 放出される磁力線が中くらいの方向を表します
緑色 矢印 = 放出される磁力線が最も小さい方向を表します


トランスのレイアウト設計で必要なことは以下の4点です。

(a) トランス同士はなるべく距離を離して設置する
  しかし、あまり距離を稼げないときは以下を守る
(b) 出力トランスが電源トランスの影響を受けにくい向き
(c) 出力トランスがチョークトランスの影響を受けにくい向き
(d) チョークトランスが電源トランス に干渉されにくい向きにする

増幅された音を最終的にスピーカーに送りだす、出力トランスは
最も敏感で、干渉されやすいのです。



Two bad layout samples and two good samples
Fig2 メーカーのレイアウト実例



上記のFig2. で色々なアンプメーカーのレイアウトとその良し悪しを
実例として挙げています。参考にしてください。

〇 Fig2. では2種類のアンプのトランスレイアウトが良好です。

この2つのアンプに共通しているのは、
比較的小さい出力であると同時にシンプルな回路で、
十分に余裕のある容量のシャーシーに収めていることです。
出力が小さいとトランスの大きさも小さくなり、
相互干渉しにくくなります。


× Fig2. で好ましくないレイアウトのサンプルとなったアンプは、

60W や100W の大きい出力を 15W用のプリンストンの小型キャビ
に詰め込んでいます。
トランスの容積は増え、大きくなり、トランスとトランスの間隔
を空けられずくっつきすぎとなり、
トランス間の電磁結合が起こりやすい。
加えてブースト機能やラインアウト機能満載の複雑な回路を、
余裕の無い小型シャーシーに詰め込んでいます。
回路部品間の電磁結合も起きやすくなります。

どこも壊れていないのにやたらとノイズが多い原因は
このレイアウトのまずさです。

いくつもの寄生発振対策を施し、配線のシールド化を行って
ようやく、なんとか使えるアンプになります。
( ギャンプスで過去に修理したものにはこの対策が入れてあります)
しかし、この対策も対処療法でしかありません。
固体によっては対策の効かない物も存在します。



上図のアンプ以外では、

20W 以上の出力のコンボアンプのシャーシーの大きさと
部品のレイアウトとは Fender が優秀で良く考えて設計されています。
トランスのレイアウトは〇です。

Marshall について
トランスの配置は問題なくレイアウトは〇です。
でもやたらとノイズが大きい個体があるのは、回路の問題です。
グラウンド配線のまずさが主な原因です。

真空管のレイアウト


真空管と隣の真空管とは向きと距離に気を付ける必要があります。
真空管のレイアウトで気を付けるのは熱干渉です。
ヒーターでわざわざ発熱させて機能を発揮する真空管は、自身の発熱には強い。しかし、さらに隣の真空管の熱が加わると熱しすぎとなり、壊れやすくなります。

そのため特にパワー管は2本並べたときには距離に制限があります。
下図のように
6V6 で 45mm以上、6L6 で52mm 以上、EL34 で 64mm以上離して
設置する必要があります。


また真空管の向きにも基準があります。

Fender や Marshall のように垂直に立てたり、吊るす場合は、
Pin 4 と Pin 8 が隣同士で水平になるようにします。
隣同士が熱干渉しにくい位置関係にします。

VOX の Bass amp や MesaBoogie のラック式パワーアンプのように
横向き(地面と水平)に使う場合は Pin2 と Pin6 が隣同士で水平になる
ように設置します。横向きにする場合は、重力の力でたわみが生じ
いわゆる「熱だれ」で音質低下したり、内部ショートしたり
しやすくなります。内部の金属機構が下にたわまない向き
に設置するための向きです。

