Gibson Les Paul Faded 2017の回路をグレードアップした上で、
ピックアップ交換し、サウンドの短所の改善をしましょう。
今回のProject のテーマは
①ギターの音質を汚く感じるのはプリント基板配線のせいなのか
②ハンバッキングでもノイズが多い現状、シングルコイルに変更して
ノイズのレベルを低くできるのか
です。
Before and after |
・ピックアップ 490R , 490T が歪みやすく、歪み音が汚い(私的に)
・ノイズが多い(ハンバッキングとは思えないぐらいうるさい)
まずコントロールキャビティーを覗いてびっくり。
・なんだこれは ? こりゃー基板だー!!!
上等なアンプにつないだのに基板の音がした原因はギターのプリント基板でしたか。
ボリュームポットx2 とトーンポットx2 とコンデンサーがプリント基板化されています。
ピックアップ線とスイッチを往復する線はコネクター付きです。
コネクターをつなぐだけで配線が完了。
つまり、ギター本体の木工部が完成したら、
電気回路はハンダ付不要でコネクターつなぐだけでギター完成
という「製造工程の短縮化」がねらいの設計です。
1983年製のギブソン・レスポール・スタンダードのコントロールキャビの中を見て以降、その後レスポールのコントロールキャビティーの中身がこんなに変わったのを知りませんでした。
83年当時でさえ、ポットはきちんとハンドワイアードでした。
・キャビティーに一切耐ノイズシールドが無い
なんだーこれはー !!!
ノイズが多くてあたりまえ。
シールド無し = 工程簡略化 = 人件費削減 = メーカーの利益
Control cabity |
プリント基板 x シールド無し= 工程簡略化 = 大量生産 = 低価格販売
という側面もあり、安い値段で Gibson が買える理由でもあります。
私の場合は、ギター回路は全てリフレッシュするつもりで買ったため、文句はありません。
【パーツの取り外し】
ジャック配線、ピックアップ配線、スイッチ配線の3種の配線と基板を繋ぐコネクターを外し、ポットとコンデンサーの付いたプリント基板を取り外します。
Removing PCB of pots |
次にジャックを取り外します。なんとジャックもスイッチクラフトではなく、プリント基板の付いたジャックでした。
Removing Jack |
ピックアップ切り替えスイッチを外し、ピックアップも取り外します。
Removing switch |
ギターから全ての電装部品を取り外しました。
All electrical psrts removed |
【考察】
1. ノイズ対策を施し、現状よりも低ノイズにする
2. 2個付いているトーンコントロールを1個にし、
空いた場所にピックアップ切り替えスイッチを付ける。
下の写真に描いた線は Gibson オリジナルの配線のときの配線材を表しています。
ピックアップの信号は一旦各々のボリュームポットに入ります。(青色と黄色)
トーンコントロールで音色調整します。(黄緑)
ボリュームポットからネックの根本にあるスイッチに行きます。(青色と黄)
スイッチを通過した信号は後戻りしてジャックに向かいます(白色)
このようにギターの中を行ったり来たりすることにより配線の総全長は長くなっています。
配線の長さが長いと、ノイズを拾いやすくなると同時にシールド線の分布容量によりギター信号がたくさん削られ、私が汚いと感じる音になります。
Gibson Original wiring |
トーンコントロールを一個にし、取り外したトーンコントロールの場所にスイッチを移植するMOD をすると、下の写真のような配線材となります。
ピックアップの信号は各々のボリュームポットに入り、その後スイッチに向かいます。(青色と黄色)
スイッチの出力でトーンコントロールします。(黄緑)
スイッチからジャックに向かいます。(白色)
ギターの中をいったりきたりする配線の長さを短くすることができます。全部で約1m20cm ほど。
配線を短縮できる分、ノイズを拾いにくくなると同時にシールド線の分布容量も減り、ギター信号の削られる量を少なくできます。
Improved wiring by relocating P/U Switch |
【スイッチ取り付けのための加工】
トーンコントロールの一か所をスイッチに変更します。そのためには取り付けの穴の部分の板厚を少し薄くします。このモデルのボリュームポットとトーンポットはロングシャフト用を使うため、取り付け穴の板厚も厚くなっています。
