オリジナル・アンプ Model 2510 Part-1
1. キャビネットの製作
新アンプは、キャビネットも自主製作です。
コロナ禍で外出を自粛、家に籠った事が幸いしました。
2510 Cabinet |
キャビネット製作時に考慮すべきポイント
キャビネットはスピーカーとアンプを取り付けるための箱です。
単なる箱でなく、以下のことが必要です。
a) 回路とスピーカーの距離や位置関係を適正にした構造。
キャビネットの構造(3次元的位置関係) が良くないと、
回路を載せ音を出すと発振やノイズに悩まされることがあります。
キャビネットを大きくするとゆったりと配置できます。
すると大きすぎて持ち運べない。
コンパクトでありつつスピーカー、トランス、シャーシー間の配置
に余裕を持たせられる構造を考えます。
b) 総重量15kg以上のアンプ部を安定に保持できること。
ぐらつきが出たりキャビネットがたわんだりすると、
スピーカー振動で共振し、耳障りなノイズとなります。
c) スピーカーを載せるバッフルボード自体は振動しにくいこと。
スピーカーを搭載する穴あきバッフルボードが振動しやすいと
スピーカーの振動エネルギーを吸収してしまい、音圧が下がります。
硬くて重くて厚みのある板が理想です。
理想通りにすると重すぎて持ち運べなくなってしまいます。
d) 持ち運べる事。
上記 a) b) c) を満足させる事だけ考えて作ると
大きくて重いキャビネットになり持ち運べなくなります。
キャビネット重量はなるべく軽くしたい、
そうすると a) b) c)が不満足となってしまう。
ノイズや共振の出ない良い音である事と
持ち運びできる重さと大きさである事の
両立をめざした調和をとるのがとても難しいのです。
「パイン材の一枚板が良い」とかの板材へのこだわりを耳にします。
ファルカタ材やバルサ材等の軽過ぎて振動しやすく、強度も無く割れやすい材は不向きです。それ以外の、ある程度の強度のある板材であれば、たとえパインでなくとも、たとえ一枚板ではなく合板であっても、しっかりとした構造で強度の出る組み立て方をすれば十分使えます。
板と板を直角に張り合わせることが製作の基本です。
釘を使って張り合わせると横方向の力に弱く変形することがあります。
ギャンプス(GAMPS) オリジナルアンプのキャビネットは全て
日本語で「通しアリ溝」英語では「Finger Joint( フィンガージョイント)」と呼ばれる方式で組み立てました。この方式で箱を作ると堅牢で変形しにくくなり、重いアンプやスピーカーを載せても大丈夫です。
フィンガージョイント (Finger Joint) 方式のキャビネット の例 Fender 68年製 |
キャビネット製作に対する、ちょっとした思い入れ
以下の 1) と 2) を意識して製作しました。
1) 板材料は基本的に日本産の木材を使う
日本の山林の木を定期的に切り出して木材として利用していく必要があるのだそうです。木を切らずに放置すると山が荒れ、木が枯れてしまい、炭素定着能力が激減するのだそうです。少しでも日本産の木を使うことで、日本の山が荒れるのを食い止めたいものです。
2) 無害な塗料で塗装する
様々なアレルギーが増えて苦しんでいる人がいます。特に人工的な化学物質が良くない反応を引き起こしています。自家製キャビネットでたくさん使うケミカルは塗料です。合成・人工塗料は使わず自然の有機の塗料を使いたいと思っていました。そこで「赤ちゃんが間違って舐めても毒にはならない塗料」として有名なドイツ製のオスモカラー( Osmo Color )を使うことにしました。
フィンガージョイント
フィンガージョイントは釘を使わず複数の溝の切り込み同士を交互に張り合わせる方式で、強度が高く、余分な振動も起こさず、ギターアンプのキャビネットに最適な方式です。
ツール無しでフィンガージョイントの溝を削るのは至難の技です。
私のように木工の素人にも比較的簡単に溝切できる、ジグがあり、
いつかは使う日がくるであろうと、15年前に購入しておりました。
使う機会がなかなか無く、今回初めて使うことができました。
なんと、もう、このジグを作っていたメーカーはなくなっています。
このツールは簡単に言うと、フィンガージョイントのフィンガーにあたる部分を削りだすための溝が付いたトリマー用のガイド板です。
このガイド板の下に張り合わせる材料 2枚を同時に挟み、溝にならって(沿って)トリマーを稼働させ、木を削ることでジョイント(接合部の溝)が完成します。
Finger Joint tool |
一見簡単そうに見えて、木を削り始める前のセッティングが大事で手間がかかります。セッティングがまずいと木が斜めにいびつに削れ、ジョイントが接合しなくなります。
木工の専門化にこのツールを見てもらい、正しい使い方を探りだしました。近江八幡にある 木工房 yz さんにお世話になりました。工房にこの治具を持ちこみセッティングを解明してもらいました。
ちなみに 木工房 yz さんは私のアンプ回路の作業台であるアンプ・クレイドルを作ってもらったり、GAMPS オリジナルアンプ Green Reverb のキャビネットを製作してもらったりしました。信頼のおける木工房さんです。吉積さんがオーナーなので yz です。自分のオリジナル家具を作ってほしい人は 木工房yz さんに頼んでみると良いですよ。
フィンガージョイントを切った材 |
フィンガージョイント部の組み立て接着
フィンガージョイント溝を切った板材は釘を使わずに接着材だけで組み上げます。
ジョイント部の精度が悪いと、ジョイント(接合部) がゴソゴソで強度が出なかったり、隙間がきつすぎて、はめ込めなかったりします。ほんの少しだけきつめに溝を切り、その後少しずつ削りながら合わせていくとうまくいきました。
フィンガージョイントの接合 |
バッフルボードの製作
次に、バッフルボード(スピーカーを取り付ける穴の開いたボード) を製作します。写真のターコイズ色の板は30cm, 25cm, 12.5cm, 10cm と色々な口径のスピーカーの穴をあけるためのジグです。このジグの円周をトリマーでなぞり、バッフルボード材にスピーカー穴を開けます。
下の写真はバッフルボードに穴あけをしている様子です。
スピーカー用のジグ |
バッフルボードの加工 |
穴あけの済んだバッフルボード |
組み立て
キャビネット本体にバッフルボードをネジ留めします。
バッフルボードとキャビネットの仮組が下の写真です。
後姿( Rear View )が下の写真です。
バックパネルは本体と異なる色のオスモカラーで塗装しています。こちらはキャビネット本体よりもさらに艶消しにしてあります。
塗装前のキャビネット Rear view |
塗装とグリルクロス( grill cloth ) の取り付け
塗装は人体に無害で天然の木材由来の塗料であるオスモカラー( Osmo Color ) を使います。ドイツ製です。
数回に分けて、塗りと乾燥を繰り返し仕上げていきます。
オスモカラーの既成の色に塗りたい色はありませんでした。
数種類のオスモカラーを混ぜ好みの色合いになるように色調整したギャンプスオリジナルの色にして塗りました。ピカピカのグロス仕上げではなくマットな質感にしてカジュアルな感じにしています。
バッフルボードにグリルクロスを貼っています。貼り付け方法は Fender アンプと同じくステープルガンを使い、色模様は黄色っぽい WHEAT にしています。
正面 2510 OD |
リアビュー 2510 OD |
以上がギャンプス 2510 OD アンプのキャビネットの製作です。
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