12AX7 や 12AT7 などのプリ管の向きについて。
こちらはパワー管ほど神経質にならなくても不具合は
出にくいものの、一応基準は存在します。

Pin 2 と Pin6が直線上に並ぶようにします。
この向きにする目的は熱干渉ではなく、電磁的な信号の結合、
つまり、寄生発振をさせないための位置関係です。


Power tube and pre tube has a rule ofthe orient of installation
真空管のレイアウト規定


抵抗やフィルムコンデンサーのレイアウト

抵抗やフィルムコンデンサーなどの回路素子の並べ方も
よく考えて工夫して部品配置することで、
ノイズや発振の少ない回路にすることができます。

下図にその基本の配置方法を示します。
図中、抵抗で書いてある「置き方の基本」は
フィルムコンデンサーでも同じに当てはまります。

基本は片方の部品からもう片方の部品に信号の飛び火がしない
ようにレイアウトすること。信号が空中で電磁的に結合しない
ようにして、寄生発振を防ぐことです。


余裕のある広い面積にバラバラと部品が置けるのであれば、
それに越したことはないです。しかし、回路の置き場所は
さまざまな制約を受けることがあります。

回路部品のレイアウトもブラックフェース期の Fender が実に
良い手本になります。
元々ラジオ技術者であったレオ・フェンダーが在籍したいた
頃の Fender の作っていたアンプのレイアウト設計はていねい
であり、理にかなっていたということです。
Fender は Reverb や Tremolo という機能があり、
回路的には Bruno や Velocetteよりも複雑で回路部品点数が多い
ものの回路部品のレイアウトは整然としていて問題はありません。
トランスと真空管のレイアウトも狭い空間を上手に利用して正しい位置に置かれています。
注意すべきは配線材の取り回しはブラックフェース期までが良好で、 シルバーフェース以降の機種はオーバーホールして全ての配線材を 交換してはじめて使い物になるサウンドが得られるという事実です。

 同じFender とはいえブースト回路やライン・アウト端子が追加されたモデルは 部品レイアウトに問題があります。何らかの工夫を施してやらないと ノイズの問題や発振の問題が出やすくなります。

プリント基板配線を使った現行 Fender のモデルはレイアウトの観点からは問題ありません。 出音に迫力が感じられなかったり、高域のピークが耳に痛く感じるのは 以下の理由によります。
1. 抵抗・コンデンサー等の回路部品の質
2. トランスそのものの質
3. 配線材の質
4. プリント基板の音響特性



Layout picture
回路部品の並べ方

実際のレイアウト設計


上記に述べたレイアウト設計の基本を守り、アンプを製作します。

まずは、どの程度の出力、どの程度の規模の回路構成かを決めます。
今回の例は
・出力60W
・Fender Bassman 50 規模のベースアンプ
・チャンネルはベースチャンネルひとつだけ

次に特別な要求事項を盛り込みます
・スピーカーはセパレートとしてヘッド部を製作する
・なるべく小型にして持ち運びや置き場所をとらないこと
・オーディオアンプ向けの小型シャーシーを流用する
・そのためFender のレイアウトの流用はできない、
 当アンプ独自のユニークなレイアウトにする


選定したシャーシーの寸法を元にレイアウト図を設計します。

a) トランスのレイアウトを決めるシャーシー上部レイアウト図

b) 回路部品を載せる回路ボードのレイアウト図

この2つのレイアウト図は実際に使うトランスや回路部品の実寸
で作図し、部品間で干渉しないか、取り付けに無理はないか、
レイアウト上に問題が無いかを検証します。
実はこの机上検証にかなりの時間がかかります。
過去の経験に基づき、問題の置きやすい部品・距離・向きを
何度も検証します。


問題があればレイアウト図を作図し直します。
スペースが小さすぎる場合には、シャーシーの選定から
やり直し、問題がなくなるまで試行錯誤してやり直します。

actual layout designing
レイアウト設計


レイアウト設計が完了してはじめてシャーシー穴開けをし、
部品を取り付けていきます。
レイアウト設計時に手を抜くと取り付け時に部品同士が干渉して
取り付けられなかったり、取り付けても操作できなかったりと、
思いもかけない問題にぶちあたります。

curtting of transformer and tube sockets
部品の実装

部品をあらかた付け終わると、次に
回路ボードのレイアウト図に基づいて配線をします。
真空管ソケットから回路ボードまでの配線材の長さやポットから
回路ボードまでの配線の長さも、長すぎると発振したりノイズを
拾ったりしてしまいます。回路ボード設計時点でそれも考慮した
レイアウトに設計にしておくことがとても重要です。

parts view
回路ボード上の電気部品のレイアウト設計 

以上の観点から、レイアウト設計をしてアンプ製作をすると、
かなり窮屈なシャーシーを使っていたとしても発振の無い、
ノイズの少ない良質な音のアンプに仕上げる事が可能となります。