一方でスイッチのシャフトはポットのショートシャフトと同じ長さしかありません。そこでスイッチを取り付ける場所の穴の周りだけ板厚を薄くします。
Control Cabity |
20mm 径のドーナツ型のスペーサーを作成します。下の写真。
スペーサーの作成 |
作成したスペーサーを両面テープで貼り付けてドリルが動かないようにして20mm径の穴をざぐります。
スペーサーに沿わせてドリルで板厚調整 |
写真の右下の穴だけ板厚を薄くし、スイッチ取り付け可能となりました。
スイッチ取り付け用の穴 |
【キャビティーのノイズシールド】
アルミのシートを切り、穴開けをしてコントロールキャビネットに貼り付けます。またキャビティーの蓋の裏側にもアルミのシートを貼り、蓋を閉めたとき、回路部分がアルミで覆われるようにします。
導電塗料はどんなに優秀なものでも抵抗値があるためシールドが不充分となります。今回はサンハヤトの高周波シールド用のアルミ箔テープ使いました。
アルミ箔は弦アース(テールピースのスタッド金属と繋がっているアース線) と導通を取る必要があります。今回は弦アースの線をラグ端子につなぎ、ラグ端子をアルミの上からネジ留めしこのポイントを一点接地の要とすることでシールドを完成させます。キャビティーをシールド化するだけで、弦アースとの接合を怠ると、ノイズは逆に増えるので要注意です。
コントロールキャビティーのノイズ対策シールド |
【 CTS Custom ポット】
ポットは全て CTS Custom ポットのロングシャフトを使います。
フロントピックアップのボリュームはスイッチなし。
ブリッジピックアップのボリュームはスイッチ付きにし、ハンバックとシングルを切り替えます。
トーンコントロールはスイッチ付きにして、2種類のコンデンサーを切り替えられるようにします。
CTS custom pots |
オイル・ペーパー・コンデンサー
.022μF 1000V Vitamin Q(Toichi)
.015μF 400V Cornell Dublier
の2つをスイッチ付きポットで切り替えられるようにします。
当初は .022 だけにする予定でした。しかし、Jason Lollar 氏のお勧めが .015 ということを Lollar のサイトで知り、ならばと .022 と .015 で切り替えられるようにしたものです。
オイルペーパーコンデンサーは、「いつかギターの回路を触る日が来る」という思いから随分昔に買いためておいた秘蔵っこです。
Two Oil Paper cap |
Cornel Dublier は Outer Foil のマーキングが無いため、Outer Foil の端子を計測により割り出しておきます。
注)Outer Foil とは、当ブログのフィルム・コンデンサーの向きについて
を参照ください。
Outer Foil checking |
【ポットとスイッチの取り付け】
Volume ポット x2 、Tone ポット、スイッチを取り付けます。
Pots and switch installation |
【ブリッジ・ピックアップ】
Dimarzio の DP163 Bluesbacker にします。
ハンバック 構造ながら音はシングルコイルという触れ込みに乗っかりました。
Seymour Duncanの SPH-90 Phat Cat も検討したものの、わざとらしさの少ない素直な音作りの印象の強い Dimarzio にしました。
15年ほど前、エフェクターをつないで演奏していた頃の私は、ブリッジピックアップばかりで演奏していました。しかし、最近は、アンプ直で、ネックピックアップしか使わないので、まあなんでも良いといえばよいのです。
万一、ハンバック特有の音の遅さが気になることがあればシングルに切り替えられるようにスイッチ付きボリュームを使い配線しておきます。
Dimarzio DP163 Bluesbacker |
【ネックピックアップ】
Lollar の Single coil for Hambacker にします。
P-90 をハンバッカーサイズにしたピックアップです。
参考にしたサイトで Rating 5 と最も評価が高く、入手が比較的容易ということでこれにしました。
リンディーフラーレンの P-92 も検討しました。しかし、参考にしたサイトでは Rating 4.5 だったのと、ストラトみたいな音という印象があり、Lollar にしました。
