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2015年10月26日月曜日

Twin Reverb 135W のオーバーホール その1. 受け入れ検査

2015年10月26日記載
Twin reverb 135W のオーバーホールの仕事にとりかかりました。
お客さまは富山県にお住まいの D 様。
わざわざ富山県から滋賀県まで車で運んでお持ち込みくださいました。
Twin Reverb 135W

【過去の修理履歴】
過去に修理に出されたそうです。しかし、調子は悪く、Normal チャンネルだけが鳴り、Vibrato チャンネルはならずの状態だそうです。

【他店でスピーカー故障の診断】
楽器屋さんに見せると、スピーカーも悪くなっており、メーカーに送る必要があるとのこと。
とはいってもシルバーフェースを Fender に送り返して、故障修理なんてしてもらえるはずもなく、なんとかしてほしいというのがご要望です。

【受け入れ検査 Part 1. サウンドテスト】
早速、お客さまと一緒に試奏テストをしました。結果は以下のとおりでした。

① 音圧が不安定です。フラフラとした感じです。 ×
② 音質に色気が全くない。×
③ キャビネットの上部をコツンと叩くとバリッバリッという大きなノイズ発生×
④ まがいなりにも Vibrato チャンネルから音は出ました。△
⑤ サウンドはいまいちなながらリバーブは鳴りました。△

Good News
-  リバーブ・パンとリバーブ・トランスは壊れておらず使えます。
- 音が出たことから、トランス PT, CT, OT, は使える可能性大。

【受け入れ検査 Part 2. Visual Inspection】
今度はアンプの中を見て不具合部分の特定を行います。

(A) フットスイッチ Broken ×
フットスイッチが写真のように一旦切断され、その部分にフォンジャックの付いたシールドが2本つぎ足されています。
Foot Switch
アンプ側のRCA 端子につながる部分は途中で切断されています。(下の写真)

Foot Switch 接続部分

(B) フィルター・キャップからの液漏れ ×
アンプのシャーシーを取り外し、フィルターキャップ部を見てみました。
Cap Pan と呼ばれる、カバーを取り外すとカバーに黄色い染みがあります。
Cap Pan removing 
 Cap pan の染みを拡大したものが下の写真
Stain on the cap pan
 Cap Pan の染みの直下にあるアルミ電解コンデンサー ( Electrolytic capacitor ) から液漏れした痕跡を確認しました。アルミ電解コンデンサーは内部に溶液が封入されています。劣化して古くなり、使い物にならなくなると液が吹きこぼれ、固まります。古いアンプによく起こる症状です。
アルミ電解コンデンサーの寿命がとっくに尽きています。
アンプ内の全てのアルミ電解コンデンサーは液漏れの有無に関係なく寿命がきています。
アルミ電解コンデンサーの液漏れ
 下の写真はこのアンプの整流回路です。ダイオードx4本とセラミックコンデンー x4個で正方形に配線されています。その横にセメント抵抗があります。
PT ( 電源トランス) から送られる交流電圧を整流し、 500V の直流電圧を作り出し、アルミ電解コンデンサーに供給します。そうです、135W のツインリバーブのプレート電圧は500V と高電圧です。
この部分も確実に劣化しています。こちらが先に劣化したかコンデンサーが先かはあまり重要ではなく、両方共に交換しないと、良い音質には戻りません。
Rectifier
(C) パワーチューブ 6L6GC の状態
まがいなりにも音が出たことから、パワーチューブが完全に壊れているわけではありません。しかし、劣化は甚だしい。観察しますと、4本ある 6L6GC のうち3本はオリジナル。一本だけ交換されています。(V9)
Power Tubes 6L6GC, V9 was replaced in the past.
下の写真は左がオリジナルの6L6GC、右が交換されていた 6L6GC です。SOVTEK の5881 WXTが一本だけ交換されています。お客さまがおっしゃっていた「過去に修理に出した」ときの修理がこれです。 Wrong !!! もしもパワーチューブ交換が必要であったのであれば、たとえ壊れているものが一本だとしても、4本同時に交換するのが基本です。しかも、肝心のアルミ電解コンデンサーや整流回路にはいっさい手がつけられていません。
お客さまのおっしゃっている「修理に出したのに調子が悪い」はずです。

昔CM で「くさい臭いは元から断たなきゃダメ」というキャッチフレーズがありました。
アンプの故障も真の原因を除去しなきゃダメなんです。

Left : Original 6L6GC, Right: SOVTEK 5881 WXT
(D) プリ・チューブ 12AX7, 12AT7 の状態
  続いてプリチューブを見てみました。
Preamp tubes 12AX7, 12AT7
 V2 ポジションの 12AX7 の頭の部分の内部塗装がはがれていると共にガラス管が白く変色しています。下の写真の左から2番目の12AX7。Vibrato チャンネルのプリアンプを担当する管です。真空管が壊れていく過程でこのような状態になることがあります。
特に白く変色する場合は、真空管に配線され、動作点を決めている3本の抵抗が劣化している兆候です。抵抗が劣化してきており、さらに真空管の劣化を加速している途中ということです。

お客さまのおっしゃっていた「 Vibrato チャンネルの音が出ない」という症状と、こちらで受け入れテストしたときに「 Vibrato チャンネルから音がでた」という現象は一見相反するように見えます。しかし、実は完全に符合します。
回路内の抵抗が劣化してきますと、完全に内部切断が起こるまでに、温度に敏感になります。
パワー・オン直後はなんとか繋がっているものの、内部温度が上昇すると断線するというものです。
パワーオン直後は鳴っていて、しばらくすると鳴らなくなる。またしばらくしてパワーオンすると鳴り出す。という現象です。 Intermittent Open Failure of plate resistor です。
Damaged 12AX7, V2 position
上記のことからアルミ電解コンデンサー、整流回路だけでなく、アンプの回路部品のほとんどが劣化していることを示します。

ここまでの受け入れ検査を間近でご覧になり、
ギャンプスのオーバーホールを実施するようにお客さまからご依頼されました。

(E) スピーカーの検査

お客さまは他店で「スピーカーが壊れている」と言われたそうです。
しかし、サウンドチェックでは回路の不具合は聴こえたものの、スピーカー本体の壊れたような音はしませんでした。それでスピーカーを検査しました。
下にの写真は右側のスピーカーのボイスコイルの抵抗値測定です。
抵抗値 6.7Ωを計測しました。ボイス・コイルには異常はなく健全です。
Resistance Check of the right speaker
同様に左のスピーカーの抵抗値も6.5Ωで問題はありません。
ご参考までに、インピーダンス 8Ωのスピーカーの抵抗値は5Ωから7Ωの間が正常です。
インピーダンスは交流に対しての抵抗で直流抵抗の値よりも少し低めにでるのが正しいのです。

Resistance check of the left speaker
では、コーン紙に問題があるのかと思いきや、コーン紙もまったく問題ありません。従いまして、「スピーカーは壊れておらず、スピーカー交換は不要」との診断をここで下します。
Speaker's surface is all good
以後、作業内容を逐次掲載していきます。







 



   



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