Picture of upperside and bottom side of the Chassis
トランスのレイアウトと部品のレイアウト


スピーカーとシャーシーの相対位置関係

今回はスピーカーとアンプ部の位置関係は解説していません。

しかし、
スピーカーとアンプ部が一つのキャビネットに同居する
コンボタイプのアンプでは、
スピーカー、特にスピーカー端子とアンプとの距離・
位置がアンプのサウンドに大きく影響します。
正常だと信じていても、
音が濁っていたり、変な振動音が混ざっている場合があります。

スピーカーのボイスコイルとアンプのトランスとの間に
電磁干渉が起こっている場合、
音が濁ったり、振動音が出たりします。

「どうすれば防げるのか」については、
当ブログもしくはギャンプスのウェブサイトに掲載した
アンプのオーバーホールの記事に既に掲載してあります。
ご参考までに。

2019年8月28日水曜日

Fender Super Champ

Fender Super Champ のオーバーホールを行いました。

届いたアンプの状態を一言で表すと「ノイズの山」
×  電源を入れしばらくすると必ず「ジーッ」と大きなノイズ
×  少しでも外部からの振動が加わると衝撃ノイズが「バリバリッ」

当ブログの以前の記事をお読みになったお客さまのご要望で、
オーバーホールに加え、
「6C10 の真空管を 12AX7 に置き換える」MOD も同時適用しました。
Front view of the amplifier
Fender Super Champ フロントビュー

6C10 tube's socket is removed and two 9pin socket is installed
6C10 真空管を止めて 12AX7に変更 

Circuit view inside the chassis
パーツをグレードアップし、サウンド向上

 Super Champ の 6C10を 12AX7 に置き換える MODを
お客さまのアンプに実施するのは、今回でおしまい。
在庫の中古 Super Champ の販売が終了したら、
実施しません。実質、このフログのアンプが最後です。

MOD するには、既存の 6C10 真空管のソケット穴を埋め、
12AX7 用 ソケット穴を 2個設ける必要があります。
穴あけはシャーシーパンチというツールで鉄を押し切りします。
かなりの握力が必要で、高齢の身にはきつく、手の骨の痛みが
一週間は続くようになりました。
今より少し若かった頃には楽々行えていた作業。
自問自答してみると、
「やってられない」から「やりたくないと」いう結論になりました。
( 鉄では無く、アルミのシャーシーなら、穴あけはもっと楽ですよ )

 今後ギャンプスではお受けしない作業。
ならば、自分で作業なさりたいという人がおられるかも
しれませんね。そういうお方のため、なるべく詳しい資料を
掲載することにしました。
質問しなくても理解できるし、作業の自信があるというお方は、
ご参考になさってください。

但し、
異なるサイト、他のブログ、ツイッター、インスタグラム等への
無断掲載、転写、転載は固くお断りします。

以上よろしくお願いします。

では解説スタート

受け入れ検査の結果

 ×  過去に一度もアルミ電解コンデンサー交換がされていません。
      ⇒ ノイズ問題が起こって当然です、オーバーホール必要

×  パワーチューブは過去に交換されています。しかし、
     ⇒ 不揃いな見た目の2本が使われている
      マッチドペアの新品に交換必要かも、これは後で判断

△  スピーカー端子のプラスとマイナスが逆に繋がれています。
  ⇒ おそらく過去に、よく理解してない誰かが、入れ替えた ?
      正しく繋ぎなおす。 スピーカーケーブルも作り直すかな ?
Sound test found Noise problem, Visual inspection found a lot.
T1. T2. Receiving Inspection

