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2015年10月21日水曜日

GAMPS Browny G3 製作工程

【2015 8/30】
夏休みとはなんにもせずに休むもの。でも今年は「なんにもせずに」というのがもったいなくて、GAMPS のオリジナル・アンプの製作をして過ごしました。当初の予定では、今月末に完成するはずが、諸般の事情で違う仕事をせざるをえなくなり、完成せず、デラリバ・リイシューのハンドワイアードのお仕事の時期となってしまいました。いやー、でも、楽しかった。いちから無垢のアルミシャーシーの穴あけをし、部品レイアウトを考え、製作していくのは何よりものレジャーです。最高の夏休みでした。



アンプの回路図はあくまで論理的な図面です。回路図を実際のハードウェアとして作りこむ過程がアンプの仕上がり、音にとても影響します。
1. トランスの位置関係がまずいと発振したりノイズが大きくなったりします。
2. 真空管のソケット間の間隔は一定の距離を保たないと真空管どうしの熱で
相手の劣化を早めます。もちろん向きも大切でこれを間違うと発振します。
3. 回路ボード上に取り付ける抵抗・コンデンサーの向きと間隔も音質・発振・ノイズに影響します。
4. スイッチやポットの位置も操作性を考えつつ、発振やノイズの出にくい位置に定める必要があります。

これらを考えながら具現化していくことにやりがいがあります。

今回のテーマは
(a) 持ち運びしやすいこと、なるべく小柄で軽く作る。
  そのためシャーシーは鉄ではなくアルミを使います。
  反面、アルミシャーシーはハムノイズが出やすく、
  工夫が必要。キーワードは Grounding。
  グラウンド・ループをなくし、接続は確実に。
(b) 6V6 x2 を使ったプッシュプルパワーアンプで出力25W
  ライブで重宝する音圧をもつこと。
(c) 回路はブラウンフェースの 6G3 デラックスをベースにしつつも、
  ギャンプス・オリジナル回路に仕上げる
(d) コントロールは清く正しく Volume x1, Tone x1
(e) 音質はブルースにも合うし、ジャズもできること。
  全くのClone にしてしまうと歪みが早く出てしまい、
  ジャズには使えない。
   ヘッドルームを高めにとるオリジナル回路となります。

キャビネットは Weber の 5F2 をオーダー
スピーカーは 10 インチ x1 仕様、 Eminence の Legend 1028Kを採用

今日の時点で、回路ボードへの部品組み込みが終わらない状態で Suspend となりました。
最後の写真 ……カバーをして Resume できるまで待機です。

【2015 10/11】 Resumed
本日から作業を再開しました。
アンプクレイドルにシャーシーを載せました

回路ボードに部品を搭載していきます

12AX7 x 2本、6V6 x 2本の仕様です
【2015 10/12 Updated】

【カップリング・コンデンサーについて】
増幅回路と増幅回路をつなぐコンデンサーのことを Coupling ( カップリング ) コンデンサーといいます。たとえばツイードやブラウンフェースなどではギターのインプット・ジャックから入った信号を初段の増幅回路で増幅し、次の増幅段に送るために 0.02μF のカップリング・コンデンサーを介します。このカップリングコンデンサーの値は0.02μF にするのはあたりまえです。しかしどのコンデンサーにするかで音質が変化します。
「どのコンデンサー」という言葉の「どの」とは、

(1) コンデンサーに使われている誘電体による違い
  0.02μF で耐圧 400V 以上のコンデンサーに使われる誘電体の種類
     a)ポリエステル・フィルム b)ポリプロピレン・フィルム d) セラミックディスク

(2) メーカーとそのメーカーの品種による違い
  下の写真の左から
  イ)Jupiter RedAstron ロ)SOZO BlueMolded ハ)SOZO YellowMastered
  ニ)150M Mallory ホ)SBE OrangeDrop 716P ヘ) CDE OrangeDrop PS
  ト)セラミックディスク 3社 

オレンジドロップは現在3種類販売されています。
3種類の中で一番値段の高い ホ)716P の誘電体はポリプロピレンです。
最も安いヘ)PS の誘電体はポリエステルです。
フィルム・コンデンサーとしてはべらぼうに値段の高い
イ) Jupiter や ロ)SOZO はポリエステルです。
値段が高いから一概に良いというものでもなく使う場所により個性がでます。

 さて、どれにするのか、ああでもないこうでもないと思索したり、過去の経験に基づいて決めていく作業が楽しいのです。

一般的に言われているののは、誘電体がポリエステルの場合は50年代から60年代の初期のアンプの音がし、ポリプロピレンはそりよりも Hi-Fi であるということです。

