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2015年10月11日日曜日

65 Deluxe Reverb のハンドワイアード化 その2


1. 9月7日までの作業

ドリルで穴を開けたボードにアイレット ( eyelet : ハトメのこと ) を打ち込みました。
アイレットを打ち込んだ回路ボード
まず、バイアス回路用のボードに部品を載せ取り付けました。
部品を搭載したバイアス回路ボード
次にフィルターキャップ ( Filter capacitors ) の回路ボードに部品を載せ取り付けました。
アルミ電解コンデンサーを取り付けた Filter Cap Board
フィルターキャップには高電圧( 300V から 430V ) が繋がります。安全性とノイズ結合の防止の観点から、配線材の選択と配線の方法は慎重に行います。
高電圧用の配線材

配線材の取りつけ
配線材を取りつけた後、Cap Pan ( フィルターキャップのフタ) を取りつけます。

明日からはいよいよメイン回路のボードの作業です。
メイン回路ボード

2. 2015年 9月16日までの作業

a) Phase Inverter 回路 ( 別名 パワーアンプ・ドライバー回路 ) の作製

基板上の Phase Inverter

回路ボード上に作製した Phase Inverter
b) Vibrato ( トレモロ ) 回路の作製
基板上の トレモロ回路
お客さまのご要望により、トレモロの Speed コントロールを 1ぐらいにした時の Speed を今よりも遅く 設定して回路を作製しました。

回路ボード上に作製したトレモロ回路
c) Reverb recovery と Reverb Mixerの回路の作製
基板上のリバーブ・リカバリーとミキサーの回路


回路ボードに作製したリバーブ・リカバリーとミキサーの回路

3. 2015年 9月28日までの作業

d) Reverb driver 回路の作製
基板上の Reverb driver 回路
実はこの部分をブラックフェースのデッドコピーにするとリバーブ音がきんきんと暴れる感じになります。修正を入れて、リバーブを扱いやすくしておきます。
回路ボードに作製

e) プリアンプ回路 ( ギターインプット増幅から Volume Treble, Bass トーンコントロール増幅段)
  この部分は reissue アンプは2つの基板にまたがって実装されています。
メインの基板上のプリアンプ回路

ポット基板上の Treble, Middle, Bass のコンデンサー
2つの基板に分けて実装されていた回路部品を Vintage のブラックフェースと同じく一箇所にまとめて回路作製しました。
プリアンプ回路の作製む

プリアンプからポットまでの配線材の組み込み、Vintage と同じく布巻き単芯線をツイストしたものを使います。
f ) フェースプレートの交換
お客さまのご要望により、アンプのモデル名の付いていない無地のフェースプレートを取り付けました。フェースプレートはお客さまご自身が調達なされたものです。
パイロットランプを外さないとフェースプレートは外れません

パロットランプを外し、フェースプレートを外したところ

元のフェースプレート

新旧 フェースプレートの比較

新しいフェースプレートを取りつけ
g ) ポットの取りつけ
reissue のポットは基板付け専用のポットです。これらを基板から外して流用すると、ハンダ付け部分の接触不良が起きやすい端子構造をしています。耐久性も弱くガリが出やすいことから、9個全て CTS 製の新品と交換しました。
ポット取りつけ後のフロントビュー

ポット取りつけ後のシャーシー・ビュー
h ) インプット・ジャックの取りつけ
reissue のインプット・ジャックもポットと同じく基板専用のジャックです。
基板から外して流用すると、ハンダ付け部分の接触不良が起きやすい端子構造をしています。
また耐久性も弱く接点不良も出やすいことから4個全てを Switch Craft 製のジャックにし、新しいカーボンコンポジット抵抗を使い、アッセンブリしなおして取りつけました。
インプット・ジャックのアセンブリについては当ブログの以下のページに構造と役割を示しております。この役割を果たすように組み立てます。
ご参考までに。

穴位置を合わすため、フロント側に仮止めしたジャックを抵抗でアセンブリします。

新しいジャック取りつけ完了

シャーシー側からみた新しいジャック
i ) トランスの取りつけ
お客さまのご要望により電源トランス( PT )、チョークトランス( CT )、出力トランス( OT ),の3つのトランスを MercuryMagnetics のトランスに交換しました。
これらの 3つのトランスはアンプの音質にとても大きく関与しています。
マーキュリートランスにアップグレードすることにより、ハンドワイアードの回路との相乗効果により、完璧にブラックフェースサウンドに仕上げることができます。
現行トランス(左) とマーキュリートランス(右)の比較

リイシューの現行トランス

マーキュリーの PT, CT, OT に交換したところ

電源トランス(PT) のシャーシー側、配線が麺類のように複数からみあっています
この雑然とした電源トランスの配線材を正しく配線しつつ回路ボードをシャーシーに取りつけ、ポットと真空管ソケットに配線していく作業となります。