1. 6C10 真空管の代わりに二本の 12AX7を代用する  

6C10 用のソケットを取り去り、12AX7 用のソケット穴を2ヶ所作り
ソケットを付け、ソケットと回路の配線を実施します。

作業を言葉にするといとも簡単、上記の 2行で済みます。


その MOD が必要な理由は、、、
a)   6C10 真空管はどこのメーカーも再生産していない、
b)   6C10 の NOS も今では在庫切れで購入不可能

万一 6C10 が故障したら、他が故障していなくとも、
Super Champの使用継続が困難となる。

6C10 の代わりに12AX7 にしておけば、
いつまでもSuperChamp を使い続けることができるのです。

before and after
1. Modifocation of installing two 12AX7 instead of 6C10 tube

6C10 と 12AX7 の違い

6C10 は 中に 3個 の増幅素子を持っています。
またピンの数は 12ピン です。

12AX7 はガラス管の中に 2個 の増幅素子を持っています。
ピンの数は 9ピン です。

増幅素子の特性、増幅する度合やミューは
12AX7 と 6C10 では全く同じです。つまり、
6C10 を 12AX7 に置き換えても 6C10 の音質と同じ。

一般的なプリ管の増幅素子は 3極管です。
増幅素子ひとつにつき3端子 ( プレート、グリッド、カソード)です。
それに加えてヒーター用の端子が 2つもしくは 3つで構成されます。

6C10の 12ピンのうち
9本は増幅素子 x 3 個分の端子
2本はヒーター
1本は空き端子

12AX7 の9ピンのうち
6本は増幅素子 x 2 個分の端子
3本はヒーター

6C10 と 12AX7 とで端子配列は異なっています。
(下図参照)
この端子の整合性を頭の中で合わせて、回路部品と配線します。

12AX7 を2本使用すると、本来は3つで十分な増幅素子が4つあり、
ひとつ余ります。余った素子の端子は
a) 何もつながない
b) もしくは発振防止のため3本ともにグラウンドに落とす
のどちらにしても結構です。
ギャンプスはグラウンドに落とし発振予防。

最後にヒーターで消費する電流量についての解説です。

6C10 のヒーターで消費される電流は 0.6A ( 600mA )
12AX7 のヒーター消費電流は 0.3A ( 300mA)

都合の良いことに6C10一本の代わりに 12AX7を2本使っても
ヒーター消費電流は 0.6A( 600mA) で変化はなく、
トランスの負担は増えず全く問題はありません。
つまり電源トランスの交換は不要ということです。

この事実に反した記述がネットに転がっています。
注意してください。


参照:  6C10 と 12AX7 のスペックの一部切り取り。下図

6C10 pin layout and basic spec.
6C10 Specification 

12AX7 pin layout and a partial spec.
12AX7 specification


オーバーホールの方針

6C10 用ソケットを取り外し、12AX7 用のソケット2個を取り付けたら
オーバーホールを行います。

以下の3つの方針に基づいてオーバーホールをし、
回路を健全に戻し、故障の連鎖を断ち切ります。

a) 既に劣化した部品と高電圧により劣化しやすい部品の交換
b) 全てのハンダ付部は再ハンダを実施し、ハンダクラックを根絶
c) 配線材の絶縁強化を行い、劣化による漏電を防止

2. フェーズインバーターのオーバーホール

カーボン・コンポジット抵抗x 9
フィルムコンデンサー x4
アルミ電解コンデンサー x3
配線材 x3
交換しない部品の接点も含め全ての接点の再ハンダ
( 下図 JPEG 参照 )

3. バイアス回路のオーバーホール

 カーボン・コンポジット抵抗x 5
アルミ電解コンデンサー x1
 交換しない部品のも含め全ての接点の再ハンダ
( 下図 JPEG 参照 )
Before and after the overhauling
2. Phase Inverter circuit    3.Bias Circuit

4. Filter cap の交換

電源を担うフィルターキャップ( Filter capacitor) はボックス型の
アルミ電解コンデンサー Mallory 製が使われています。

幸いなことに、CE Manufacturing という会社が当時の Mallory と
同じ製造工程で同じコンデンサーを作ってくれています。

つまり寿命の長持ちする新品のコンデンサーに交換しつつ
音質を損ねることなく、ノイズ低減し、音圧を大きくし、
信頼性も向上できるということです。

このコンデンサーは少し高価(約7,000円)です。
加えて、
コテ先の大きい、温度調節可能な特別なハンダゴテを使い、
時間と手間が必要となる作業が必要です。

交換できない楽器店や、交換をためらう修理店があるようです。

私が過去に修理担当した固体はいづれも、
オリジナルコンデンサーが交換されておらず、
寿命が過ぎ、音圧が弱く、ノイズの多い、固体ばかりでした。


あとコンデンサーにハンダ付けされているデカップリング抵抗も
必ず交換します。オリジナルはカーボンコンポジットの1W 耐圧。
このカーボンコンポジット抵抗を
電源回路に使うことには、あまり意味はありません。
高電圧回路に使われていることによる発熱で劣化が進行します。
そのため、金属皮膜抵抗やセラミックコンポジション抵抗に
交換すると寿命が稼げると同時にノイズ発生を抑えられます。


