Fender Super Champ
70年代半ば、メサブギーの歪むアンプを意識し、ポール・リベラ が設計したアンプ。
キャビネットの大きさは Champ と同じ。
スピーカーは Champ の8インチよりも大きい10インチ径。
パワーアンプはChamp の 6V6GT 一本のシングル・エンデドではなく、 6V6GT 二本のプッシュプル。
回路構成は Princeton Reverb によく似ているもののコンデンサーの値が異なり 、Master Volume が追加され、スイッチ切り替えする Leadモードを搭載している 。
サウンドは Princeton Reverb よりも元気でやんちゃな感じ。
クリーンの状態で、Master を下げ Volume を上げるとクランチする。
リード・モードはよく歪むものの、耳に痛くない上品さもある。
内部回路と直接繋がっていたスピーカーケーブルをフォンジャックタイプに変更。ノイズ低減のためにライン出力端子を削除
音圧の向上と使い勝手の向上を両立。( 下の写真 )
パワーチューブは Electro Harmonics の 6V6GTのマッチドペア
オリジナルの電源トランスは日本向け100V 仕様が付いている。
②クランチ
トーレックスにも傷や汚れはない。
グリルクロスは汚れやほつれがなく、クリーニングすると美しく光沢。
コントロールパネルは傷やベントは無い。
サイドのトーレックスも美しい。
新しい部品に交換することにより
この固体はトーレックスの破れもなく、グリルクロスもきれい。
金具の錆びなくきれい。前オウナーさまの保管状況が良かった。
実施したオーバーホールと MOD の内容
6C10 真空管を 12AX7真空管 2本 に置き換え
Super Champ で使われている真空管の種類は以下の4種類
12AX7、12AT7、6C10、6V6GT
6C10真空管は、ガラス管の中に3個の増幅素子が入っている、めずらしい真空管。ピンは12本あり、形状も丸々とした太いガラス管が印象的なプリ管である。
(通常プリ管というと増幅素子が2個入った9ピンが主流である)
6C10 は、ヴィンテージ真空管を扱うお店でさえも売り切れている。
SOVTEK や Electro Harmonics 等のメーカーでも生産はされていない。
GAMPS にも在庫は中古管がたった1本残っているだけである。
真空管は昔の電球と同じくフィラメントが内部にあり、電気を熱に変えて光っている。使えば使うほど劣化する。将来必ず交換する日がやってくる。在庫も無く、生産もされていない 6C10 のままでアンプを使い続けるのには無理がある。
ここで朗報がひとつ。プリ管の12AX7は現行メーカーも生産を続けている。
しかも、 増幅素子の増幅率が6C10と同じ100である。
違いはガラス管の中に増幅素子が2個しか入っていないことである。
ヒーター消費電流は 6C10 が600mA、
12AX7 はその半分の300mAである。
つまり、6C10 一本の代わりに 12AX7 二本を使っても、全く問題無し。
消費電流は 600mA で変わらず。増幅素子の数は一個増えて4個になる。
余った一個の増幅素子はノイズの出ないようにキルしておけばよい。
6C10 用の12ピンソケットを取り除き、
リバーブ・トランスの向きを変更し、
空いたスペースに12AX7 用の9ピンソケットを2個取り付け、
ソケットと回路の配線をやり直せば良い。
内部回路のオーバーホールとレストア
オーバーホールとレストアのために取り外した部品 |
① 素晴らしいサウンドを取り戻すことができる
② 配線方法と部品配置を調整することでノイズを極限まで減らせる
③ これから先、軽いメンテだけで故障知らずでの信頼性を得られる
オーバーホールとレストア実施後の回路 |
スピーカーケーブル
GAMPS ( ギャンプス ) では、もはやこれが定番のスピーカーケーブル。
WEそのもの、もしくは WE復刻版のスピーカーケーブル線材を2本使い、適正な撚りを施し、感電防止のためのプラスチック外被のジャックと3M製ファストン端子でスピーカーケーブルを製作した。
真空管の選定
真空管は全て新品にし、信頼性を高めておく。
GAMPS では、全ての真空管を同じメーカーの同じ型番に統一することはほとんど無く、適材適所に色々なメーカーの色々なタイプを使っている。
但しパワー管だけは必ずマッチドペアでないといけない。
プリチューブは写真右から
V1(トーン・シェイピング) : Tungsol Reissue 製 12AX7
V2( リバーブ・ドライバ) : JJ 製 ECC81 ( 12AT7)
V3( リバーブ・リカバリ) : JJ 製 ECC83S ( 12AX7 低ノイズ管)
V4( フェーズ・インバータ): JJ 製 ECC83MG ( 12AX7 Mid Gain管)
スピーカーの選定
搭載する10インチスピーカーを2つの候補から選ぶことにした。
ひとつは JENSEN JCH10/70 Made in Italy で 12年前にストックしておいた。試奏すると中低域が豊かでいながら艶と張りのある音がした。イタリア製Jensen のセラミックマグネットを使ったいわゆるよく出会うFender らしい音がした。
Lead チャンネルの音は低域が前に出る分、少しくもった感じがした。
もうひとつは Fender の交換用ブルーアルニコの036457。
これはEminence の Legend 1028K と同等品である。
高域がたくさん出て、元気な音。鈴なりが多く、ストラトで弾くとトーンコントロールを絞り気味にしても使える音が出た。
Lead チャンネルの音も明るく元気な音である。
オリジナルの出力トランスもまだまだ現役で使える。
小柄であるにも関わらずとても大きな音圧と迫力が得られるのが特徴。
キャビネット全体の痛みの少なさ、錆びの少なさも含め、この固体を手にできる人はとてもラッキーだと思います。
新しい3P電源ケーブル 真ん中のグラウンド端子は安全上折ってはいけない |
セッティング例
① クリーンクリーン時はMaster大きめ、Volume絞り気味にする |
②クランチ
Volumeを上げていくとクランチしだす。音のが大きすぎる場合 Masterを絞る |
③ Lead mode 1
④ Lead Mode 2
Volume ノブをプルすると Lead Mode 。右から2番目の Level が機能する |
④ Lead Mode 2
Leadモードの歪みは Volume, Level, Master のツマミで色々変化する |
ギャンプス在庫の ヴィンテージ Fender Super Champ の販売
今回の Super Champ のお値段は \ SOLD 円です。完成するやいなや、関東平野方面に旅立ってしまいました。
「完成してしばらくの間は手元に置き、自分の楽しみで弾きたかった」
「色々なところに持っていって、ああでもない、こうでもないと話のネタにしたかった」というのが本音。色々な音が出せて遊べるアンプである上にノイズ・レベルは極小に仕上がった。
しかし、長い間アンプ置き場で手つかずで眠らせていたのも事実。
可愛がってもらえるお客さまがいらっしゃるのであれば、リーズナブルな値段設定で、早くもらわれることで、このうっとおしいコロナ禍に何らかのお役に立てればと思う次第です。
追伸:
以前から宣言しておりました通り、Super Champ のオーバーホール・レストアと MOD の仕事はこれにて打ち止め終了です。手間と時間かかりすぎて、やってらんないのです。
では、早速次の仕事に取り掛かります。
GAMPS ( ギャンプス ) オリジナルアンプ 2510 かな ? 3512かな?
Fender Vibro Champ を PP アンプにMOD した ChamPrin かな?
それとも……
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