4. 2015年10月11日までの作業

① 回路部品を搭載したメインの回路ボードをシャーシーに取りつけました。
    ボードと以下の部品間の配線をハンダ付けしまし。
  ・ PT (電源トランス)
  ・ 整流管( 5AR4 = GZ34 ) の真空管ソケット x1
  ・ パワー管 ( 6V6GT ) の真空管ソケット x2
  ・ プリ管 ( 12AX7 および 12AT7 ) の真空管ソケット x 6
  ・ ポット x 9
  ・ インプットジャック
電源トランスの配線をハンダ付けしたところ

下の写真のようにシャーシー内のハンドワイアードが完成しました。
Hand wired 完成 
② スピーカーの取りつけ直し 
MercuryMagnetics の OT (出力トランス) はリイシューのトランスよりも容積が大きくなります。
マーキュリーの Fat Stackシリーズ に限らず、 Tone Clone のシリーズでもリイシューよりは大きくなります。

一方でスピーカーに付いている端子と出力トランスとの距離が近すぎると、発振の問題がおきやすくなります。出力トランスの質量が増える分、磁界強度が増し、スピーカーと出力トランス間の磁界による相互干渉の影響が出ます。不具合としては「スピーカー・コーンが破けたのかしら」と思うような変なビビリ音がギターの音の背後にはりつきます。特定の低域を強く弾いたときに音の背後にジジジーーーというノイズのような音が出ることもあります。アンプ内部の寄生発振障害とよく似た症状です。

この影響を避けるため、スピーカーの端子はなるべく出力トランスの近辺から離れた場所に位置するようにスピーカーを取り付けます。しかし、当アンプのスピーカーは端子が上向きに付けられ、出力トランスに最も接近する位置になっています。

スピーカーを外し、取りつけ直して、相互干渉による影響を少なくしました。

出力トランスとスピーカー端子の相互干渉の問題はトランスを大きくした場合だけに限らず、
スピーカー本体をマグネットの強力なスピーカーに交換した場合にも起こります。
デラリバに Cellestion の Vintage 30 をお付けになる場合なんかは要注意です。
( このスピーカーは手にしたドライバーや、ネジ留めを外したリバーブ・パンすらも吸い付けるぐらいマグネットが強力です)
その場合の解決策もここに示したとおりです。ご参考までに。
出力トランスのすぐ近くにスピーカー端子が位置しています

インチサイズのツールでスピーカーを留めているナットを外し、スピーカーを取りつけなおします

スピーカー端子が右下にくるようにすると磁界による影響( 相互干渉)を最小にできます
③ バイアス調整とパワーチューブ( 6V6 GT 真空管) の交換

全ての真空管をさして、主要な回路部分の電圧チェックを行います。
各部の電圧が正常であることを確認した後にパワーチューブのバアイス調整を行います。

このとき必ずアンプに負荷をつなぎます。負荷とはスピーカーもしくはそれに代わるダミーロードのことです。もしも何も負荷をつながずに電源を上げ、スタンバイスイッチをオンにしますと、パワーチューブを壊したり、出力トランスを壊したりしてしまいます。

バイアス調整はパワーチューブにかかるプレート電圧の値とそのとき流れるカソード電流との相関関係で決まります。この関係は真空管のタイプによって値が異なります。また同じ真空管タイプでもメーカーにより多少異なります。ギャンプスではメーカー発表の真空管スペックを参考にしてバイアスの調整を行なっています。

バイアス調整のようす。右下のシルバーの箱がギャンプス・オリジナルのダミーロード。
箱の上に電圧測定用のデジボル、左下の黒い箱がパワーチューブの電流計です。
元からアンプに付属していた GTの 6V6GT を付けて電流測定したところ、2本の特性にバラツキが出ています。元々新品の頃にマッチドペアの特性だったものが、古くなってくると劣化が進み、2本の特性が不揃いになってきます。

2本の 6V6GT の特性がバラツイテいます。
新品の Tungsol Reissue 6V6GT のマッチドペアに交換し、電流を測定したところ、2本の特性はピタッと同じです。これから長くお使いいただくことを考え、パワー管は新しくしてさしあげることにしました。この真空管を使いバイアスを適正値に設定しました。 

Tungsol reissue の電流値。2本との特性がマッチド。

左の2本が元々付いていた GT、右の2本がTungsol Reissue
④最終テスト

全ての作業を終え、最終のサウンドテストを行いました。


◎ リイシューの持つ高域の硬さはなくなり、倍音を多く含んだ音色になりました。
◎ リイシューの持つコード弾きでの濁りはなくなり、倍音を含みつつも弦の分離感が出てきました。
◎ 以前は V1( Normal チャンネル) の真空管を抜いたり、V6 に 12AT7 の代わりに12AX7 を入れないと使えない感じだったゲイン感が大幅に改善し、音圧も大きくなりました。
◎ 多少暴れた感じだったリバーブ音が扱いやすくなりました。
◎ トレモロのスピードはお客さまのご要望どおり、少し遅めにすることができました。


完成
これで 65 Deluxe Reverb の ハンドワイアード化の完成です。






 











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