before and and after replacing
フィルターキャップの交換

5. 電源コードの交換

電気安全の観点から交換します。

6.1 リバーブ回路のオーバーホール

カーボン・コンポジット抵抗x 1
フィルムコンデンサー x2
交換しない部品のも含め全ての接点の再ハンダ
リバーブトランス配線、真空管ソケット配線は
経年による熱ストレスでハンダ内部クラックが
起きやすく、入念にハンダ付けします。
before and after the replacement
5.電源コード交換    6.1リバーブ回路

6.2 Lead ドライブ回路

Super Champ の Lead Drive 信号は、
リバーブ・スプリングを揺らすための
リバーブ・トランスへの入力信号を、
プリアンプに戻して使います。

このアイデアは Boost 付きのシルバーフェースのプリンストンや
デラックスリバーブと同じ発想です。

電気ストレスにより劣化しやすい抵抗とコンデンサーを交換します。
抵抗 x1
フィルムコンデンサー x1

7.1 プリアンプの増幅回路のオーバーホール


カーボン・コンポジット抵抗 x5
アルミ電解コンデンサー x3

すこし大きめのアルミ電解コンデンサーはプリアンプの電源用の
フィルターキャップで、 4.7μF 450V 耐圧です。
この耐圧を450V より大きいものに交換することは問題ありません。
高い耐圧のアルミ電解コンデンサーを使うと壊れにくくなります。

しかし、値の4.7μF は必ずその値を守ってください。
フィルターキャップの値を大きくするとギター信号のダイナミクス、
迫力や色気が損なわれていきます。
実験して音の違いを比べてみることをお勧めします。

一方で
4.7μF で耐圧 450V のアルミ電解コンデンサーは市販で入手困難です。
そこでギャンプスは SOLEN のフィルムコンデンサー4.7μF 耐圧600V
を使っています。 音質は損なわず、信頼性向上します。

フィルムコンデンサーは容量が大きくなると容積が大きくなります。

アルミ電解コンデンサーが重宝されて使われるのは、小型の容積で
大容量のコンデンサーを作れるからです。

下の写真で 4.7μFの SOLEN フィルムコンデンサーの容積がとても
大きいことがわかると思います。
4.7μF という容量だからこそ、フィルムコンデンサーで代用できる
ギリギリのサイズということもできます。

フィルターキャップの全てをアルミ電解でなくフィルムに置き換え
ることができたら、音質は損なわずにアンプの信頼性を上げること
ができます。しかし、コンデンサーの大きさがバカでかくなり、
シャーシーに納まらなくなります。
そのため、いまだにアルミ電解が使われ続けているのです。
Before andf after the replacement
6.2 Lead Drive  7.1 Preamplifier

7.2 プリアンプのトーンスタック


トーンスタックとは、Treble, Bass, Middle, Volume の各つまみで
調節可能な信号を作る回路のことです。
Treble, Bass, Middle 用に各々フィルムコンデンサーが対応します。
カーボン・コンポジット抵抗x 2
フィルムコンデンサー x4
交換しない部品のも含め全ての接点の再ハンダ

8. 確認テスト

ここまでの作業で
◎ バリバリという不快なノイズは無くなりました
◎ ハムノイズも大幅に低減し、演奏しないときは静かになりました。

しかし、まだ問題が2つ見つかりました。作業を続けます。
before and after the replacement
Tone Stack のオーバーホールと確認テスト


9. パワー管のソケット交換

試奏テスト時に少し強めに弦をはじくと、音が揺れる。
トレモロほど揺れないものの、音がふらつくような感じです。
アンプ内部を総点検すると、パワー管のソケットピンのひとつ、
3番ピンが折れかかり、わずかな振動でフワフワ動いていました。