セラミックディスクは以外と世間で知られていないようです。60年代に良く Fender で使われていました。特にブラウンフェースやブラックフェースには必ず、肝心かなめの一箇所には使われていました。これもどの部位に使うかによりその才能の発揮の仕方が異なります。
写真のコンデンサーはどれを使ってもそれなりの良い音がするものだけを集めています。
同じ値0.02μのコンデンサー各種

3種類に絞り込んだ後で、容量の実測も参考にし決定します。

【抵抗について】
抵抗もカーボン・コンポジット抵抗、カーボン・皮膜抵抗、金属皮膜抵抗、酸化金属皮膜抵抗、セラミックコンポジション抵抗とさまざまな種類があります。
用途つまりとどの部分に使うとよいのかが決まります。またメーカーによっても特性の差があります。
アンプの信号回路にはカーボン・コンポジットが良いと感じています。
カーボン皮膜抵抗はMarshall の回路には合います。しかし、 Fenderに使うと音が薄っぺらく迫力が少ないと感じます。
金属皮膜抵抗や酸化金属抵抗は Ceriatone や Boogie などには合います。Marshall や Fender では高域にキンキンと癖が出ると感じています。
しかし、これはあくまで信号回路に限ったことです。

電源回路になると事情が変わります。Fenderのヴィンテージではカーボンコンポジットの 1W が使われていた部分 ではセラミック抵抗がダントツに良い音がするように思います。 カーボン・コンポジットの 1W でも音質は良いものの、耐久性に問題が出ます。
電源回路では 金属抵抗や酸化金属でもそれなりの音質がキープでき、耐久性もカーボン・コンポジツトより勝ります。

信号回路に使うカーボン・コンポジット抵抗を使う上での注意点は使う場所と、その抵抗の値です。
5% から 10% のバラツキがあります。たとえば5% 誤差の 220KΩの抵抗を購入すると209KΩ~231KΩの間でバラツイテいます。ピッタリ 220KΩだけを使うのではありません。
回路のある場所には高めを使い、ある場所には低めを使うということで目指す音質により近づけることが可能です。私はカーボン・コンポジット抵抗を仕入れるたびに抵抗の値を元に選別し、保管しています。

カーボン・コンポジット抵抗の抵抗値を実測し選別しているところ
【2015 10/17 Updated】
上段: 購入した時点の抵抗の接続リード
下段: 酸化物を取り除いた接続リード  
抵抗を測定し、選別し、いよいよアンプの回路にハンダ付けするとき、そのままハンダ付けしていませんか? 上の写真の抵抗の足(リード)に注目してみてください。分かりやすいように拡大した写真が下の写真です。

抵抗のリードの拡大写真
購入した時点ではリード線に酸化物が付着しています。酸化物とは、リード線の金属の一部が酸化したもの。酸化とは金属の元素と酸素とが結合してできる不純物。酸素があるところでは必ず発生します。
ハンダ付けのときハンダにはフラックスが含まれています。このフラックスには酸化物を除去する働きがあります。しかし、完全に酸化物を除去するハンダ付けをマスターするには時間がかかります。マスターしていても、毎回毎回、アンプ一台で数百箇所に及ぶハンダ箇所全てに酸化物の残留はないと言い切れるでしょうか。
ハンダの時点でのフラックス溶剤で除去できるとはいえ、もしも酸化物が残留したままハンダ付けされてしまったらどうなるでしょうか。ハンダ付けの内部、つまり部品A の接点と部品Bの接点の間に酸化物が混入してしまうと、ハンダ付けした時点ではなんの問題もなく電気的な抵抗はゼロです。
しかし、経年変化、つまり時間が経過すると混入した酸化物のまわりに電気がよく流れる部分と流れにくい部分の差が広がり、最終的には発熱が大きくなり、ハンダ付け部分の接触不良を起こしてしまいます。

このような長期にわたる信頼性の観点から、私は念のために新品部品のリード線は全て酸化物を取り除いてからハンダ付けしています。
抵抗だけでなく、コンデンサーのリード線も、ポットの端子もジャックの端子も全てです。
写真の下側のリード線が酸化物除去の工程の後のリード線です。ピカピカにしています。

この工程は何百個という部品のリード線全てについて実施します。ギャンプスでのオーバーホールのリードタイムが長い要因のひとつなんです。( 言い訳がましくなり申し訳ありません )