参照サイトhumbucker sized p-90 review page4
Lollar single coil for hambacker |
【配線】
ピックアップの配線とボリューム・ポット、ボリュームポットからスイッチへ、スイッチとトーンポット、スイッチとジャックの配線を済ませました。
下の写真の中央のラグ端子にグラウンドを全てつなぎ一点接地にし、ノイズ対策しています。一点接地につなぐものは以下の6つ
1) 弦アース
2) 各 Volume ポットのグラウンド
3) スイッチのグラウンド
4) Tone ポットのグラウンド
5) シールドのグラウンド
6) コントロール・キャビティーのアルミシールド
Wiring completed |
コントロールキャビティーの蓋の裏側にもシールドを貼り付け、キャビティー側のシールドと接触させて回路全体を包み込む形にしました。
Cover of Control cabity |
下の写真は電装系が完了した状態
Circuit Modify completed |
Volume 、 Tone 、 Pickup selector は下のような配置です。
Volume, Tone, Selector Switch layout |
微妙な出音の差は感じられます。
.015 の方がより自然な音、.022 は少し加工したような音に私は感じられました。
まあ敢えて 2つの差を意識しての表現です。
Jason Lollar が .015 を好む理由はよく分かりました。
Stetsbar Tremolo を取り付けて完了
ピックガードとトラスロッドカバーもついでにプラスチックから木製に交換しました。
この見た目の部分の変更は音に関係なし。
Stetsbar reinstallation |
交換したパーツと MOD 前後のギター
Before and after with changed parts |
・汚い歪みはなくなりました
・アンプ直で使える音が出始めました
・シングルコイル特有のレスポンスの速い音です
・太さとブライトさを持ち合わせていて元気のある音
・音の芯があり、インストルメンタルでも使えます
以下の3つが総合的に効果を発揮したものと思います。
1) プリント基板をハンドワイアードに変更した効果
2) シングルコイルピックアップへの変更
3) スイッチ場所変更による配線材の総全長短縮の効果
また、
・ノイズが大幅に削減されました
・ピックアップがシングルコイルになったのに以前よりもノイズが少ない
シングルコイルにしたにもかかわず、ハンバックのときよりノイズが下がったのには正直われながらびっくりしています。以下の3つが複合的にノイズ低減に貢献していると思われます。
A) ラグ端子を使い、一点接地方式にした効果
B) コントロール・キャビティーのシールドの効果
C) スイッチの位置変更に伴う配線材の総全長短縮の効果
参考:
Gamps Project #2,#3 にかかった部品コスト
(銀行振込手数料と送料、配線材を省いた値段)
23,000円Pick up Lollar single coil for hambackers
8,000円Pick up DiMarzio Blues Backer
3,200円 Pots CTS x3
2,200円 Switch Switchcraft x1
4,000円 Oil Paper Capacitors x2
24,000円 Stetsbar
400円 Alminum sheet
計 64,800円也
ギター本体と同じぐらいの部品コストがかかりました。
しかし、
自分の理想のギターをオーダー製作するよりは遥かに安くついたと思います。
アンプのお仕事の予約がかなり先まで埋まっていて、
次はいつになるか分からないけれど、
ボディー、ネックだけをオーダーして後は自分で組み上げる
コンポーネント・ギターを作れたらいいなと思います。
木工は不得意で、一からギター製作はできないし、やろうとも思いません。
ひとさまの専門分野に踏み込むつもりもさらさらございません。
ただひとつ言えるのは電気回路はたとえギター回路でもきちんとハンドワイアードで真面目に作ったほうが音が良いということです。これは今回のプロジェクトで得られた貴重な体験です。
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