ソケットを交換し、音の揺れは無くなりました。
before and the after
9.チューブソケット交換


10.  パワーチューブの新品への交換


さらに試奏テストを続けると、高域の歪みの多さが気になります。
倍音が多いとも言えるものの、明らかに高域が歪みすぎです。
ディストーションやオーバードライブを常に使っていると、こうした
音の濁りに気づけないのかもしれません。
これで良しとしていたのかもしれません。

Fender アンプの持つ倍音豊かな本来のクリーン音は迫力があり、
クリーンなのに色気のある音のことを言います。

アンプに悪いところはないはずです。
唯一あるのはパワーチューブ 6V6GT が左右不揃いのものが刺さって
いるということだけ。

そこで現状の真空管のままバイアス計測してみました。
理想値 30mA のところ、片方が 35mA、もう片方が20mA です。
なんと左右で 15mA も電流値が異なる不揃いな特性でした。

新品の Electroharmonics の6V6GT を入れて計測すると
左右共に 30mA ぴったりとななります。

試奏してみるとチープな高域歪みは消え、暖かく迫力があり、
中域の色気を感じるサウンドが蘇りました。

before and after
10. パワーチューブの交換

ようやく完成しました。

音のよくなったアンプと共に交換したパーツを
オウナー様にお返ししました。
replaced parts are ruturned to the owner
11.アンプ以外の返送品

ギャンプスは過去に多くの Fender アンプのオーバーホールをしました。
最終試奏のときに素晴らしい出音が得られたときの喜びが原動力です。


#SuperChamp #6C10 #6C10Tube #アンプ修理

2019年8月22日木曜日

2019年8月以降の修理受付につきまして

ギターアンプの修理について

ギターアンプ修理は以下の対象アンプに限って、お受けいたします。
対象外のアンプはお引受けできません。悪しからずご了承ください。

修理対象アンプ

  ・ 過去にギャンプスでオーバーホールされたことのあるアンプ

対象となる故障

 ・ 真空管を交換しても治らない全ての故障


当店で過去にオーバーホールをしたアンプは、ハンダ付ジョイント部
や部品品質の信頼性が高く、故障しにくくなっています。またアンプ
毎にオーバーホールした時点でカルテを作成し保管しており、全ての
故障に迅速に対応できます。万一故障が発生した場合には複数の部品
が壊れる可能性は低く格安料金と短期間でお手元に返却可能です。


真空管交換を当方がお引受けするのは、お客さまのお金とお時間が
「もったいない」と考えています。お手持ちの予備の真空管で症状が
無くなるかどうかのご確認をぜひともお願いします。
真空管交換しても治らない場合には、ギャンプスにご相談ください。
特別のご事情で、真空管交換をギャンプスにご依頼なさりたい場合、
お客さまのご事情を十分に検討させていただきます。
真空管交換をお引受けするとなった場合、真空管の料金は
リーズナブルをころがけています。但し、お客さまが部品屋さんから
調達なさる金額よりは割高となります。予めご了承ください。
故障率の推移ギラフが風呂の湯舟の形に似ている
電気部品の故障率の推移
上図はあるゆる製品に共通している電気部品の故障率の推移を表した
象徴的な図で、故障率の推移グラフがお風呂の湯舟の形状に似ている
ためバスタブカーブと呼ばれます。
縦軸が故障率、横軸が時間です。

①時間値が少ないときに故障率は高く、初期故障といいます。
造られてすぐは部品の内部の歪みや、異物の存在により初期故障が
起きる確率が高い。

②ある程度、時間が経過すると故障する可能性は低くなります。
つまり、そこまで故障しなかった部品は初期故障の原因となる歪みや
異物混入は無かったということです。この安定期がしばらく続きます。

③そしてやがて10年以上経過すると、いわゆる寿命がやってきます。
故障率は高くなる。原因はいわゆる摩耗・劣化です。
電気部品は機械部品と異なり運動したり動きはしないものの、
電圧・電流という電気のストレスにさらされていて、そのストレスで
疲弊・衰弱していき、最期には寿命を迎えます。

寿命に至る時間が部品によって異ります。
トランスはなかなか壊れず20年、30年、もっと長く使っても壊れま
せん。
ところがアルミ電解コンデンサーは早いもので 8年、遅くとも10年
したら寿命を迎えます。