【2015 10/15】
プリアンプ部分の回路を作りこみました。
色々考えた結果、初段のカップリング・コンデンサーは SOZO の BlueMolded 0.02μF に決定。
プリアンプからフェーズインバーターへのカップリング・コンデンサーはセラミックディスク 0.01μFに決定しました。
プリアンプ部分の回路作りこみ
次にフェーズインバーター回路を作りこみました。
下の写真の①の抵抗にフェーズインバーターのカソードがつながります。
写真の①と②の2つの抵抗の値でフェーズインバーターに使うプリ管の動作点が決まります。
当アンプはブラウンフェースの流れをくむため、12AX7 ( ECC83 ) をフェーズインバーターに使います。12AX7 に見合う抵抗値にしています。
フェーズインバーター回路の作りこみ
各々の回路に電源供給するフィルターキャップを組み込んで、回路ボードの完成です。
完成した Browny G3 の回路ボード
【2015 10/16】
インプット・ジャックのアッセンブリをしました。
「グラウンドループを排除するため、シャーシーとジャックのマイナス端子との接続を切り離したい」という設計上の思惑から、Switch Craft ではなく Cliff の白色を選択しました。
配線の中身は当ブログにあるインプット・ジャックについて ( Input Jack )を参照ください
インプット・ジャックのアッセンブリ
ポットは 2個使います。
ボリューム・ポット  x 1 : CTS 製
トーンポット          x 1 : プルスイッチ付き (Pull 時にトーンとして効きます。Push 時はバイパス)

左 Tone , 右 Volume
【2015 10/20】
回路ボードをシャーシーに取りつけた後、真空管ソケット、ポット、ジャックと配線をつなぎました。

回路ボード取りつけ
【2015 10/21】
 真空管を取りつけました。
左から
パワー管 :  Tung-sol リイシューの 6V6GT x2 (マッチドペア)
フェーズインバーター :  JJ の ECC83-MG ( Medium Gain ) x1
プリアンプ :  Tung-sol リイシューの 12AX7 x1

真空管装着
各部の電圧測定を行なったあと
バイアス調整を実施

バイアス調整中
AIW 製 WE 復刻版のスピーカーケーブルを使い、スピーカーケーブル・アッセンブリを製作

スピーカーケーブルのアッセンブリ中
スピーカーケーブルとシャーシーをキャビネットにインストールしました。

キャビネット組み込み
キャビネットにアンプを組み込んだ状態での重量は 10kg と650gでした。
片手で持ったときの感じは、ハードケースに入れたレスポールぐらいの感覚です。

重量計測
試奏テストを行いました。

試奏テスト中
【サウンド】音色は色にたとえるとブラウン。正にネーミング時の期待どおりです。
ブラックフェース回路は少し高域に特徴がありボリュームが 5ぐらいのときに使いづらいことがあります。それもあり今回 Browny G3 の開発に踏み切りました。思惑どおり、高域の癖はなく、暖かい音がします。中・低域のブーミーさもなく、タイトで、ブラウンフェースの欠点も克服しています。
それでいてサウンドの迫力も十分あります。ハイゲインで歪むのではなく、ヘッドルームが豊かで暖かい。 ( ボリューム・ポット位置およそ 10時の方向 )

10~12フレット近辺の1弦~4弦で CM7, A7, Dm7, G7 を弾いたときのコードの分離感がとてもきれいです。そうです。ブルースにもジャズにも使えるアンプということも念頭においていました。

【トーンコントロール】
Push ではバイパス状態。ちょうど 12時の方向にしたときと同じ音がします。
Pull して右に廻すと高域が増加しブライト感が増します。
Pull の状態で左に廻すと、わずかに高域を削っていきます。しかし、あまり極端にコモルことはありません。
トヘーンコントロールに使っているカップリング・コンデンサーの値は、ブラウンフェースのデラックスのそれとは少し変えています。ブラウンフェースのオリジナルは左にまわすとずいぶんとコモリ気味となり、私自身はあまり使わないからです。

【アッテネーター】
シャーシーのスピーカー端子の隣にスイッチをつけています。後ろから見て左にスイッチを倒した状態がノーマル。暖かく大きな音圧が得られます。
このスイッチを右に倒すと、アッテネーターが作動します。計算上はスピーカーに伝達されるパワーを 1/5 にまで下げます。
アッテネーターが作動した状態でボリュームとトーンを上げていきますと、歪んだ音がコントローラプルな状態で簡単に得られます。音圧もそこそこあり、聴感上は 1/2 ぐらいの音量に感じます。
ロックもいけます。
もちろん、ボリュームをあまりあげなければ、本来の目的であるご近所迷惑対策にも使えます。

 Eminence の Legend 1028K が予想以上にいい仕事しています。WE 復刻版ケーブルとの相性も抜群です。アルニコマグネットのよさである弦のニュアンスの再現性能がとてもよいです。重量の軽さとあいまって、これは今後使えると感じました。

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