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2016年11月10日木曜日

Princeton Reverb restoration Part 1.

【受け入れ検査】
2016年11月のご予約作業は愛知県 S 様ご所有の
シルバーフェース プリンストンリバーブ のオーバーホールです。
予想をはるかに上回る作業が必要のためオーバーホールよりも
レストアと言ったほうが正確です。

ご依頼の内容は
a) 中古で購入なさった後、リバーブが鳴らなくなり、
  修理に出されたところ、ヴィブラートが鳴らなくなり、
  リバーブもかかりが浅くなって帰ってきたそうです。
b) 音圧が小さい
  一生ものにしたくて購入したのに本来の実力が出ていません。
  信頼性を上げ、定期的な手入れをしてずっと愛用していきたい。
というものです。

シルバーフェースのフェースプレートは中古としては、とてもきれいな
部類です。
Fender Princeton Reverb front view
アンプの背面にもパイロットランプが付いています。
もちろんオリジナルには付いておらず、後付で付けられたものです。

Fender Princeton Reverb rear view
下の写真のように、パワーオンしてしばらくすると、光ります。
時間が経過すると音が途切れる症状がでています。
音が出ないとき、このランプも消えているそうです。

CT light
リアビューには、あと二つ不可思議な光景があります。
1. コンセントの電圧にあわせて切り替えるスイッチが付いています。
  95V, 115V, 127V, 185V, 220V と切り替えられます。
  形状・タイプも Fender のオリジナルのスイッチではありません。
2. 電源トランス。外観はオリジナルを装ってはいますが、違います

アンプのシャーシーを取り外し内部回路を見たらどういうことか判明しました。

Voltage selection switch and PT
アンプのシャーシーを外し下側から見た写真が下の写真
Bottom view of the chassis
電源トランス PT の刻印は WILLKASON 7087 です。
過去の修理で電源トランスが交換されています。
しかし、このWILLKASON をネット検索するとブラジルのサンパウロにある
オーディオ用アンプメーカーらしいことがわかりました。

Manufacture ID mark on top of the PT
PT の内側配線部を見ると、明らかにオーディオ用のPTです。
しかも、2次巻線のメイン電圧は 275V-0-275V  しかありません。

これは車に例えると、1500cc の普通車に軽四の660ccエンジンを載せた
ようなパワー不足となります。 致命的です。
wire side of the PT
シャーシーのサイドには過去に修理した人が書いたと思われるメモ書きが
あります。1990年の2月にPT が交換されたことがわかります。
memo written at past repair by changing the PT
下の回路図のように
Princeton Reverb は340V-0-340Vの2次電圧の電源トランスが必要です。
ブラックフェース、シルバーフェース、リイシュー共通してこの値です。

回路のオーバーホールと共に、電源トランス交換をしないとプリンストンの
本来の音圧と音色は取り戻せません。
Partial schematic of Fender Prinstone Reverb PT


パワーチューブのすぐ隣に過去に追加されたパイロットランプがあります。
トランスからの一本の配線がランプのホットにつながれ、ランプのコールド
はシャーシーに落とされています。
another pilot lamp on the chassis 
このランプの正体が判明しました。
電源トランス(PT) のセンタータップ(CT)につながれており、電源トランスの
電流の流れで光らせています。
センタータップは直接グラウンドにつながないとギター音質が荒れて、
きれいなクリーンにはなりません。
さらに、ただでさえ真空管の発する熱でシャーシー下側の温度が高い上に
ランプの発熱も加わり、トランス、真空管、コンデンサー部品の劣化を促進
してしまいます。

アイデアとしてはおもしろいものの、真空管ゲインをフルに使うギターアンプ
には無用の長物です。

Pilot Lamp is fed by CT of PT
下の写真は回路の全体です。
Circuit overview
元々付いているフィルターキャップはシャーシーの下側に伸びる筒型の
ボックス・アルミ電解コンデンサーです。これとは別に後付で赤色のアルミ
電解コンデンサーが継ぎ足されています。

オリジナルのコンデンサーが容量抜けを起こしたときに、本来であれば交換
するのが正しいところ、ずぼらをして後付けしたものと推測します。
オリジナルのマロリーの筒型コンデンサーは70年代のもので古く劣化して
いて交換が必要です。現在では CE Manufacturing が Fender ギターアンプ
のリプレースメント用に製造してくれています。

このコンデンサーの交換を躊躇する修理屋さんや楽器屋さんが多いのは、
交換用の CE Manufacturing 製のコンデンサーが高価なため、ならびに
交換のためのハンダ外しとハンダ付けに手間がかかるためでしょう。
ギャンプスでは常に在庫しており交換します。

Filter cap --- Original made by Mallory
added filter cap
回路部品の搭載されている回路ボードを見ていて、「あっまたか」と思わず
声を上げてしまいました。過去に大量に噴射された接点復活剤が凝固して
ボードの上で固まっています。

カメラのフラッシュをたいて撮影するとギラギラしている部分です。
接点復活剤の油が付着したボード
下の写真は電源スイッチを取り外したところです。油でべちょべちょに
なっています。
接点復活剤で汚され絶縁低下した電源スイッチ
電気回路は大雑把な表現をすると
「電気をとてもよく通す部分」と
「絶対に電気を通してはいけない部分」が存在し、
その両者のおかげで健康に作動します。
  ( この表現をすると、うちの家内でも理解することができました)

「絶対に電気をとおしてはいけない部分」は回路部品を搭載している黒色の
ボードであり、電源スイッチの黒いモールド(プラスチック)部分です。
絶縁体と呼びます。

接点復活剤はどんなものも電気を通しやすくする剤です。
それを絶縁体に付着させると絶縁低下を起こします。

絶対に電気を通さない性質が少しは電気を通す性質に変更されるのです。
そうすると発煙や漏電による感電という大きな問題を引き起こします。
そのような大きな問題になる前段階として、信号と信号が干渉して
音が小さくなったり、部品が故障したりします。

回路ボードをくまなく検査したところ、ボードをクリーニングするだけでは
本来の絶縁を取り戻せない深刻な状況でした。

このアンプは電源トランス交換に加え、
回路ボードの交換も必要ということが
受け入れ検査で判明しました。

以下 Part 2 に続く




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